あさかぜみずほの趣味活動記録簿

旅行記や主に飛行機の写真をひたすら載せ続ける、趣味のブログです。たまに日記らしき投稿もあり…?

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あの震災を学ぶ、ひとりドライブ旅 - 3日目【龍泉洞・岩泉駅】(2022年7月12日)

● スタート地点「道の駅発酵の里こうざき」から:859km

午前8時、少し早めに3日目の旅をスタートさせます。
施設がきれいで良かった「うみねこ温泉 湯らっくす」ですが、唯一不満を上げるとすれば朝風呂がないこと…メインターゲットが日帰り入浴なので仕方がないとはいえ、せっかくなら出発前にさっぱりしておきたかったという思いはありますね。

 

uminekoonsen.com

 

 

初めて来た場所だったので宿で夕食を食べましたが、隣接するスーパーの敷地内には居酒屋の看板もありました。こういうところで食べても良かったかもしれません。

 

 

すぐ目の前にあるのは三陸鉄道リアス線の陸中山田駅。東日本大震災津波によって引き起こされた火災で駅舎が焼失したため、現在の駅舎は2019年3月の運転再開の際に新たに建てられたものです。

運転再開と同時に、宮古陸中山田~釜石間がJR東日本から三陸鉄道へと移管。それまで南北に分断されていた三陸鉄道の路線は「リアス線」として、久慈~盛間が1つの鉄道路線としてつながるようになりました。
一方、JR東日本の山田線は盛岡からこの山田町への路線なので「山田線」と名乗っていたわけですが、移管に伴って盛岡~宮古間に路線が短縮。山田町まで行かないのに「山田線」を名乗り続けています。

 

www.sanrikutetsudou.com

 

 

ぽつりぽつりと降っていた雨はすぐに本降りになってしまいました。今日は1日天気に期待はあまりできなそうです。
大きな防潮堤はほぼ完成しているようですが、水門はまだ工事中。昨日陸前高田市で見たような巨大な水門が建設されている光景が見られました。

 

さて、まず午前中は少し離れた岩泉町にある観光スポット「龍泉洞」へ向かいます中学生ぐらいの時に訪れて以来なので、およそ20年ぶりでしょうか。あの時は盛岡からクルマで2時間半以上かかって、結構遠かった記憶が…

 

いたってスムーズに片側1車線の三陸縦貫道を岩泉龍泉洞ICまで走ってきました
ところどころ追越車線を用意しているところもありますが、ほとんどは対面通行の片側1車線区間なのでむやみやたらと飛ばすことはできません。とはいってもカーブや坂道は緩くなっていますし、信号もないし、そもそも無料だし、とバイパス道路としてこんなに快適な道はありません。

 

インターチェンジの名前についてはいても、龍泉洞は本州最大の町である岩泉町の内陸部に位置することもあってだいぶ離れています。道のりにして15km以上。
ICを出てからはひたすら小本川に沿って国道455号線を上っていきます。

 

「道の駅 いわいずみ」を通過。20年近く前は龍泉洞から宮古へ向かうときにこの道の駅に寄った記憶がおぼろげながらありますが、何をしたかまでは覚えていません。何かを食べたような、そうでないような…

岩泉町は短角牛の産地。岩手県北部~青森県東部にあった南部藩で育てられていた「南部牛」と、明治期に岩泉町持ち込まれたアメリカのショートホーン種を掛け合わせて生まれたのが、現在ブランド化されている「いわいずみ短角牛」だそう。
この道の駅のレストランでは数が少なく貴重ないわいずみ短角牛を味わうことができるとのこと。

 

www.ryusendo-water.co.jp

 

 

ゴツゴツした岩肌が見え始め、いよいよ鍾乳洞がありそうな雰囲気になってきました。
トラックの通行量もかなり多めですが、道の駅の手前からひたすら上り坂が続いているのでなかなか大変そうです。

 

湯らっくすを出発しておよそ1時間、お目当ての「龍泉洞」に到着しました。全国でも有名な観光地なのでもっと混み合っているものかと思っていましたが、駐車場に止まっているクルマは数えるほどしかいません。

落ち着いて見て回ることができるので、むしろ他の人が少ないのはラッキーです。

 

● スタート地点から:923km

海沿いでしとしとと降り続いていた雨は内陸に来てやみました。肌寒さも和らいだ感じ、というかかなり暖かいです。

 

www.iwate-ryusendo.jp

 

 

発券所で入館券を買って、いよいよ龍泉洞の内部へ入ります。入口には温度計が掲げられていて、朝9時の外気温は23.5度もある一方、洞内は10.3度しかないとのこと。
鍾乳洞の中は年中これぐらいの温度だそうですから、真夏でも上に何か着ていかないとえらく寒い目に遭います

実際、写真を撮っている場所からもはっきりわかるぐらい冷気が吹き出してきます。ウルトラライトダウンを着込んで、いざ入洞!

