昨晩は雨が降っていたようで、起きてカーテンを開けると窓も道路もだいぶ濡れていました。思い起こしてみればラーメン屋を出たときにポツリポツリと来ていたような気がしなくもありません。
朝は温かいおそばで優しく胃腸に準備運動をさせます。コンコースにある「駅そば しらかみ庵」で「ぎばさそば」というものを頼んでみました。
「ぎばさ」とは…?
ネバネバしていてめかぶのようですが、そのネバネバ度はめかぶの比ではない強さで、おそばのつゆに浮いていても塊を保ったままです。
ぎばさとは「アカモク」という海藻で、東北地方の一部の県で昔から食べられていたとか。近年は健康食としても注目されていて、しばしば名前を聞きますね。
ネバネバデロデロ系の海藻は結構好きなので、これをご飯にかけて食べてもめちゃくちゃおいしいでしょう。
奥羽本線は8月初頭の大雨の影響を受けて東能代~大館間で運休となっていました。鷹ノ巣までの区間は10日ほどで復旧できたものの、残る鷹ノ巣~大館間はまだ復旧作業の最中。
また花輪線や津軽線、五能線でも大きな被害を受けて復旧のめどさえ立っていない区間もあります。せっかくの8月~9月という観光シーズンに大打撃ですね…
※奥羽本線は10月8日、五能線は12月23日、花輪線は2023年5月14日に運転再開。津軽線は復旧未定、バス転換の可能性あり。
改札口上に掲げられている出発案内表示、羽越本線の欄には我々が乗る「リゾートやまどり」の発車時刻が乗っています。終点の横浜到着は20時頃の予定、今日も10時間にわたるロングランです。
一方、「リゾートやまどり」より40分以上も遅く出る秋田新幹線「こまち16号」に乗れば東京に13:04着。横浜に同じぐらいの時間に着こうと思ったら、16:12発の「こまち38号」に乗ればいい。
こうやって比べてみると、新幹線ができた効果は絶大だというのがわかります。
出発15分ほど前に集まり、点呼を受けて6番線へ降ります。
集合場所を知らせる掲示の元ネタは…もはや何も言いますまい…
というわけでみんなゾロゾロと列をなしてホームへ降り、据え付けられた485系「リゾートやまどり」に乗り込みます。往路と復路では乗車する号車を入れ替える配慮をしてくれており、昨日は最後部車両だった我々「中央大学鉄道研究会OB」は後ろから2両目の5号車が割り当てられています。
隣のホームには男鹿線で運用されているEV-E801系が発車を待っていました。まるで普通の電車のような出で立ちですし、実際に形式や扱いを見ても「電車」なのは確かですが、ちょっと特殊な車両です。
床下にずらりと並ぶのは蓄電池で、パンタグラフから取り込んだ電気を停車中や走行中に充電しておきます。電化区間では普通の電車と同じように架線から取り入れた電気で走行し、非電化の男鹿線内に入るとパンタグラフを下ろして蓄電池に貯めた電力で走行するという仕組み。
烏山線にも同じ仕組みを使ったEV-E301系がいますが、架線に直流1500Vが流れる関東と違って東北では交流20,000Vを使っています。そのため交流電化のJR九州で使われているBEC819系「DENCHA」を東北地方向けにカスタマイズして導入することになりました。
ライトの位置などは違えど、全体的な雰囲気はBEC819系の面影をかなり強く残しています。JR東日本管内では結構な違和感ですね。
定刻通り秋田を発車しました。昨日と同じくおよそ半日をかけて横浜へと戻ります。さすがに車内に置いておくのもアレだったので飲み物やお菓子は参加者でいったんホテルへ持って行きましたが、結構な荷物になりました…
お菓子は軽くてもかさばりますからね。
空いている席に飲み物やお菓子を並べ、現役生たちにも声をかけたり、交流に来てくれた他の団体の方々へもお裾分けして消費に走ります。
「リゾートやまどり」の車内の様子。全ての車両が普通車でありながら、座席は1+2席配置とグリーン車並みの余裕。シートピッチも広くとられていますし、フットレストまで装備されています。
「リゾートやまどり」は6両中4両が「せせらぎ」、中間の2両が「やまなみ」という別々のジョイフルトレインをもう一度改修して生まれた車両です。先代は2018年12月に乗った「宴」と同様に掘りごたつ式のお座敷車両でしたが、2011年の「リゾートやまどり」への改造の際に253系初代「成田エクスプレス」のグリーン車の座席を転用して現在の姿となりました。
今日はほぼ快晴、進行方向右側に見える日本海は青く輝いていてとてもきれい!
