ここは新宿駅新南口の広場です。ご縁がありまして(定型文)、「中央大学鉄道研究会OB会」として主催する貸切列車にお招きいただきました。
運転区間は横浜~秋田間という驚きのロングラン。それが実現できたのは、幹事を務めてくれた後輩が旅行会社に頼らず直接掛け合ってくれたからこそです。「OB枠」という特別扱いに甘えず、最後まで円滑に進むよう運営に協力していこうと思っています。
集合場所に掲げられている看板にある通り使用車両は「リゾートやまどり」。2022年9月現在、12両しか残っていない貴重な485系のうちの6両に乗れるわけです。
始発駅から乗れれば良かったのですが、どうしても宿泊勤務終わりで参加する都合上、横浜には間に合いませんでした。このように始発駅に来られない可能性を加味して、往路は横浜・新宿・大宮の3駅で乗車できるようにしてくれています。
どうしても仲間や他の参加者が写り込んだスナップばかりになってしまうので、道中の様子はかいつまんでご紹介します。
この日に合わせて飲み物やお菓子、飲食に不便のないようコップ、お皿、割り箸、ゴミ袋まで持ち寄るという参加メンバーの気合いの入りよう。
往路の最後部車両は我々中大鉄研OBが割り当てられていますが、現役生にも声をかけて遠慮なく飲み食いするように伝えます。というかOBだけでは自分たちで持ち込んだ分は多分食べきれない…もう若くないんだということを実感…
集合写真を撮ったあとの飲食物は、邪魔にならないように談話スペースからどけて空いている座席で管理しましたのでご安心を。
大宮でメンバーが勢揃いしました。
運転士と車掌はもちろんプロの方が乗ってくれていますが、道中の企画の進行や放送は全て自分たちで行います。
人材豊かなサークルゆえに、プレゼン慣れしていたり、現役の鉄道乗務員がいたりして、「放送がグダって内容がわからない」なんてのがないことに感心させられます…
新前橋で485系のもう6両の生き残り、「華」を見ることができました。華は今晩からの団体列車「お座敷列車で行く新潟夜行」で使用されるようですね。
高崎の少し手前、神保原でお昼のお弁当を積み込みました。事前に放送で自分の席に戻るようお願いしてあったので、お弁当を参加者に配る作業はいたってスムーズ。
お昼ご飯は群馬県内でレストラン、弁当、仕出し料理を提供している「登利平(とりへい)」のお弁当です。群馬県出身の後輩の提案で、今回の臨時列車のテーブルに上りました。
新前橋を出たところで腰を落ち着け、包みを開けます。
上州御用 鳥めし本舗 登利平
鶏のむね肉ともも肉の2種類が載った「鳥めし松弁当」は、香ばしく焼き上げられた鶏肉に甘辛いタレが絡んでめちゃくちゃおいしい。下のご飯にもたっぷりタレがかかっています。
添えられた漬物のポリポリ感が柔らかい肉のアクセントになります。キュウリの漬物は唐辛子が利いてピリッとしているのもまた良いですね。
1個じゃ物足りないと思ってしまうぐらいペロリといけてしまいました。
列車の運行上、大きな境目となる水上に到着。ここからは首都圏という枠を外れるので、定期列車はすべて水上で運転系統が分かれます。
それゆえ、乗り換えなしで通り抜けること自体がかなり貴重なことなのです。
往路の一大イベントは土合駅での途中下車です。「変わった駅」「行くのが大変な駅」といった具合に様々なメディアに取り上げられているので、一般の方にも認知度の高い駅ではないでしょうか。
4月に越後湯沢まで出かけたときにも書きましたが、首都圏から新潟方面へ向かうトンネルは1967年に開業した新しい方。トンネル掘削の技術が進歩して深いところを長く掘れるようになったものの、その分地上へのアクセスはずいぶんと不便になってしまいました。
かなり無理矢理に山の中でつなげようとした結果、生まれたのが土合駅下りホームというわけです。
地下にある下りホームから地上の駅舎までひたすら続く階段。その数なんと486段…
いくらトンネルの中で空気がひんやりしているとはいえ、これを上がってくるのには相当の覚悟がいります。忘れてはいけないのは、我々はまたこれを下りて電車に乗らなきゃいけないということ…
なお階段の右側に設けられているのはエスカレーターの準備スペースです。1日平均で20人程度しか乗車しないような駅にエスカレーターなど設置されるはずもなく、砂と石ころがあるだけのただデッドスペース。
ひいひいいいながら462段を上がってきてようやく地上に着いた…!と思ったら、まだ通路を抜けた先に駅舎までの階段が残されています。
土合駅を紹介するメディアではしばしばホームからの「462段」が強調される傾向にありますが、そこから上に24段が隠れていることを忘れてはいけません。
「がんばって下さい。」が強調されているのが、とどめを刺しに来ているかのようです。
途中で立ち止まって写真を撮っていたとはいえ、10分以上かかってやっと地上の駅舎まで上がってこられました…しんどい…!
