宿泊勤務を終えて退勤しようというタイミングで、日本航空から不穏なメールが送られてきていました。「条件付き運航」を知らせるもので、簡単に言えば「目的地の天気が悪くて降りられなかったら、戻るか行き先を変えるから覚悟しなさい」ということ。雪が降る日の北海道ではよくある話です。
悩むようなことでもないので、さっさと荷物をまとめて職場を脱出します。
真冬らしい澄んだ空気の羽田空港。第1ターミナルの日本航空「サクララウンジ」からは富士山がよく見えています。富士山がきれい、ビールもおいしい。
どうして日本人はこうやって富士山が見えるとうれしくなってしまうんでしょうね。すぐ「○○富士」って地方の山に名前をつけますし。日本人ながら時々不思議に思ってしまいます。
「条件付き運航」とはいえ、新千歳は就航率がだいぶ高い空港なのであまり心配していません。天気予報や空港の気象予報を見てもそこまで悪くはなさそうですし。
しかも明らかに燃料の少ない軽さで離陸したので、「これは引き返すようなことはないな」と確信します。
離陸してまもなく、飛行機は千葉県浦安市の上空に。小さくて見えづらいですが、陸地部分の右下には滑走路のような場所が見えます。2019年まで開催されていた「レッドブル・エアレース」幕張大会のために臨時で用意された堤防上の滑走路で、競技用の軽飛行機が発着していました。エアレースが終わってしまった今後は全く使われることのない存在に…
羽田を飛び立って1時間半、順調に苫小牧上空まで飛んできました。出発時に機内でも条件付き運航についての説明はありましたが、ここまで来れば新千歳空港は目と鼻の先です。窓から見える天候は悪くありませんし、機内のWi-FiでFlightradar24を見ていたら先行のスカイマーク機もちゃんと着陸していましたから、心配はなさそうです。
滑るように着陸し、ほぼ定刻通りスポットイン。機内からボーディングブリッジに出ると体に刺さるような冷気が伝わってきて、12月の時とは違う本来の北海道の冬という感じがします。
そういえば条件付き運航の案内メールには「東京2020マスコット特別塗装機」と書かれていましたが、フタを開けてみれば何の変哲も無い普通の機材でした。ちょっと乗ってみたかったですけどね。
JA773J / Japan Airlines / Boeing 777-200
本来ならこの飛行機で飛ぶはずでした。
電車と同様に状況によって運用が変わってしまったりするので、来ないときには素直に諦めるしかありません。
ターミナルに出ると空港の中が閑散としているのに驚きます。普段なら夏に来ても冬に来てもごった返しているのに…
言うまでもなく例の新型コロナウイルスの影響によるもので、中国人や韓国人のインバウンド客がほぼゼロになっているからにほかなりません。インバウンドをアテにした商売をしている人なら青ざめるような光景ですが、ただの観光客であるあさかぜからすればこんなに快適なことはありません。
今日はあまり時間もないのでお昼ごはんはターミナル内で済ませます。3階「北海道ラーメン道場」内に店を構える「麺屋 開高」で十勝ホエー豚丼セットをいただきます。
せっかく豚骨スープが味わえる帯広発祥のお店なのに、セットになると味噌しか選べないのはちょっと残念です。だったらホエー豚丼単品にしておけばよかったかな…
腹ごなしに散歩をしに来たフードコートも空席が目立ちます。そういやラーメン道場にある「えびそば一幻」も行列がありませんでした。
快適さを味わいつつも見慣れた光景とは全く違う有様に、今後を行く末を心配してしまう部分もあります。このコロナウイルス騒ぎはいつ収束していくのでしょう。
今日は大学のサークルOBの集まりということで、札幌市郊外の定山渓温泉が目的地。14時に出発する北都交通の直行バス「湯ったりライナー」を待ちます。隣ののりばにいる北海道中央バスは最新型の三菱ふそう・エアロエースです。ヘッドランプがトラックの「キャンター」と同じものになり、目つきが鋭くなりました。
ほとんどの人たちは札幌市内へ向かうバスに乗り込んでいくので、定山渓ゆきを待っているのは若い人数人と酔っぱらいのオッサンたち4人、それにあさかぜといった程度。途中立ち寄った国際線ターミナルでも乗車はなく、10人ほどの乗客を乗せて定山渓へ一直線に向かいます。
1時間半ほどで定山渓の温泉街に到着しました。ちょうど札幌駅からの送迎バスが到着とかぶったのでフロントには長蛇の列ができていましたが、おかげで仲間とも合流できたので待ちぼうけしなくて済みました。
荷物を部屋に放り込み、カメラを持って散歩に出ます。
バブルの雰囲気を強く残す、今宵の宿「定山渓ホテル」。増築を重ねた館内はずいぶん難解な造りになっていました。
定山渓が温泉地として歩むようになったのは19世紀のこと。1866年に美泉定山(みいずみ じょうざん)という修行僧がアイヌの人の案内で源泉と出会ったのが始まり、とされています。1871年に「定山渓」と名付けられ、1918年には札幌市街地から鉄道(定山渓鉄道、現在の「じょうてつ」。1969年廃止)も通じ、保養地として発展してきました。現在では年間240万人が訪れるそうです。
ホテルのすぐそばにある「定山源泉公園」では定山の功績をたたえ、当時の源泉の雰囲気を再現しているそう。湯に打たれる形で美泉定山の坐像も置かれています。
公園の片隅には温泉卵を作れるコーナーがあります。近くの商店でネットに入った生卵が売られているので、それを木の棒に吊るして源泉に30分つけておくと温泉卵になるのだそう。商店の人には「カラスに持っていかれないように気をつけてくださいね」と言われましたが、こんな真冬の雪深い中でもカラスが飛び回るんですかね…たくましい生き物です。
30分ほどウロウロしてから温泉卵になったであろうネットを回収し、部屋に戻ります。
確かにトロッとした温泉卵になっていてなっていて美味しい。でもちょっと塩味がほしいかな…
夕食はバイキングではなく、お座敷の宴会場で御膳スタイル。ありがたいことにかなり広い部屋を用意してくれていました。現地集合現地解散という集まり方は大学生時代のサークル合宿を思い出して懐かしい気持ちになります。年齢や生活は変われど、こうしてみんなで集まれる機会があるのはこの上なくうれしいことです。
部屋に引き上げてから新婚旅行中の後輩にイタ電をかけるなど、タチの悪い酔っぱらいになりながら夜が更けていきます。