左側の車窓に見えているのは、秋田県と山形県の県境にそびえる鳥海山。あいにく頂上は雲が目隠しをしてしまっていて見えませんが、なだらかに広がる山裾からは「出羽富士」とも呼ばれる山体の美しさが伝わってきます。
各車両の車端部には談話スペースのようなロングシート向かい合わせの空間があって、そこでは同期の巨人ファン氏が恍惚の表情を浮かべてモーター音に聴き入っています。普段は感情を表に出さないクールな彼がこんなうれしそうな様子を見せるだなんて…!
485系の熱烈なファンでもある巨人ファン氏は「2022年になって485系に乗れるとは思わなかった。いやはや、最高だね」とご満悦。
こんなうれしそうな彼の表情は学生時代でも見たことがあるかどうかというレベルのレアさです。
鶴岡で20分ほどの停車中に集合写真を撮ったり、ちょっとしたお土産を買ったりして過ごします。
今回の団体臨時列車は主催してくれた後輩の入念な根回しによって、列車のダイヤはほとんど隠された状態になっています。もちろん参加者には出発時刻・到着時刻や大まかな停車駅は知らされていますが、横浜駅に到着する今日20時半頃までSNSなどにダイヤはもちろん乗車中の写真も載せないよう周知。
おかげで情報流出によって停車駅や撮影ポイントにマニアが集結するという騒ぎが起きることもなく、道中は落ち着いて過ごすことができています。
参加している人たちのモラルが高いことの証でもありますね。
本日のお昼ご飯は新津駅で積み込んだ「SLばんえつ物語弁当」です。
地元新潟のコシヒカリを使った醤油ご飯にシャケ、鶏肉の塩麹焼き(本来は照り焼き)、ホタテ、イクラなど山や海の幸が所狭しと入っています。素朴な味の煮物もおいしい。
14時頃、長岡に到着しました。およそ25分の停車時間が取られています。列車の外に出られるので、お土産を買ったり、お酒を買ったり、写真を撮ったり思い思いの行動を取ります。
あさかぜは後輩と一緒に、構内にある『フレンド』へイタリアンを買いに行きます。事前に電話をして予約しておいたので受け取りもスムーズ。
余った時間で「リゾートやまどり」の写真を撮ります。
国鉄の車掌の制服を着ているのは後輩の豊田不動氏。本格的な車掌コスプレで、彼のすさまじいまでの熱意には圧倒されます。本人は顔出ししているものの、あさかぜのブログでバッチリ顔を出してしまうのもアレですし、ご本人のTwitterをご覧ください。
車掌さんが行先表示を変えてくれる計らいをしてくれました。昨日からずっと「団体」の表示を出していたので、この表示は新鮮。実際のところ「リゾートやまどり」は快速列車として運転していたので、この「特急」は幻の種別と思われます。
乗ってみるとわかりますが、253系の元グリーン席とあって特急料金を取っても遜色ない設備です。
少なくともついこの間まで定期列車で現役だった185系とは比べものになりません。ホント、よくあれで特急料金を取ってたな…
上越国境が近づき、雄大な山々が見えるようになってきました。沿線には金色に近づきつつある稲穂が平地いっぱいに広がっています。いかにも米どころの新潟県らしい景色、日本の原風景ともいって過言ではないと思いますね。
六日町で5分ほどの運転停車を挟み、いよいよ本格的な山越え区間が近づいてきました。魚野川に沿って右へ左へと身をひねりながら、モーター音をうならせて上り勾配を進んでいきます。
川と山の間にあるちょっとした平地にも田んぼが広がっている景色を見ると、日本人の米作りへの熱意が伝わってきます。
一方車内ではリモートで競馬観戦が行われています…全く、趣味の広いことで…
今日は後輩の1人が推している競走馬の初レースだったそうで、レース後に飲むための日本酒を持参してきているほど。しかもその日本酒も『ウマ娘プリティーダービー(のシンボリルドルフ)』とコラボした島根県の銘酒「七冠馬」を用意してきたほどの気合いの入りようです。
