JR東日本で「どこかにビューーン!」という新しい旅行プランが始まりました。何年か前に日本航空(JAL)が始めた「どこかにマイル」と同じようなコンセプトで、提示された4つの候補から目的地がランダムに選ばれる代わりに、必要なJRE POINTが大幅に少ない6,000ポイントで済むというものです。
言い換えれば6,000円相当で往復の新幹線指定席が手に入るという、使い方によってはすさまじくおトクなプランです。
せっかくJREポイントが大量に余っているので、ものは試しで使ってみましょう。
4つの候補地は何度か選び直すことができます。時間帯を指定し、「これならどこに行ってもいいや」となったらOKすると、決まり次第メールで目的地が知らされます。
あさかぜの場合は「雫石」「盛岡」「佐久平」「八戸」が候補地となり、2時間後には『行き先が決定しましたので、下記URLよりご確認ください。』と早くもメールが。
そういうわけで、今回の目的地は
盛岡 もりおか
です。
列車はJR側が指定したものにしか乗れません。東京を10:20発の「はやぶさ・こまち17号」に乗れば盛岡へ12:32に着きますが、そもそもこういうプランの乗客を需要の高い速達列車に乗せるはずがありません。
あさかぜが指定されたのは東京10:36発「やまびこ57号」、終点の盛岡には13:54着、およそ1.5倍の時間がかかります。
3時間20分が長いか短いかはある程度個人の感覚によるとはいえ、せかせかせずにゆったりと腰を据えて移動するのもまた旅の楽しみです。眠くなったら寝てしまえばいいんですから。
郡山駅付近では新幹線の車内から郡山車両センターを見ることができます。
まもなくユンボで解体されようとしているのは、9月に乗ったばかりの「リゾートやまどり」…
うーん、思い出の車両が解体されていくのはやはり寂しいものです。
我々の乗車後、2022年12月中旬に最後のイベント列車をこなし、年の瀬の迫った12月27日にここ郡山車両センターまで回送されてきていました。そこから1ヶ月足らずで解体されるのですねぇ、早いものです…
福島に着きました。ここであとから来る「はやぶさ」を待避するためしばらく停車します。
東北新幹線では車内販売を行う列車は速達列車か「つばさ」しかなく、いま乗っている「やまびこ」には車内販売はありません。しかも車内には自動販売機もない。
なので、ホーム上の自動販売機で飲み物を買うことができる追い越し待ちの時間は案外ありがたいものです。
やろうと思えばご当地の駅弁を買うこともできますし。
今にも雪が降り出しそうな仙台に到着しましたが、ホームから見る限りではどこにも雪がありません。福島県内でもさっぱり雪を見かけませんでした。
2分ほどですぐに発車。おいしいものがたくさんある仙台ですが、さすがにこの停車時間ではお弁当やご当地ものを手に入れるのは難しそうです。
仙台までは通過駅のあった「やまびこ57号」はここから先は各駅に停車するので、体感的には所要時間がずいぶん長く感じられます。
仙台を過ぎるとだんだん雪景色が濃くなってきました。岩手県に入る一ノ関まで来て、やっと雪国に来たんだという実感が湧いてきます。雪も降るようになってきましたし。
なおタイミングの悪いことに、強い雪雲を伴った爆弾低気圧が明後日あたりに東北地方に接近する予報となっています。無事に何事もなく帰れることを願いたい…
3時間20分座り続けることになるE5系の座席。クッションが厚くて柔らかいJR北海道の「グレードアップ指定席」の座り心地には劣りますが、しっかりとホールド感があって快適です。枕を自分の据わりのいい位置に合わせて上下移動できるのもうれしい。
最近の新幹線では当たり前なのかも知れませんが、トイレにウォシュレットがついているのも評価が高いところです。
欲を言えば、JALのように「当日アップグレード」があればなお良いなと感じます。JALの場合は「どこかにマイル」でもパッケージツアーでも、当日に空きがあれば上のランクの座席に有料アップグレードできますからね。
13:54、定刻通り終点の盛岡に到着しました。さすがに「やまびこ」で来ると長いなとは感じますが、往復でたった6,000円相当ですから贅沢は言いません。
これを高速バスで来ようものなら夜行便で7時間半を要すわけで、半分の時間でこられる新幹線はやはり便利な乗り物です。
岩手県の県都盛岡にふさわしい立派な駅舎。
そして写真で見てもはっきりわかるとおり、結構な勢いで雪が降っています。例の爆弾低気圧の影響が出てくるのは明日の夕方以降のはずですが、もうすでに前兆は現れているようです…
何はともあれ、まずはお昼ご飯にしましょう。駅ビル「フェザン」の中にもいろいろとお店は入っていますが、個人的には半年前の東北旅行の時に食べ損なった「じゃじゃ麺」を食べに行きたい。
そしてせっかく食べるなら、思い出の「白龍(パイロン)」まで行ってみたい。
荷物を持ってせっせと雪が降る中を歩いて行きます。これから向かう「白龍」は、徒歩15分ほどのデパートの中に入っている店舗。食前食後の運動を兼ねて歩きます。