 

龍泉洞秋芳洞山口県、龍河洞高知県に並ぶ「日本三大鍾乳洞に数えられる大きな鍾乳洞です。2019年現在でわかっているだけでも総延長は4kmを超えており、おそらく総延長は5kmを超えるだろうということですが、我々が見て回れるのはほんのその一部の700mぐらいです。

なお同じ岩泉町内にある安家洞(あっかどう)が日本一長い鍾乳洞とされているそうで、その総延長は実に23.7km
「三大」とは?という気がしなくもありませんが、権威による名付けなんて往々にしてそのようなものでしょう。

 

頭の上からはいたるところから水が滴ってきますし、歩道の下にはとうとうと水が流れています。

鍾乳洞は水の浸食によって生まれたものです。石灰岩でできた地層に雨水がしみこむと、そのわずかな酸性で少しずつ少しずつ石灰岩を溶かします。何千年、何万年という気の遠くなるような長い時間をかけて鍾乳洞はできあがっていきます。

 

第一地底湖に着きました。手すりから見下ろすと、どこからが水面なのかわからないぐらい透明な水がたたえられています。
しばしばガイドブックにも取り上げられる有名な景色で、青色の照明に照らされてさらに神秘的。

 

水深98mもある第三地底湖が観光コースの終点で、覗き込むと底知れぬ青さになんだか背筋へ冷たいものが走ります。この先にもいくつか地底湖が確認されており調査が続けられている、という解説が出ていました。

各所にある幻想的なライトアップのおかげで、岩手県内では有名なデートスポットになっているのだそうです。

 

かなり昔に来たときには弟がまだ小さかったために上ったことのなかった展望台。めちゃくちゃ急な階段を210段上がっていくと到達できると書いてありました。

「せっかく来たんだし行ってみないとな」と踏み出したはいいものの、やはり1/3ぐらいでかなりきつくなってきます…狭い鍾乳洞の中なので休憩スペースなんてあるはずもなく、ひたすら暗い中をぜえぜえいいながら登り詰めます

 

ひたすら続く階段をやっとの思いで登り切り、三原峠と名のついた無人の頂上にたどり着きました…
壁の温度計によると気温は13度にも達しませんが、長い階段で体が温まりました

少し降りた展望台の緑色にライトアップされた岩の隙間から覗き込むと、はるか下に第一地底湖を見下ろすことができます
夏の時期は雪解け水が流れ込むので地底湖にはわずかに波があります。目で見ているとほとんどわかりませんが、少し遅めのシャッタースピードで撮ってみると照明器具が揺らいで写るので何となくわかります。
揺らぎのない地底湖を見るなら、雪解け水の入り込まない冬がオススメなのだとか。

 

展望台から降りてくると、ちょうどメンテナンスのおじさんたちがゴムボートで水面に降りていくところでした。
コウモリ以外何もいなさそうな洞窟の中でも藻は繁殖するそうで、照明の熱に集まる藻の除去を1ヶ月に1度行う、と公式サイトには書かれています。

 

1年中ほぼ変わらない気温を生かしてワインの貯蔵と熟成も行われています。岩泉町産のヤマブドウを使ったもので、龍泉洞のある山の名前を取って『宇霊羅(うれいら)と名付けられています。

 

外に出てきてホッとしました。上着を着ていてもやはり寒いものは寒いですからね。
植え込みのアジサイがちょうど満開。急に暖かいところへ出てきたのでカメラのレンズが曇ってしまいましたが、かえってソフトな写りになりました。

 

さっきの階段の上り下りでのどが渇いたので、お土産を買うついでにのむヨーグルトで渇きを癒しますほんのり甘くておいしい。
地元の岩泉乳業というメーカーが手がけているもので、以前草津温泉に出かけたときにも飲んだことがありました。結構いろいろなところに出荷されているようです。

 

www.iwaizumilk.com

 

ところでこれだけ駐車スペースが有り余っているのに、どうしてわざわざ隣のマスにクルマを止めるのでしょう…?しかもナンバーを見るとレンタカーですし、止め方を見ても運転がうまいとは到底いえなそう…
クルマに限らず、空いているのにわざわざ隣に来る人のことを「トナラー」と呼ぶそうですが、駐車スペースにまっすぐ止めることもできないようなトナラーは特に勘弁してほしいものです。

 

