ちょうどお昼の時間。
富山駅構内と周辺には様々な飲食店がありますが、気になっていた「西町 大喜」という富山ラーメンのお店に入ってみます。一昨日も富山ブラックは食べましたが、ここは元祖を謳う富山ブラックのお店です。
Googleや食べログの評価を見ると「これこそ本当の富山ブラックだ!」という声の一方、「しょっぱすぎて食べられたものではない」「人を選ぶ」など賛否両論。
地元の人とおぼしき先客たちはラーメンとライスのセットを頼んでいました。あさかぜもそれに倣って中華そば(並)+ライスのセット1,000円を注文します。
出てきたラーメンのスープは見るからに醤油といった真っ黒。下から混ぜて麺をすすると…
めちゃくちゃしょっぱい!
なるほど、レビューに書かれるわけです。でもただの醤油味ではなく、スープのうまみと粗挽きコショウのパンチが効いてやみつきになりそうです。
なお一緒に入っているメンマは一切れでご飯が半分ぐらい食べられそうな塩辛さ!徹底して濃い味です。
元々富山ブラックというのは汗を流して肉体労働をする人たちが、エネルギーと一緒に失われた塩分を取り入れるための食べ物。この味付けは当然なのです。
濃い味のラーメンを食べながらご飯を食べる、が正しい食べ方だとか。
いくらおいしかったとはいえ、あとですごくのどが渇きそう…構内のコンビニで飲み物を追加で買って在来線ホームへ上がってきました。
帰りは10年ぶりに高山本線に乗って東京へ戻ろうと思います。学生時代にはできなかった特急「(ワイドビュー)ひだ」に乗るという贅沢をして。
1989年から導入されたキハ85系。中も外もJR東海らしいシックな見た目ですが、座席部分は1段上げられて眺望を確保した「ワイドビュー」の名前にふさわしい仕様になっています。車両後方の車イススペースは段差のないバリアフリーエリア。
2022年度以降は後継車種となるHC85系が投入され、「ひだ」「南紀」を徐々に置き換えていく予定。これも早いうちに乗っておきましょうというわけです。
富山方の先頭車はグリーン車ですが、名古屋方面へ向かう列車では最後尾となってしまうので肝心の前面展望が楽しめません。これはまた機会があったらにします。
ディーゼルエンジンがうなりを上げて富山駅を出発します。まもなく北陸本線と新幹線から離れると力強い加速を見せてくれます。
キハ85系のエンジンはアメリカのカミンズ社のものを使っています(製造はイギリス)。車両に必要な性能を求めていったところ、小型高出力な鉄道車両用のエンジンは日本メーカーのものよりもカミンズのものが優れているという判断だったそう。
のども乾いてきたことですし、昨日買って飲むのを忘れていた宇奈月ビールなるものを飲んでみましょう。モーツァルト仕込みとはよくわかりませんが、少し苦みと風味が強い飲み応えのあるビールです。
富山から20分足らずで停車する越中八尾(えっちゅうやつお)は毎年9月頭に行われる「おわら風の盆」の開催地。この時期は富山県内の宿泊施設の多くが埋まるという、富山県を代表するお祭りです。
去年は残念ながらコロナウイルスの流行を受けて中止となってしまい、2021年もこの旅行のあとの7月に中止が発表されました。このウイルスはつくづく迷惑千万です。
…まぁ広めた当の中国はみじんも悪いなんて思っちゃいないわけですけどね。
越中八尾を出るとだんだん山深くなってきました。車窓の左側に現れたのは神二(じんに)ダムという重力式コンクリートダムです。1953年に完成したダムで、すぐ隣にある神通川第二発電所で4万キロワットの電力を生み出しています。
上流にある神一ダムの発電で使った水を受け止めて、下流側に大量に流さないようにするためにセットで建設されたのが神二ダム。同じ目的でさらに下流へ神三ダムが建設され、3つのダムで連携した発電が行われています。
発電所の名前から「神通川第二ダム」と呼ばれることもあるようですが、正式名称は「神二ダム」です。
富山からおよそ40分、猪谷駅に到着です。
だだっ広い駅構内の線路は多くが撤去されているので想像がつきませんが、2006年12月までここには神岡鉄道という私鉄が発着していました。すぐそばの神岡鉱山で掘り出された亜鉛鉱石を輸送するための路線で、1967年から1984年までは国鉄が運営していました。
神岡鉱山は公害病「イタイイタイ病」を引き起こした原因としても知られています。亜鉛の精錬から出た排水の中にカドミウムが含まれており、下流側の稲に蓄積したものを食べた結果引き起こされたとされる病です。