駅を出て数分のところにあるトラス橋は「開運橋」という、盛岡市内でも有名な橋です。現在のものは交通量の増加に伴って1953年に造られた3代目で、片側2車線の道路と歩道が備わった大きな橋。
開運橋は「二度泣き橋」という別名もあるそうです。盛岡に赴任してきた人が「遠く離れたところへ来てしまった」と涙を流す1回目、そして盛岡から離任するときに「出て行きたくない」と名残惜しさの2回目の涙、ということだとか。
我が父親も15年以上前の盛岡の思い出を未だに話しますから、その名の由来もわからなくはありません。
雪が積もったり凍っていたりと道が悪く、想像していた以上に駅から遠く感じた「カワトク」。大人しく駅に荷物を預けてくればよかったとちょっと後悔しました…
カワトクは盛岡を代表する百貨店で、別館も備えた結構な規模です。お目当てのじゃじゃ麺のお店は地下1階に入っています。
靴の雪を落としながら階段を降りて地下へ。
白龍(パイロン) パルクアベニュー川徳店でようやく思い出のじゃじゃ麺とご対面です。
小中大とサイズが選べて、そこそこお腹が空いていたので中サイズを選びましたが、想像以上にすごい量がやってきました。これで660円は破格です。
上に載せられた肉味噌と混ぜ混ぜして、途中に添えられたショウガでリフレッシュします。ラー油なども卓上に置いてあり、ある程度自分の好みに味変可能。
少し残した状態で50円支払うと、ちーたんたんという卵スープをお皿に作ってくれます。最後の最後までおいしくいただけるようになっているのですが、あさかぜは食べきれず残してしまいました…
次は大人しく小にします…
食後の運動に、すぐ裏の盛岡城跡公園をお散歩します。食べ過ぎてお腹が苦しい…!
見た目以上に雪深く、しかも新雪なのでズボッとすねまで沈みながら歩くハメに。足首のちょっと上までしかない雪靴の中に容赦なく雪が入り込んできます。
盛岡市は1886年に生まれた石川啄木が育った地です。写真の隅にチラッと写っている石碑は啄木の歌碑。
少年時代の石川啄木はしばしば学校の窓から脱走し、この盛岡城址の広場で文学書だの哲学書だのを読んでいたとか。
若い頃から才能を発揮し著名な歌人となった石川啄木でしたが、1908年に転居した東京で暮らしているうちに結核を発症。1912年、26歳という若さでこの世を去りました。
盛岡市内には石川啄木が結婚した当初に暮らした「啄木新婚の家」が観光施設として公開されています。
城内では石垣の修復工事が行われているようで、取り出された石が広場の隅にゴロゴロと並べられていました。これをまた組み上げていくのも大変な話ですね…
盛岡城は1597年に初代藩主 南部信直(なんぶ のぶなお)によって築城が始められたとされています。周囲より高い河岸段丘の上に本丸や二の丸が造られ、その後南部藩の居城として盛岡を守り続けます。
廃藩置県ののち城内の建物はほとんどが壊されてしまいましたが、明治期に入った1906年に公園として整備されました。
商店街を歩いて盛岡駅へと戻ります。ここより広い通りはいくつかありますが、ここがおそらく昔からの繁華街だったのでしょう。歩道の上には屋根もあって雪に濡れずに歩くことができます。
慣れない雪道で疲れてしまったのに、駅はまだまだ遠い…大人しくバスに乗れば良かった気がしないでもありません。
思っていたより時間と体力を消費して盛岡駅まで戻ってきました。駅構内をいろいろ見て回ろうと思っていましたが、歩き疲れたので新幹線のホームで乗車列車の到着を待つことにします…
ちなみに白龍は盛岡駅のフェザンの中にも入っているので、手軽にじゃじゃ麺を味わいたいなら、わざわざカワトクまで歩かなくても済みます。
あさかぜは単純に暇つぶしのためにカワトクまで歩いただけですので…
「はやぶさ25号」でさらに北上します。全体の7割ぐらいは乗っているようですし、盛岡で乗車する人もそこそこ見かけました。
盛岡から先の区間を走る新幹線は全て指定席で、自由席というものは存在しません。かといって短距離を乗るのに指定席券を買うのももったいない…
という人のために、盛岡~秋田・新函館北斗間には「特定特急券」とか「立席(たちせき)特急券」と呼ばれるものが乗車駅でのみ発売されています。これを買えば自由席料金と同額で盛岡以北の「はやぶさ」や「こまち」などに乗れるというわけです。
空いている席なら座っても構いませんが、指定席券を所持している乗客が現れたら席を譲らなければならないのがルール。今みたいな閑散期に1~2区間だけ乗るというのならいいですが、連休中に長い距離を乗るというのであればなんとしてでも指定席券を取るか、あきらめてデッキに立っていた方が良いでしょうね。
盛岡から40分ほどで八戸に到着。結果論で言えばわざわざ指定席を取らなくても座れる程度の乗車率でしたし、隣にも人は来ませんでした。
ただ早い者勝ちの自由席と違って「そこ私の席なんですが…」って起こされる可能性はありますから、車内でウトウトしたいようなあさかぜには立席特急券は向かないですね。
新幹線から降りると空気が冷たいこと!