何かの拍子に我が家のクルマに傷を入れられてもイヤなのでいったんクルマを移動し、道の反対側にある龍泉新洞にも入ってみます。入館券は龍泉洞と共通

新洞は1967年に道路の拡幅工事を行っているときに発見されたそうです。学術的な価値も高く、自然に任せる立入禁止区域も設けて鍾乳洞のありのままを研究しているとのこと。そういったこともあってか、鍾乳洞の中は撮影が禁止されているので写真はありません

中を歩いていると常に大量の水が流れている音がします。龍泉洞に湧いた水が川をくぐって龍泉新洞に流れていることがわかっているとか。逃げ場のない閉鎖的な環境で水の押し寄せる音がひたすら響くので、一人で入ると結構な恐怖感を覚えます。
怖さのあまり半ば走り抜けるようにして出てきました…

 

せっかく岩泉まで来ているので、気になっていた岩泉駅の跡地も見ていくことにします。龍泉洞からはクルマで5分ほどの場所です。

 

● スタート地点から:927km

現役当時の姿を残している岩泉駅の駅舎。1942年に一部の区間が開業した岩泉線は、元はといえば耐火レンガの材料となる耐火粘土を運ぶために計画された路線でした。
戦後も延伸工事が行われ、さらに岩泉町の熱烈な建設運動によってこの岩泉駅まで開業したのは1972年のこと。計画では現在の三陸鉄道リアス線 岩泉小本駅まで伸ばすつもりだったようです。

 

www.town.iwaizumi.lg.jp

 

 

現在の駅舎には商工会が入っています。せっかく現役時代にかなり近い姿を残していながら、平日しか見学できないというのはもったいない気もします。
まぁこれほどの山奥まで来る観光客がどれほどいるか、と問われたら察してしまう部分もありますが…

日本中に大量の路線を建設してその多くが赤字となり、国鉄の重い負担を作り上げた、あの日本鉄道建設公団が浅内~岩泉間を建設しました。
という歴史からも察せられる通り、岩泉線は利用が低迷し大幅な赤字路線に。事実、開業から10年も経たずに特定地方交通線に選ばれてしまいます。つまり、鉄道でやっていくには向いていない、というレッテルが貼られてしまったということ。

 

<↓日本全国に赤字路線を作りまくって国鉄の死期を早めた、と言われる鉄建公団をネタにしたニコニコ動画の作品↓>

www.nicovideo.jp

 

 

当然のように岩泉町は廃線の可能性に反発。また併走する道路に狭い場所が多く、トラックやバスでの代替が難しいという事実も認められて、いったんは廃止の危機をやり過ごします

ですが、利用客数は減少の一途をたどるのみ。構内に掲げられた休止直前の時刻表を見ると運行本数はたったの1日3往復。昼間の運行は一切なく、これではほとんど生活の役に立ちません。
そして岩泉線の運命を決めたのは2010年7月末に発生した、土砂崩れによる列車脱線事故でした。これにより岩泉線は全線不通になっただけでなく、復旧には安全確保のために多額の対策費を投じる必要が出てきます。額面にして130億円…

 

<↓2012年3月30日の朝日新聞記事↓>

www.asahi.com

 

 

廃線の危機を迎えた地元自治体は存続を訴えるものの、1日平均で46人しか利用していない岩泉線に大金を投じて復旧させるのは現実的ではありません。この数字はJR東日本管内でもダントツのビリだっただけでなく、日本全国の鉄道路線の中でビリ。

どう存続を訴えかけたところで、結局地元の人が利用するなり、安定的に観光客を呼び込めない限りは、維持にも運営にもコストのかかる鉄道はお荷物でしかありません。
紆余曲折ののち地元の同意を得て、2014年1月に正式に岩泉線は廃止となりました。

休止期間も含めてすでに10年以上が経過し、線路は雑草に覆われていて本当にレールがあったのか疑わしいほど
奥の方に車止めが見えるので、かろうじてここに線路があったことがわかります。

 

線路は駅の西方向から南へ向かい、JR山田線茂市駅まで伸びていました。現在も路線上の一部の駅舎は残っているそうです。

 

駅舎内はしばらく何もない状態が続いていたそうですが、2020年から有志の住民ボランティアによって改修作業がスタート
およそ半年をかけて、途中駅の駅名標が掲げられたり、岩泉線の歴史などを紹介する資料などが設置されたりして、簡単な資料館のようになっています

せっかく地元の愛が注がれた駅舎だというのに、こうした取り組みを紹介する掲示は小さいものですし、岩泉町のウェブサイトに簡単に紹介されるのみ。もったいないですね…

 

すぐそばの岩泉郵便局でお金を下ろし、再び太平洋岸へと戻ります。海側へ近づくにつれてまた雨が降り始めてしまいました。

 

>>つづく<<