鉱山は2001年に閉山しましたが、跡地の地中にはニュートリノを観測するための「スーパーカミオカンデ」が置かれて世界最先端の研究施設になっています。
猪谷で乗務員がJR西日本からJR東海に交代しました。
向かい側には313系そっくりなJR東海のキハ25形が停車しています。10年前はまだ非冷房のキハ40系だったので、座席も空調も快適になったことでしょう。あの時は暑かったなぁ…
14:32、高山に到着しました。高山本線の拠点となる駅で、特急「ひだ」の多くもここで名古屋へと折り返していきます。
3両編成で走ってきた「(ワイドビュー)ひだ14号」も高山で3両を前につなぎます。最繁忙期の10両編成を想定しているのか、前につないだ3両は1~3号車、富山からの3両は8~10号車となっていました。
ちょっと車内から出て写真を撮っていただけでウンザリするほど暑い…今日の高山市の気温は28度もあるそうです。車両のエンジン排熱がさらに暑さに輪をかけているので用が済んだらさっさと車内に戻りましょう。
分水嶺を越え、高山本線は飛騨川の深い渓谷に沿って進んでいきます。
なんとなく高山と下呂温泉は近いところにあるイメージでしたが、特急列車でも45分かかるほどには離れているんですね。
車窓に名鉄電車が見えると鵜沼、奥は名鉄の新鵜沼です。
2001年まで新名古屋(現 名鉄名古屋)~高山間に特急「北アルプス」という列車が走っており、名鉄各務原線からJR高山本線に移るための線路がこの鵜沼・新鵜沼駅付近にありました。
2009年の新鵜沼駅拡張工事で残っていた線路は完全に撤去されましたが、地図アプリや衛星写真などで見てみると線路のあった曲線に合わせて道路が引かれているのがはっきりとわかります。
最後の停車駅の岐阜でほとんどの人が降りてしまい、あさかぜの乗る8号車は誰もいなくなりました。座席は後ろ向きのまま名古屋へと向かいます。
JR東海は基本的に車両の引退までは大きなリニューアルを加えない方針のようで、車イススペース付近の段差を解消して大型トイレを設置した以外はほぼ登場時の姿を保っています。普通車なのに絨毯敷きで足音はしませんし、座席の位置も高くて眺望は良好、シートの座り心地も良いという、とても30年以上にわたって活躍している車両とは思えないほどです。
後継のHC85系にはキハ85系に引けを取らない車内設備になっていることを期待したいですね。
富山駅から4時間を要して終点の名古屋に到着。快適だったがゆえにあっという間に着いてしまった感じがします。
ただキハ85系の余韻に浸っている時間はあまりありません。新幹線の乗り継ぎまでさほど余裕はありませんし、名古屋に来ているからにはきしめんも食べておきたい。
足早に乗り換え改札を抜け、新幹線ホームのきしめん屋さんで「冷やしかき揚げきしめん」をかきこみます。名古屋も気温が25度以上ある夏日だったのでつい冷やしメニューにしてしまいましたが、個人的には冷やしよりもアツアツのきしめんの方がおいしかったかなぁ。今回初めて冷たいメニューをいただきましたが、次からは再び熱いメニューに戻ろうと思います。
特急券をケチっているわけではありませんが、「のぞみ」だけは特急料金が200円増しです。今から乗車する「ひかり」658号は名古屋を出ると小田原まで止まらない速達タイプの列車なので、ほとんど「のぞみ」と所要時間が変わりません。200円あればハイボール1本分ぐらいにはなりますし。
それに「ひかり」「こだま」は「のぞみ」に比べたら空いている傾向にあるので、安い上に快適に過ごせるはず…
予想は外れて6割以上は乗車があるでしょうか。隣に人が座らない程度には速達タイプの「ひかり」って混むんですね。今までどこへ行ってもガラガラな状態に慣れていたので混んでいるように思えますが、東海道新幹線の日常が戻って来ただけなのでしょう。
小田原では「のぞみ」の追い越し待ちもなく、名古屋から1時間半ちょっとで品川に着きました。千葉方面に乗り換えるには東京よりも品川の方が歩かなくて済むので、東海道新幹線で帰ってきたときはいつも品川で下車します。もう新幹線を降りてしまえばあさかぜの旅はおしまい、あとは家に帰るだけです。
ホテルを取り間違えたことを除けば目的の内容はおおよそ果たせました。欲を言えば空調の入っていない時期の413系の録音に再チャレンジしたいですね。