明るくなって景色がよく見えるようになりました。
首都バンコクとチェンマイを結ぶ北本線はとても重要な路線で、バンコクに近づくにつれて列車の運行本数が増えていきます。
先ほどのデンチャイからラオスとの国境にあるチエンコーンまでの323kmの路線が建設中で、計画通り2025年に開業すれば北本線の重要性はさらに高まります。
バンコクから130kmほどにあるロッブリーまでの複線区間をデンチャイまで伸ばすべく計画が進められており、10年15年経てば今よりも大きく近代化された北本線の姿が見られることでしょう。
列車長に扮したとよだふどう氏が検札に回ってきて、あさかぜの乗車券風参加証にもハサミを入れてくれました。よくここまで再現度を高めてやっているものだと感心させられます…!
ちなみに本物のタイ国鉄の車掌はいよいよ全く姿を見せることがなくなりました。3等客車5両に荷物車を挟んで我々の車両がくっついているので、わざわざここまで来るのが面倒なのかもしれません。
たまに清掃員のお兄さんが来る程度で、お好きにどうぞという雰囲気。
とよだふどう氏のX(旧Twitter)
山岳部を抜けて平地が開けてきました。一面に鮮やかな緑色の水田が一気に開けます。朝日に輝いて眩しい。
午前10時過ぎ、ピッサヌローク駅に到着。人口85万人を数える主要都市であることはもちろん、観光スポットもたくさんある大きな観光地でもあります。
13~15世紀にかけて繁栄したスコータイ王朝の中心都市でもありましたし、アユタヤ王朝の首都であった時代もある歴史ある都市。
中でも中心街からほど近い寺院「ワット・プラシー・ラタナー・マハタート」にある仏像はタイで最も美しいと言われているとか。
デッキに出ると、列車の後ろに線路が一直線に続いているのが見えます。
デンチャイで折り返してくるときに車両の向きまでは変えられなかったので、日本であれば編成の端に来るはずの車掌室は荷物車の方にくっついています。
日が昇るにつれて外の気温も上がってきて、デッキには湿気を含んだ熱風が吹き込んできます。
そう、列車の最後部は貫通扉が閉められることなく全開!腰の高さぐらいの簡素な柵がデッキとを仕切っているだけ。
おかげさまで列車のスピード感を味わうことができてとても楽しいのですが、落ちてケガをしようと死のうと自己責任だぞという考え方の表れでもあります。
泥酔していたら外に落っこちるかもしれませんから、車内が禁酒で良かったかも…
進行方向左側には大きな湖沼が見えてきました。ブン・ボーラペットという大きな淡水の湖でタイで最も大きな湖とのこと。シーズンになると蓮の花が咲き誇る景色がみられるそうです。
ボートに乗って広大な湖を巡るもよし、湖岸にある水族館を見学するもよし。
ちなみにブン・ボーラペット水族館では名物のワニのショーが見られるとのこと。“ワニのショー”とは…?
イスの座面やベッドの表皮、カーテン、枕元の照明など、ところどころ現地の事情に合わせて改修されている他は、ほとんど日本での現役時代のまま。
ありがたいことにベッドサイドのテーブルの下にはコンセントが新設されているので、ケータイの充電に困ることはありません。モバイルバッテリーはいらなかったですね。
ちなみにタイ国鉄における2本レールの幅=軌間は1mと日本(1,067mm)とほぼ同じなので、乗り心地もほとんど一緒。重要幹線だけあって線路はしっかりと手入れされていて、不快になるような揺れはほとんどありません。
…さて、予想通りというかなんというか、列車がだんだんと遅れています。
先ほど「北本線はロッブリー~デンチャイ間の複線化の計画が進められている」と書きました。Wikipedia日本語版によるとフアランポーンから250km地点にあるパークナム・ポー駅までは複線化工事が行われているとのことで、線路が新たに敷かれたり駅舎の建て直しやホームの増設が行われているところを見かけます。
その工事の関係なのか、それとも対向列車の遅れが積み重なって波及しているのか、南へ進むにつれて行き違い待ちで停車することも増えてきました。
写真とは違いますが、本来は停車しないはずのKhok Kathiam(コック・カティアム)駅では15分以上も止まっていました。
どこの駅か忘れてしまいましたが、明らかに事故で損壊した車両が構内の片隅に朽ち果てて置かれている場所もありました。本来こういうものは目につかないような場所に移動するのでは…?
アユタヤ観光の玄関口、Ayutthaya(アユタヤ)駅に到着しました。時刻は17:40、バンスー新駅の到着時刻をすでに20分も過ぎており、列車の遅れは1時間40分になっています。
複線化で慢性的な遅延がどれほど改善されるものなのでしょうか…?
