6:20、終点のデンチャイ(Den Chai)に到着しました。定刻なら5:15着ですから1時間の遅れです。これでも最も遅れていた時よりは20分ほど回復したんですけどね。
タイ国鉄の長距離列車はしばしばこうして列車が遅れますし、1時間程度ならマシな方だと言います。「夜行列車でバンコクに戻ったらその足で空港へ」なんて旅行プランを立てると失敗する可能性の方が高くなりますから、鉄道旅に限らず海外ではくれぐれも時間に余裕を持って行動しましょう。
空が瑠璃色に色づく夜明け前。タイでも北部に位置しますし、山間ということもあってすごく寒い!
デンチャイのあるプレー県や、さらに北側にある古都チェンマイでは、2月の最低気温は平均15~17℃だとか。そりゃ寒いわけです。
上に1枚羽織って出てきたものの、こんなに寒くなるとは想像もしていませんでした…
さて、折り返し列車でバンコクに戻るわけですが、我々の乗ってきた元14系15型ももちろんバンコクへ向けて折り返します。
ですが、
←バンコク / デンチャイ→
【14系】+[ 2等寝台 | 2等寝台 ]+[ 3等車 5両ぐらい ]+[ 荷物車 ]
という編成がそのまま折り返すわけではなく、間に挟まった2等寝台車を今晩の列車のためにデンチャイに置いていき、さらに我々の乗る14系を編成の後ろにつなぎ替えてやる必要があります。
あっちこっち行ったり来たりしながら入れ替え作業が始まりました。予定の発車時刻は7:30なので、1時間ほどの間に上記のようなややこしい付け替えをしなければなりません。
並行して夜のバンコク・バンスー新駅ゆきに向けての準備もしているようで、さっきの編成にはいなかったような気がする車両も一緒に構内を行き来しています。
切り離して別の場所に持って行った、と思ったら戻って来てポツンと置いておかれたり。
なかなか来ないであろう場所までせっかく来ているので、駅のそばだけでも散策してみることにします。
デンチャイ駅は昨晩出発してきたバンコクの新しいターミナル駅、クルンテープ・アピワット中央駅から北本線で526.5kmのところにあります。
タイ北部プレー県の玄関口に相当する駅ではありますが、県庁所在地であるムアンプレー郡までは25kmも離れていて、表玄関というほどの立地ではありません。
実際バンコクからプレー県へのアクセスは高速バスか航空機の方が便利だそうで、朝一番に着く列車なのに駅前にはソンテウ(トラック型のバス)の姿もなく閑散としています。
デンチャイ発着の列車もありますし、チェンマイまでの列車も全て停車する時刻表上では交通の要衝でありながら、中心市街地から外れているため駅前は非常に閑散としています。
駅から出ると人間よりも野犬の方が多そうです。先ほどもワンワンと吠えながら10頭ぐらいどこかへ走り去っていきました。
駅前の商店は写真の1軒のみですが、ご覧の通り早朝からは営業していません。
「駅前には売店もない」というレビューがあったものの、駅舎を出て正面に飲料や軽食、食事を一通り取り扱っている売店が営業していました。
コロナ禍がおおよそ終わり、列車に乗って移動する人が増えてきたから復活したのでしょうか。食べ物が手に入るのはとてもありがたい!
駅の出入り口に掲げられているのはワチラーロンコーン王こと現国王ラーマ10世の肖像です。
公共の場では朝8時と夕方6時に国歌が流れます。実は昨日フアランポーンにいたときにちょうど18時の国歌が流れ、列車を待つ人も道行く人も掃除をする人も、みんな直立不動で国と国王への敬意を示していました。
我々のような観光客はあまりうるさく言われないようですが、敬意を示さないタイ人は逮捕されることもあるとか。
「郷に入りては郷に従え」という言葉があるように、特段理由がないのなら地元の人に合わせて行動するのもまた大事です。
駅の内外には相変わらずイヌがたむろしています。人間に興味関心のないイヌもいれば、人懐こく尻尾を振って近づいてくるイヌも。
ただ繰り返し言いますが、タイでは狂犬病が根絶されておらず噛まれたら大騒ぎになりますから、絶対に気安く手を触れてはいけません。普段はニコニコ機嫌が良くても、イヤなところを触られたりしたら噛むイヌだっていますから。
とはいえ地元の人はのんきなもので、イヌが近くをうろついていてもお構いなし。逃げまどうひかげ氏を前に、入換作業員らしきオジサンも「いっぱいいるだろう。みんなおとなしいんだ」らしき雰囲気のことを手振りで言っていました。
帰りの列車はアルストム製のALS型ディーゼル機関車による牽引。バンスー新駅から引っ張ってきた機関車がそのまま折り返すようです。
切り離された寝台車は今夜に向けて給水や清掃などの作業が行われています。そこそこ発着があるはずですが、ずっとここに置きっぱなしにするのでしょうか?3等客車まで一緒にくっつけて置かれていて、動かす気配がありません。
右側に停車しているのは7:20発のチェンマイゆき急行51列車。22:30にバンスー新駅を発車し、チェンマイには12:10に到着します。
ホームから手を振って見送ると乗客の多くが手を振り返してくれました。
あっちこっち入換をした結果、我々が乗る2等寝台車はホームのない側線へと移動してきていました。所定の発車時刻までは10分を切っており、これから前に所定の編成をくっつけて乗車ホームへ据え付ける、となれば定刻通りの発車は難しそうです。
そうこうするうちに、荷物車と3等車を連ねたバンスー新駅ゆきの編成が近づいてきました。先ほどイヌについて語ってくれた係員のオジサンが、カメラを構える我々のためにポーズを決めてくれます。
ガッチャン、と連結完了。オジサンがサボの下には「デンチャイ~クルンテープ・アピワット中央駅間の貸切車両」という内容が書かれている紙をのり付けしました。ついでにポーズも決めてくれ、ノリノリのオジサンです。
記念撮影用のサボはちゃんと本来のものに戻して、改めて我々も記念撮影…
なんてやっていると、車掌から突然メガホンで「Get on!! Get on!!」と乗車を促されます。どうやらホームでも何でもない場所から発車させるようです。
7時半ちょっと過ぎ、ほぼ定刻通りにデンチャイを力業で発車しました。これからまた10時間のバンコク・バンスー新駅へ向けての旅が始まります。
>>つづく<<