お小遣い稼ぎの数名も集まり、真剣なまなざしでiPadのレース中継に注目します。
残念ながら「勝利の美酒」とはいかなかったようですが、そこそこの成績に「七冠馬」持参の後輩は満足したようです。一方のお小遣い稼ぎ連中は「差せーっ!差せーっ!あああああ!!」と頭を抱えて撃沈。ざまあ。
「七冠馬」のお裾分けをいただいていると、窓の景色とは裏腹に列車の雲行きが怪しくなってきました。
越後湯沢駅では3分ほどの停車で動き出すはずでしたが、「リゾートやまどり」は一向に動く気配を見せません。この先の越後中里駅で赤信号のまま切り替わらないトラブルが発生しているようで、先行していた水上ゆきの普通列車が越後中里で足止めを喰らっています。
水上方面の本線がダメでも、真ん中の長岡方面に折り返す時に使う線路が通過できるそうで、「リゾートやまどり」と、我々のあとに来るクラブツーリズム主催の団体列車「お座敷列車華で行く新潟夜行」はそこを通れば通り抜けできるとか。
なお足止めされた普通列車に乗っていた人たちは運転再開を待つか、自前でタクシーを用意して越後湯沢などに戻るしかなかったとか。ルール上振替輸送などが利かない「青春18きっぷ」の泣き所は、こういった異常時に現れてしまいます。
「薄情な…」とも思いますが、それを承知の上で18きっぷを使うわけですから涙を呑むほかありません。
気まずい表情で越後中里を通り抜け、上越国境を越えると、いよいよ関東平野の端っこへと戻って来てしまいました。
川の名も湯桧曽(ゆびそ)川から、いま窓の外を流れている利根川へと名前を変え、なじみのあるエリアに戻って来たことをイヤでも実感させられます。
お弁当を食べていたので後回しにしていた、長岡で購入した「イタリアン」を食べましょう。
新潟市側の「みかづき」、長岡市側の「フレンド」ともに、看板メニューとして出している『イタリアン』。両者とも“薄味のソース焼きそばにミートソース”という味付けは似ていますが、少しばかり雰囲気は違います。
太くてコシのある麺を使い、白色のショウガが添えられた「みかづき」。
柔らかめの中太麺を使って、紅ショウガが添えられている「フレンド」。
どちらが好みか、新潟に出かける機会があったら食べ比べてみるのも楽しみだと思います。
あさかぜ個人の好みでは「みかづき」ですかね。
信号トラブルの影響で30分以上の遅れとなってしまいましたが、個人的には遅れてくれれば乗車時間が増えるのでむしろありがたいぐらいです。
日が傾いてきていよいよ写真を撮る理由もなくなってきました。片付けをしたり現役生からのあいさつを受けたりしていると、もう東京近郊です…大宮で遠方へ急ぐ人たちが降り、新宿でも降車扱いを行います。
20時半ちょっと前、終点の横浜に到着。一度大船まで引き上げる「リゾートやまどり」の停車時間は3分しかないので、分担して各車両で完全に降車したことをチェックします。誰かが取り残されることもなく、スムーズに降車完了。
最後は少し慌ただしくなってしまいましたが、2日間合わせて24時間近くになった「リゾートやまどり」の旅、最高でした!
最後は横浜駅近くの磯丸水産で主催の後輩たちをねぎらう、という体で夜ご飯です。日曜日の21時をとっくに回っているというのに店内はほぼ満席…さすが大都市横浜…
一杯やりつつ軽めの夜ご飯のつもりだったのですが、意外としっかりした量の丼が出てきてちょっと驚きです。味も結構良く、1,000円台でこれだけのクオリティとは、今まで磯丸水産をなめていたかもしれません…
今回の旅の中で新たな「車両貸し切り」の提案が出ましたが、果たしてそれは実行に移されるのでしょうか…?