15分ほど待っていると、オレンジラインの水上バスが到着しました。バンコクの水上バスはオレンジ・レッド・イエロー・グリーンの4色で系統が分類されていて、どこに立ち寄るかはのりばの入口に掲出されています。
ただ昼間はほとんど16B均一のオレンジラインしか動いていないようなので、そんなに迷うようなこともないと思われます。
ボボボボボボ…とエンジンがうなって船着き場を離れます。座席は船の前方だけで、後ろ半分は立って乗るためのスペースです。ワット・アルンはすぐ次の船着き場、時間にして5分程度なので立ったまま過ごします。
船着き場が近づくと、車掌のおばちゃんが「Wat Arun!!!」と叫んで到着地を教えてくれます。
というわけであっという間に「ワット・アルン Wat Arun」に到着。
船着き場はワット・アルンの敷地内にあるようで、船を降りたすぐ目の前にチケット売り場があります。見たところ敷地を通らずに外へ出る通路は見当たらなかったので、ワット・アルン専用の船着き場になっているようです。
拝観料100B(約400円)を支払って境内へ。チケットを買うとワット・アルンのラベルがついた水のペットボトルをもらいました。常温とはいえサービスがあるだけありがたい。
境内に入るとやはり真っ先に目を引くのは高い高い仏塔「プラプラーン」です。観光客の大半はここに押し寄せており、オシャレだったり派手だったり、様々な服装をした人たちがそろいもそろって自撮りにいそしんでいます。
何せここはバンコク市内でも指折りの「インスタ映え」スポット。周りとそっくり同じポーズや背景で写真を撮って「オシャレさをアピール」というのは、オッサンになったあさかぜにはどうにも理解しがたい世界ですが…
個性をアピールしようとして、むしろ没個性的になっているような…?
先ほどのワット・プラケオにあった金色の仏塔と同様、サルの神と悪魔によって支えられているヒンドゥー教の影響を受けた仏塔です。高さは75mもあり、対岸からもとても目立ちます。
階段を上っていくと塔の1/3ぐらいの高さまで行くことができます。狭い上にかなり急なので、インスタ映えを意識するあまりにしょうもない服装や靴で行くとケガをする原因になりますので気をつけましょう。
中心にそびえる大仏塔の周囲には、ほぼ同じ形をしたミニサイズの仏塔がさらに4基建っています。ミニサイズといってもご覧の通り周辺の建物より抜きん出て高いですが…
計5基の塔が建つ台座は1辺230m以上にもなる巨大なもの。何もかもが驚くべきサイズ感です。
真下から見上げた大仏塔はド迫力です。これだけの大きさがありながら、他の寺院やその仏塔と同様に隙間なくびっしりと装飾が施されていて圧巻!主に陶器を砕いた破片を使って彩られています。
ライトアップ用なのか配線がむき出しなのはアレですが…
ポカンと仏塔を見上げていると、すぐ隣で日本人のカップルが写真を撮るのに苦労していました。そりゃこれだけの大きさの仏塔を背景にツーショットを撮るのは、自撮りだと難しいでしょう。
というわけで、通りがかりのあさかぜが見上げるような構図で2人を撮ってあげました。オッサンに話しかけられたことは別として、お若い2人の良い思い出になると良いのですが。
裏側には寺院を訪れる際のマナーを呼びかける立て看板がありました。
この旅行記でも散々書いていますが、肌をむき出しにするような服装で寺院を訪れるのはマナー違反。仏像のタトゥーを入れるというのも、仏教への冒涜と見なされるようです。
またアユタヤの旅行記でも触れたように、仏像に登ったりして頭を仏像よりも高い位置に持って行くのもNG。ワット・アルンでは「固く禁ずる」と強い言葉で書かれています。
タイ人に限らず仏教になじみある東南アジア・東アジア人からすれば「仏像によじ登るのはいけないことだ」となんとなく身に染みついていることでしょう。神だか仏だかよくわかっていなくても、いろんなものに「神聖さ」を感じる日本人としても当たり前に映るかもしれません。
しかしこう大きく書かれているということは、宗教の違いなどでこうしたルールやマナーを理解できず守れない人たちがそれなりの数いるのでしょうね。
大半の人たちはインスタ映えする大仏塔にしか興味を示していませんが、お寺の中心は仏像の収められた本堂です。
本堂の手前には2体の鬼によって守られた門がそびえていました。
てな具合でてっきり唯一の本堂だと思って入ったお堂は、ラーマ2世の治世中、つまり大仏塔と同じ19世紀初頭に建てられた新しい方の本堂。
元からの仏像が安置されている本堂はもう1つあるそうで、そこに行かなければ古のワット・アルンには触れることができなかったというわけです。不覚!
