※ このブログ記事で取り上げているのは2023年開催の第1回JAPAN MOBILITY SHOWです!
■ TOYOTA
日本の自動車業界における王者、トヨタ。東京モーターショーが改められてJMSとなったのも、トヨタ自動車の会長であり日本自動車工業会の会長でもある豊田章男氏の大きな影響力と強いリーダーシップがあったからでした。
他のメーカーよりも広いブースには市販車からコンセプトカーまで、様々なクルマが並んでいました。
丸目のオプションパーツを取り付けたランドクルーザー250も注目を集めていましたが、やはりランクルと言えば…
2023年に復活が決定したランドクルーザー70でしょう。
いかにもオフロード車という無骨なランクル70の系譜は最新モデルになっても健在。2.8Lターボのディーゼルエンジンに組み合わされるのは6速ATで、コンピュータ制御によってより高度な走破性・悪路脱出性能を目指したとか。
見るからに「ランクル70だ!」とわかるデザインながら予防安全のToyota Safety Senseはちゃんと装備しており、ただの復刻ではないことがよくわかります。
写り込みだらけになってしまったのでここには載せませんが、メーターも昔の面影を残しつつ現代に合わせた機能になっていました。
こんなのを見せられたら、欲しくならないわけがない…
「TOYOTA CROWN」の概念や伝統を塗り替えた現行クラウンでは、象徴的ともいえるセダンより先にクーペ調の「クロスオーバー」、ハッチバックの「スポーツ」が発表されるというサプライズも起きました。
展示されていたのはスポーツ(上)とセダン(下)で、ヘッドライト周りの意匠が少し異なります。
今まで日本市場をメインとしてきたクラウンは全幅1,800mmを超えないのが標準でしたが、アメリカや中国でも販売される今回からは全モデルが1,800mmを超えており、セダンでは1,890mmまで広がりました。
ただここまで大きくなってしまうとパトカーには使いづらいサイズ。
警察向けのモデルが用意されるのか、それとも違う車種へと移行していくのか…?
ここ数年は高級車メーカーもSUVを出すのがトレンドですが、トヨタのハイエンドであるセンチュリーまでSUVになりました。セダンのような流麗さよりも、SUVでなければ出せないゴツさが好まれる時代なのかも。
まぁでもSUVって座面が高い分乗り降りも楽ですから、高級車に採用される理由もわからなくはありませんね。
やけに未来的で激しいデザインのBEVコンセプトカーが多い中、かなり現実的なデザインをしているGRの「FT-Se」。環境性能だけが全てではない、走らせる楽しみも追求するべきという最近のトヨタらしい考え方が表れたクルマです。
FT-SeのベースになっているのがSUVの「FT-3e」で、見た目だけだと全く違う雰囲気です。こちらもリアリティのあるデザインになっていて、2026年以降の市販を目指して開発が進められているようです。
BEVのSUVというとタテにもヨコにもデカい印象ですが、FT-3eは薄型のバッテリーを搭載することで高さを抑えたとか。かなり速そうなルックスでカッコいい。
ミニバンとSUVを融合したらしいコンセプトカー「X-VAN GEAR」。タイヤを車端部に寄せて前後の床下アングルを確保しているところを見ると、それなりに本格派っぽい雰囲気が漂います。
さすがに三菱・デリカD:5ほどのガチなものではなさそうですが、家族でキャンプに出かけるとかだとサマになりますね。
■ DAIHATSU
トヨタグループに属するダイハツ工業。
2002年にデビューした初代コペンを思い起こさせる「ビジョン・コペン」が展示されていました。現行のコペンのような軽自動車ではなく1.3Lエンジンを搭載する登録車で、5ナンバーに収まるサイズになっているそうです。