土合での停車時間約40分のうち、円滑な運行のために発車の3分前までには車両に戻らなければなりません。メンバーがそろったところでササッと記念写真を撮りましょう。
ちなみに土合の駅舎は改修工事中で足場が組まれており、全体を見ることはできませんでした。
土合駅は近年になってから「日本一のモグラ駅」というふれこみで、鉄道好き、旅好き以外にも注目を集めています。
写真は有人駅だった当時に使われていた駅の事務室を活用して作られた喫茶店「駅茶 mogura」。週末を中心に一部の平日も営業しているようです。無人と思い込んでいた事務室に人がいっぱいいるので、ちょっとびっくりしてしまいました。
土合駅にはグランピング施設「DOAI VILLAGE」も用意され、地元の食材を楽しみながら大自然を味わうことができるとか。
…まぁ電車で来るのはどうしても不便な観光地なので、クルマでのアクセスが順当ですけどね。
長い長い階段を下りてホームまで戻って来ました。まだ車両全体を写真に撮れていませんが、この先にも長時間止まる駅があるので慌てることはありません。
駅名標と一緒に車両の行先表示器を。
写り込んでいる多くの人は、みんなこの団体臨時列車への参加者。現役生やOBのネットワークを通じて集まった他の大学の鉄道研究会関係の人たちです。あさかぜは全く参加者集めの力にはなれませんでしたが…
今いる土合の下りホームは写真右側が元からあったホームでした。「リゾートやまどり」が停車している線路は通過線でしたが、通過線側にホームを移す工事が2008年に行われました。数えるほどしか普通列車が走らないのに、ポイントがあると保守の手間が増えますからね。
新津ではドアの開かない運転停車。その間に乗務員の交代が行われます。
隣のホームにはJR東日本が誇るクルーズ列車「四季島」の姿がありました。1回の行程で数十万円するような富裕層向けの列車ですが、人気が高く当面先の分まで予約でいっぱいなのだそうです。
思わず現れた珍しい列車に、四季島に乗っているお金を持っていそうな人たちからも視線を集めます。
次にドアが開いたのは土合から約2時間後、16時頃の新発田(しばた)駅。ここで20分ほどの停車時間があるので、久しぶりに外の空気を吸いに外へましょう。
新発田では県内に住む大学同期のしらたま女史がわざわざ我々の到着を出迎えてくれました。あさかぜやひかげ氏は2年半ぶり、人によっては大学卒業以来の再会とあって場が盛り上がります。
改めて集まってみると、おのおの生活環境の変化だったり多少の見た目の変化はあったりするものの、中身は総じて大学時代から何も変わらずホッとします。つくづく良い仲間に恵まれた大学生時代でした。
新発田を出ると羽越本線に入り、荒々しい景色の続く日本海沿いを北上していきます。17時過ぎ、越後寒川(えちごかんがわ)に停車。ここでは15分止まります。
海からすぐのところにある越後寒川駅。ホームからは日本海が一望でき、その力強くも美しい景色を背景に車両の写真が撮れる…
はずでしたが、ホームには柵が立っていて、電車が止まらない領域には入れなそうな雰囲気になっていました。立入禁止とも書いていないのでグレーゾーンではありますが、あさかぜ一人ならまだしも、大学鉄研の看板を背負って参加している以上は控えておきましょう。
越後寒川は景勝地「笹川流れ」のすぐそばにあります。澄み渡った海に11kmにもわたって切り立った岸壁や波の浸食でできた奇岩が並ぶエリアで、遊覧船から眺める夕日はとてもきれいだそう。残念ながら今日は雲が垂れ込めていて沈む夕日を眺めることはできませんが…
ササッと記念写真を済ませ、発車3分前にはまたみんな車内に戻ります。
みんな自分の所属団体が互いにわかっているとはいえ、円滑な運営に協力してくれるマナーの良さには舌を巻きます。あさかぜが声かけ役を買って出たものの、さして仕事をしていない感じはありますね…
新宿から実に11時間、始発の横浜からだと12時間弱、ただひたすらに「リゾートやまどり」に乗り続けて終点の秋田に到着しました!
長時間の乗車でウンザリしたかといえば全くそんなことはなく、むしろ翌朝の折り返しが楽しみなぐらいです。一時たりとも「退屈」という感情がよぎることはなかったどころか、非番だというのに途中で居眠りすることもありませんでした。
…ことあるごとにヒコーキヒコーキといいながらも、なんだかんだ自分は鉄道が好きなんだなと改めて感じた1日です。
ホテルの部屋に荷物を放り込んだ後は打ち上げです。秋田は食べ物もお酒もおいしいものばかり!秋田の家庭料理を提供する「町家」というお店も、後輩が見つけて予約してくれていたものです。
今日1日だけで、どれほど後輩におんぶに抱っこしていることか…
気心知れた仲間たちと会話しながら飲んだり食べたり、楽しいこと!あっという間に時間が過ぎていきました。
充実した食事をしても、お酒を飲むとついついラーメンが食べたくなってしまう…
ホテルに戻る前に「京都生まれの秋田ラーメン」を謳う「末廣ラーメン本舗 秋田駅前分店」でラーメンを食べていきましょう。
23時をとっくに回っていますが、店内はほとんどの席が埋まって盛況です。ラーメンはもちろん、スープに使うカエシを使った「やきめし」も名物メニューであることは知っていました。
でもそんなには食べられない…
というわけでラーメンだけ注文。豚骨や鶏ガラでダシをとった、醤油味がガツンと来る味付けです。チャーシューもしっかり噛みごたえのあるタイプで、スープにとてもよく合います。
そして完食する頃には水も飲めないほど満腹に…
お腹を落ち着けるためにゆっくりとホテルに歩いて戻ります…