旅行記を書き始めるまでそんなことはつゆ知らず、「全く、インスタにかまけて仏像を見ないなんて…」といかにもわかっている顔をして仏像の前に正座する当時のあさかぜ。ちゃんと下調べをしておかないからこうなるわけです。
ちゃんと歴史に触れておくと、ワット・アルンの元となる寺院「ワット・マコック」は17世紀から存在していたといわれています。その後、新しい首都を作ろうとチャオプラヤ川に沿って旅をしていたタークシン王が、夜明けの時間にこの寺院に到着。そのできごとから「夜明けの寺院」を意味する「ワット・チェン」と呼ばれるようになりました。
仏塔の修復を兼ねてプラプラーンが作られたのは先述の通り19世紀初頭、そのときから「暁の寺」を意味する「ワット・アルン」という名前が使われるようになり、ラーマ4世の治世中(在位:1851-1868)に現在の名称「ワット・アルン・ラーチャワラーラム」へと改められました。
…ってな内容が、船着き場のすぐ近くにある案内看板で紹介されていました。
ちなみに先ほど訪れた「エメラルド仏」は、当初このワット・アルンに安置されていたという話があります。ワット・プラケオが完成するまで一時的に置かれていたそうで、あさかぜがさっぱり気付かなかった古い礼拝堂にはエメラルド仏のレプリカが置かれているとか。
本物のエメラルド仏は撮影禁止なので、その雰囲気を感じられるのはワット・アルンのレプリカだけ。それをみすみす見落としてきたのは痛恨の極みです。
窓の周囲には眩しく輝く装飾。
他の寺院と同じく、本堂の周辺には金色の仏像がずらりと並ぶ回廊があります。その数実に120体。
境内をおおよそ1周して船着き場の近くまで戻って来ました。日差しが強く、日向にいると厳しい暑さを感じますが、川の近くに出てくると風が吹いて少しだけ涼しくなります。湿気を多分に含むのでねっとりとした風ではありますが…
目の前を流れるチャオプラヤ川はタイの歴史を語る上で欠かすことができません。アユタヤ王朝は川に面した港によって発展しましたし、上流にある2つの支流は古都チェンマイと、13世紀頃に栄えたタイ人最初の国家スコータイ朝を支えました。
そして豊富な水量は流域に豊かな水田を育み、米の輸出によって経済を支えることになります。
そして18世紀以降、このバンコクに首都が移されてタイの中心地として成長。市内にはいたるところに運河が張り巡らされていて、クルマが出てくる以前には舟運が発達していたことがうかがえます。
現在でもチャオプラヤ川が非常に重要な交通路であることは、行き交う船の多さを見ていてもよくわかります。先ほど対岸から乗った水上バス以外にも、そこそこ大きなはしけから細長い水上タクシー、ゴムボートに乗った警察らしき姿まで、大小様々な船が縦横無尽に行き交います。
「ぶつかったりしないのかなぁ…」と、川岸から見ているとヒヤヒヤしますが…
だんだん日が傾いてきました。疲れてきましたし、少し早いものの次の目的地に向かって移動することにします。
昨日の晩、ひかげ氏と一緒にライトアップを覗き込んだ裏口から外へ出て、右へ曲がるとすぐに渡し船乗り場。昨晩は営業が終了していて乗れなかったヤツです。
渡し船に乗ってチャオプラヤ川を対岸へと渡ります。船賃はたった5B、船着き場の入口に座っているおばちゃんに渡します。
案内には10~15分間隔で運航らしきことが書かれていますが、満員になれば適宜出港となる様子。対岸までの所要時間はわずか3分、あっという間の船旅です。
ほとんどの船が南北に移動する中、この渡し船は東西に突っ切るのでなかなかハラハラさせられます。すぐ着くので船にイスはなく、手すりやポールを掴んで過ごすものの、結構揺れる…!
船を下りてからは雑然とした通りを歩いてSanam Chai(サナーム・チャイ)駅まで戻ります。
地元の人向けの日用品を売るお店、観光客にお土産を売りつけるお店、オシャレなカフェやレストラン、そして一人旅の強い味方セブンイレブン。
セブンイレブンは文字通りバンコク市内に無数にあり、間に1軒挟んで2つのセブンイレブンが並ぶ光景も見られるほどです。
ミネラルウォーターやビール、軽食など必要なものが片っ端からそろっているので、一人でレストランやカフェになかなか入りづらい性格の人間としては非常に助かります。
ファミリマートやローソンもありますが圧倒的多数をセブンが占めるため、近くのコンビニを知りたいときは「セーウェン(セブンのタイ訛り)」と尋ねれば通じるとかなんとか。
コインロッカーに預けていた荷物を回収して、フアランポーン駅に行って次の予定に備えることにします。
そうそう、バンコクの地下鉄のエスカレーターはやけに動きが速い。日本の駅の倍ぐらい速いように感じられます。逆に日本もこれぐらい速くすれば“歩きエスカレーター”も少なくなるんじゃないかと思いますが、「不注意で転んでも自己責任」という考え方ができずに他人のせいにする我が国では無理か…
シンガポールもそうでしたし、タイでもエスカレーターは右側に立ちます。むしろ東京のように左側に立つところの方が少数派…?
>>つづく<<