現行の2代目コペンはちょっとカッコいい方向になっていてそちらもとても魅力的ですが、やはりオッサンなので丸っこい車体の方が「コペンらしさ」を感じてしまう…
歴代のダイハツ車が並べられています。その中にはもちろん初代コペンの姿も。
使われているパーツを見ると時代の違いを感じますが、それでも全体的なデザインからは色あせない美しさが漂ってきますね。
しかも初代コペンは660ccでありながら4気筒エンジンだったのも、特別なクルマを示していました。
1950年前後に隆盛を極めたオート三輪の中で、現代でも高い知名度を持っているのは「ミゼット」ぐらいではないでしょうか。ちなみにMidgetとは英語で「ごく小さい」という意味。
その名の通り小さなオート三輪で、当時主流だったオート三輪トラックを導入するには大きすぎる小規模な事業者にウケました。1960年代に入ると軽トラの出現などでオート三輪は急速に販売台数を減らしますが、その中で最後まで生き残ったのもミゼットでした。
未来の「ハイゼット」とでもいえそうな「UNIFORM」と名付けられたBEV。サイズ以外のスペックは公開されていないものの、車体はちゃんと軽自動車規格に収まっています。
■ HINO
同じくトヨタグループの日野自動車。
クロネコヤマトの配送トラックでもチラホラ見るようになったデュトロのBEV「DUTRO Z EV」が展示されていました。
前輪駆動にしたことで床を低くできたので、運転席から荷台へウォークスルーができるようになりました。まるで現代版トヨタ・クイックデリバリーの再来です。
■ ISUZU & UD TRUCKS
いすゞがUDトラックスを買収するという衝撃的なニュースが流れてから早くも3年が経ちました。今のところは両ブランドが併存していますが、JMSでは1つのブースで出展することで統合を示しています。
ちなみにUDがボルボ傘下を離れた代わりにいすゞがボルボとの長期提携を結んだそうで、引き続き双方の技術や販売のネットワークが生かされていくようです。
いすゞの大型トラックにホンダの燃料電池技術を搭載した「GIGA FUEL CELL」。2023年度中に公道での試験走行を開始し、27年の市場投入を計画しています。
航続距離は800kmだそうで、純粋なBEVではなかなか達成できない数字ではあります。とはいえ今の大型トラックは300L×2を満タンにすれば1,500kmは走れるらしいので、化石燃料の偉大さを感じずにはいられません…
BYDが幅を利かせる中で「ようやく」と思ってしまうエルガの電気バス「ERGA EV」。バッテリーを天井に載せ、走行に必要な機器を車両後端に集めることで前から後ろまでフラットな車内になりました。
今までのバスは中ドアの後ろに段差があるのが当たり前でしたから、車両の後ろまですんなりと進んでいけるのはなんだか不思議な感覚です。
不安定なステップに立つ必要もないので、ラッシュ時の詰め込みも今までのバスより利くんじゃないかという気がしてきます。
運転席はおなじみの路線バス向け運転席。タコメーターの代わりに出力を%で示すパワーメーターになっていたり、空気式のサイドブレーキが電動になっていたりと細かな違いはありますが、電気バス固有のスイッチ類は特にないように見えます。
最新の車両らしく、死角を補うセンサーやドライバーの状態を監視するカメラなどの安全装備もしっかりと装備。
車内には大手バス事業者のバッジをつけた人が何組かいて、メーカーの担当者へ熱心に質問している光景も見かけました。近い将来それらの事業者のカラーになったエルガEVが走り出すだろうと思うと、今から楽しみです。
大型トラック「Quon」のトレーラーヘッドも展示されていました。
こちらはクオンの中でもタイなど新興国向けに製造されるQuesterという姉妹車種。飛び石からヘッドライトを守るガードがそれっぽい雰囲気です。
日本では取り扱いのないモデルで日本の公道は走れないでしょうから、わざわざ工場から牽引してきたのでしょうか…?