新幹線のホームは雪が当たらないのでまだ全然マシなはずなんですけども。
10分ほどの乗り継ぎで青い森鉄道へ。学校帰りの高校生でおおむね席は埋まっていました。
地方のローカル線は窓に背を向けて座るロングシートの車両ということが珍しくなく、この青い森701系も例外ではありません。昼間は空いているのでどうにも旅情を感じられなくなってしまいますが、朝夕に学生さんの登下校が集中する以上は収容力のあるロングシートにせざるを得ないのです。
今も昔もローカル線の中心は中高生ですから。
八戸から45分、目的地の野辺地に到着。
八戸を出たときには立ち客もいるぐらいには混雑していましたが、野辺地に着く頃にはおおよそ座席が埋まる程度の乗車率になっていました。
電車の到着に合わせてホテルへの送迎車が駅前で待ってくれているので、写真を撮るのはほどほどにして駅の外へ急ぎましょう。今日から2晩、野辺地町の山の上にある「まかど観光ホテル」に宿泊します。
送迎のワゴン車に乗ったのはあさかぜ一人。宿泊客の多くはクルマで来ているようで、ホテルの駐車場には県外ナンバーだったりレンタカーだったり、乗用車が所狭しと並んでいます。
運良く青森県の旅行支援プランが取れました。
自治体の要件に従ってチェックイン時にワクチンの接種証明書を見せると、宿泊料金の割引に加え4,000円分のクーポンをQRコードでもらえます。クーポンはホテル内の飲食でも使えるそうなので、夕食時にちょっとよさげなお酒でも飲むことにしましょう。
先にお風呂に入って疲れを洗い流してから夕食です。
御膳で出てくるのも旅の風情がありますが、好きなものを思う存分食べられるバイキングスタイルは間違いなく満足感は高いでしょう。
片隅にはステーキコーナーもあり、焼きたてのステーキを振る舞ってくれるのもうれしい。もちろんこれもおかわり自由の食べ放題です。
いつもいつもお皿の上が茶色くなってしまうので、今日は申し訳程度ですが生野菜もちゃんと食べます。この頃野菜が足りていない気もしますし。
もらったクーポンを使って「日本酒飲み比べセット」を頼んでみました。ぐい飲みは津軽地方の伝統ガラス工芸品である「津軽びいどろ」でできています。
右から順に
「八甲田おろし 純米酒(鳩正宗)」
「津軽じょっぱり 本醸造(六花酒造)」
「桃川 吟醸純米(桃川)」
の3銘柄で、いずれも青森県のお酒。
八甲田おろしは柔らかい飲み口でとても飲みやすく、お酒だけで楽しみたいとき向けかも。
津軽じょっぱりは口当たりが少し強めのお酒で、お刺身がよく合います。
桃川は香りも味もオーソドックスなので、どんな料理にでも合いそうな感じ。
それぞれにはっきりとわかる特徴があっておいしいので、「この中から1つ土産に選べ」と言われたら非常に難しい。
飲み比べセットはシーズンによって違うのかはわかりませんが、青森のお酒を味わってみたいという方にはオススメです。
食事とお酒ですっかり良い気分になってしまいました。少しばかりノートパソコンで作業をしようと思っていましたが、このままじゃあっさり寝てしまいそう…