一昨日団体ツアーで訪れていた遺跡群はレンタサイクル(相場は1日50B前後)で回ることもできて、安く済ませたい人の定番となっている様子。ただし2月でも昼間の気温が35℃になるので、体力に自信のない人にはあまりオススメできません。
とはいえ駅前で観光客を待つトゥクトゥクはぼったくり価格なので、それもそれであまりオススメできないというレビューも見かけます。何が正解なのでしょうね。
かなり日が傾いてきました。バンコク近郊とはいえアユタヤからバンスー新駅までは60km以上離れており、特急列車でも1時間以上かかります。列車の運行本数はここからさらに増え、1日あたり40往復近い列車本数が設定されているようです。
ちなみに特急列車には昼食のサービスがついてくるそうですが、それを含めても315バーツ、およそ1,260円と日本人の感覚からすると破格。
Rangsit(ランシット)駅からはダークレッドラインが併走する複々線区間に入ります。都市近郊はダークレッドラインに任せ、郊外から来る列車は普通列車でも途中駅を通過していきます。
ドンムアン空港が目の前にあるDon Muang(ドンムアン)駅だけは郊外からの列車も停車。つい先月までは地上駅に発着していましたが、バンスー新駅の開業と同時に高架駅へと移行しました。ピカピカの駅にボロボロの3等客車が止まる光景はなんともミスマッチ…
せっかくきれいな高架橋に移行したのに、古い客車のトイレはほとんどが垂れ流し式のまま。それによって起きるいわゆる「黄害(おうがい)」もバカにならないとか。
19:00、1時間40分遅れでバンスー新駅ことクルンテープ・アピワット中央駅に戻って来ました。眠くなったらベッドで爆睡していましたから、11時間半という所要時間はあっという間でした。
この車両でそのままフアランポーンまで乗り付けられないのは残念ではありますが、昨日からずっと14系15型の乗り心地を味わっていられたので十二分に満足です。
撮影もそこそこにコンコースの片隅へ引き上げて、幹事を務めてくれた後輩をねぎらいます。今回の貸切車両のために通訳を介してタイ国鉄と交渉してくれたのはもちろん、書類の提出のため事前に日本とバンコクを往復までしていました。
そんな苦労の積み重ねにただ便乗しているだけなのも申し訳ない気がしてきますが、本人曰く「皆さんが喜んでくれたので、次回はもっと長距離の列車で貸切を目指したいと思います。ぜひご参加を!」とのことなので、参加しないわけにはいきませんね。
良いタイミングでフアランポーン駅へ向かうシャトルバスが待っていました。これに乗っていよいよ旅を締めくくります。
高速道路を経由して20分ほどでフアランポーン駅に到着。本来は列車に乗る人が使うためのバスですが、国鉄の乗車券などは一切チェックされることがありませんでした。
大荷物を持った我々外国人が大挙して押し寄せたせいかもしれませんが、日中の利用者が少ない時間帯だったらチェックされることがあるのかも。
我々がフアランポーンに到着してまもなく、別の日本人団体が貸し切っていた24系車両が到着しました。こちらは日帰りで景勝地を往復してくる、至って常識的なプランを組まれていたそうです。
それにしても日本からはるか離れたタイで日本人が2組も集団で車両を貸し切っているだなんて、なんたる偶然…!
後輩たちが撮影に興じている間に、あさかぜはすぐ近くのホテルに荷物を置いて、MRTフランポーン駅へ駆け戻ってきました。シリキット女王国際会議場駅まで地下鉄に乗り、歩いて20分ちょっとの「湯の森温泉」へ。
なんとバンコクで温泉に入れるという!
バンコクの西側にワット・ワンカナーイという湯治場となっている有名なお寺があり、その境内で湧く温泉を運んできているとのこと。
入浴料は550B(≒2,200円)と日本人からしても割高ですが、輸送費なんかもあるのでこんなものでしょう。「温泉にわざわざ入りに来るのなんて日本人ばかりだろう」と思っていたら館内は多様な人種でいっぱいで、日本人はむしろ少数派でした。
残念ながらレストランコーナーはラストオーダーを過ぎていました。もう夜10時になろうかという時間なので仕方がありません。
後輩たちの泊まるホテルと組合員氏やあさかぜの泊まるエリアは別方向なので、シリキット女王国際会議場駅でお別れ。
「これでご飯代の足しにしてね」
と先輩らしからぬ申し訳程度のお金を渡して、フアランポーン方面に戻るMRTに乗車します。
Wat Mangkon(ワット・マンコン)駅で下車。
一昨日の夜に同期のひかげ氏と来たときには身動きが取れないほどの混雑だったチャイナタウンは、あの時の混雑は何だったのかと思うぐらい空いています。まぁ23時ですから当然と言えば当然です。
前回は定休日で入れなかった、ヤワラート通り沿いの中華料理店「興利(ヘンディー)」に組合員氏と入ります。
まずは本物のコカ・コーラで乾杯。「風呂上がりの一杯」をキメたかったところですが、バンコクでは飲食店でお酒を出すことが少ないのか、ここのお店でもビールはないようです。
先にテーブルに届いたのは灼熱のフカヒレスープ。陶器製の鍋ごと炭火にかけて、グツグツと煮えたぎった状態でテーブルに運ばれてきました。それを手元のプラスチック製の小鉢に移して冷ましながら食べます。
フカヒレがゴロゴロと大きな破片で入っていて、ポリポリという独特の食感が楽しめます。日本では細かく切ってあってフカヒレ本来の食感を味わう機会は多くないので、これは贅沢なメニュー。
Sサイズでも一人で食べるには充分に満足出来る量です。お値段は400Bで日本で食べるよりもはるかに安いですが、タイでの他のメニューと比べたらやはり高級品ですね。
そしてメインディッシュのカニチャーハン。Mサイズ(200B)にしてみましたが、1.5人前ぐらいありそうな量です。
一昨日の「XIE Shark Fin」で食べたのとは違って、こちらはカニの身がご飯と一緒に炒められているスタイル。芳醇なカニの風味が伝わってきてとてもおいしいです。
ナンプラーに唐辛子を漬け込んだスパイスが小皿で添えられてきます。ピリリと引き締まる一方、入れすぎるととんでもなく辛くなるので、かける量にはくれぐれもご注意を。
コーラ40Bと合わせて、650Bの夜ご飯。それなりに高くついたものの、日本円にして2,600円でこの満足度は素晴らしい!
途中のコンビニでビールを買い、組合員氏と別れてホテルへ。氏には良いお店に連れて行ってもらって感謝です。