■ FUSO
トラック・バス業界の雄といえる三菱ふそうトラック・バスはいすゞ・UD連合のすぐ隣に出展していました。
やはり他社と同様に目立つところに置いてあるのはBEVの小型トラック「eCanter」。日野・デュトロとは違い、こちらのパッケージングは通常のキャンターと同じようです。
BEVはデュトロのように床を下げるなど新しい構造が採れる利点がありますが、オリジナルの仕様になる分価格の上昇も避けられません。そういう面ではキャンターのように従来通りの構造を踏襲する選択肢もまた“正しい”のかもしれません。
大型トラックの「Super Great」はフルモデルチェンジされたばかりの新型が展示されていました。
ちなみに前回のスーパーグレートのモデルチェンジは2017年と、まだ6年しか経っていません。それにもかかわらずフルモデルチェンジをするのですから、ふそうの思い切った戦略がありそうです。
空力性能や安全性能を向上させたのはもちろん、注目すべきはエンジン。先代モデルでは10.7L直6が主力でしたが、新型からは新たに12.7L直6が設定されています。バスもトラックもエンジンはダウンサイジングが主流の中であえて排気量を大きくしたのには、低速時のトルクアップが目的にあったとか。
ふそうの主力商品とあって、こちらもやはり運送会社の担当と思われる人たちが細部にわたって観察していました。
あさかぜのような素人は「へえ~、カッコよくなってる~!!」と眺めるだけですが、運用者からすれば整備性はすごく重要です。前面のグリルやタイヤのボルトまで、細かなところまで記録に残していたのが印象的でした。
せっかくなら運転席に座る体験もしてみたかったところですが、なんと85分待ちということなので泣く泣く断念。外から見ているとスイッチの位置や天井の高さなどを鋭い目で観察していた人ばかりだったので、やはり本業の方々から高い注目を浴びているようです。
BEVの弱点はなんといっても充電。商用車なら運用効率に直結してくるので、少なくとも1~2時間が必要な充電時間は無視できないロスです。
そこで提案されているのが“バッテリーそのものを交換してしまう”というもの。
米・アンプル(Ample)社と手を組み、eCanterのバッテリーをまるごと充電済みのものと入れ替えてしまうという仕組みがこれ。交換に要する時間は最短5分ということですから、大幅な時間短縮につながります。
■ その他
屋外は特殊な設備を架装するメーカーなどが出展していました。
用途に応じて様々な姿を見せる商用車には、乗用車とは違うオーラやカッコよさがあって魅力がいっぱいです。
東ホールは主にクルマの部品や制御を担うメーカーの展示。あいにくあさかぜには部品レベルの知識がさっぱりないので、見ていても「へえ~、こんな技術があるんだ」と無知を晒しただけだったのですが…
それでもセンサー、ケーブル、水素タンク…ありとあらゆる先進的な技術によってクルマが支えられていることはよくわかりました。
大きな注目を集めていたのが江戸川区の企業ツバメインダストリが展示していた「THE ARCHAX(アーカックス)」。多くの男の子が子供の頃に憧れた「ロボットに乗って戦う」という夢を具現化したような乗りものです。
前面のハッチが開いて乗り降りする、というのもまたロボットアニメの世界さながら。周りで動作を見ている人たちはみんな興味津々ですし、童心に返ったように目がキラキラしています。
夢だけを詰め込んだように見えつつも、安全性は重機のJIS規格やISO規格に準拠しているそう。
現時点では単にロマンの塊かもしれませんが、遠隔では難しい危険な作業などを担うようになっていくことにつながるのかも。
全部を見て回れないほど多くの展示があり、うっかり夢中になって写真を撮るのを忘れてしまったものもたくさんあります。3Dプリンターの家とか、キャンピングカーとか…
モーターショーのメインだった狭い範囲でのクルマではなく、タイトル通り移動手段全般としてのモビリティと、そこに直接的にも間接的にもかかわる技術が所狭しと並んでいてあっという間の半日でした。
歩き回って頭も使ってかなり疲れましたが、それ以上にすごく楽しかった!
一緒に来てくれた後輩も楽しそうにしていて良かった良かった…