2023年3月31日、日本の航空業界にめでたいニュースが飛び込んできました。かねてから就航に向けて準備を進めていた新しい航空会社「トキエア TOKI AIR」に航空運送事業許可が認められたのです!同時に新潟~札幌(丘珠)線の就航日も2023年6月30日に正式決定しました。
大手の日本航空(JAL)やANAなどの息がかかっていない独立した航空会社としては、2009年2月のフジドリームエアラインズ(FDA)以来、実に14年ぶりのこと。
特に日本で航空運送事業許可(長ったらしいのでAir Operator's Certificate = AOCと以下は書きます)を独立した航空会社で取得するのは、生半可なことではありません。安全管理がきちんとできる体制が整っているかはもちろんのこと、航空会社としてやっていけるだけの体力があるかまでチェックされるからです。
<2009年7月に運航を開始したフジドリームエアラインズ。16機まで成長した2023年現在はJALとの共同運航も行っている>
2014年3月に設立され、2017年10月まで就航がずれ込み、新型コロナウイルスを理由に2020年9月で日本の空から消えたエアアジア・ジャパン(2代目)という航空会社がありました。
親玉のエアアジアグループのCEOであるトニー・フェルナンデス氏は
「日本の当局の認可が他国よりも遅い」
「審査が古風でボトルネックになっている」
とコメントをしていました。
(引用元:エアアジアCEO、日本当局を批判『古風でボトルネック』 | sky-budget スカイバジェット)
ちなみにエアアジアは2014年に墜落事故を起こしています。
逆に言えば、AOC取得までの厳しい審査のおかげで安全管理が微妙な有象無象の航空会社が現れるのを防いでいるともいえます。日本は羽田~新千歳・福岡・那覇という世界でも指折りの高需要区間を抱えていますから、ひとたび事故が起きれば影響は甚大です。
もちろん、その長くかかる審査が航空会社の資金面での大きな負担につながっていることは紛れもない事実とは思いますけどね…
このAOC取得の難しさが新しい航空会社の参入を阻み、日本の航空業界が世界に比べて後れを取っている、という批判は充分に理解はできます。
ともあれ、高いハードルを乗り越えて、トキエアがAOCを取得できたのはとても喜ばしいこと。2023年6月30日に新潟~札幌(丘珠)線を週4便、各日2往復で開設する予定。札幌の中心街に近い丘珠空港への発着となるので、利便性もだいぶ高くなりそうです。
その後は仙台(10月以降)、名古屋(中部)(12月以降)、神戸(12月以降)への路線開設を決めており、2024年夏以降は東京(成田?)や佐渡への路線も計画されています。
佐渡への路線にはATR42の短距離離着陸型であるATR42-600Sの投入を想定しており、構想通り行けば3年後ぐらいには実質的に途絶えている佐渡空港の定期便が復活するはずです。
<佐渡空港へはATR42-600(写真)を短距離離着陸に特化させた、ATR42-600Sを投入する計画。>
一方、どうにも不穏な空気が流れているのはもう一つの地域航空会社、「ジェイ・キャス」です。トキエアと同様にATR72型を使って大都市と地方都市を結ぶ計画を立てています。
当初は2021年度に関西~富山を皮切りに能登・米子・石見への路線を開設する予定でした。会社概要を見ると、関西空港に加えて中部空港も拠点とする計画のようです。
ところが新型コロナウイルスの影響もあって就航は延期、22年8月の報道では関西~富山の開設は2024年秋の見込みへと大幅な先送りとなっています。ちなみにこれが2度目の延期。
<トキエアでもジェイ・キャスでも主力機材となるATR72。写真は1世代前の-500だが外見からは見分けがつかない。-600ではコクピット計器やエンジンの出力が変わった>
地方空港を拠点とするトキエアと違って自治体の支援を充分に得られていないのか、支援基金を作って寄付を呼びかけるなど、資金面での不安定さを覗かせる一面もあります…
2023年1月には運航開始に向けての支援金500万円をクラウドファンディングにて集めようとしました。しかし集まったのは100万5千円と、目標の2割。
SNSで準備報告をしているトキエアの影に隠れてしまったのかもしれませんが、それにしたって厳しいものがあります。
就航予定が1年半後に近づいていても、運航機材を発注したとか、どこからリースするとかいう話もさっぱり聞こえてきませんし…
本当に大丈夫なんだろうか、と外野にいるただのヒコーキオタクとしてはかなり不安に思えてしまいます。
富山は関西圏との往来が活発ですし、能登も萩・石見も観光地でありながらアクセス性は良好とはいえないので、運航開始にこぎ着けられればそこそこ需要がありそうな気はしますけども。
やはり人を乗せて空を飛ぶ以上、簡単には準備はできませんし、認可も都合良くは下りないようです。
ジェイ・キャスの就航可否は2023年内~24年春ぐらいにはわかるでしょうか…?
<新興航空会社は独立して運営していくのが難しかったところもあり、ソラシドエア(写真)やエア・ドゥ、スターフライヤーなどはANAの軍門に降った>
ところでトキエアの習熟フライトを撮りに行きたいのですが、飛ぶか飛ばないかパターンがつかめないんですよね。
正式運航開始まで撮る機会には恵まれない気がするので、トキエアには早く運航スケジュールを発表していただきたいものです。
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参考資料:
トキエア、新潟-丘珠6/30就航へ 国交省からAOC取得 - Aviation Wire
https://www.aviationwire.jp/archives/273676
トキエア佐渡空港発着便の就航、24年夏以降の見通し・新潟 - 新潟日報
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/206114
新エアラインのジェイキャス、就航時期を2024年秋に延期 大阪/関西~富山・米子・能登・石見線を開設 - skybudget
https://sky-budget.com/2022/08/13/jcas-launch-osaka2024/
関空と中部拠点に就航予定の新エアラインのジェイキャス、クラウドファンディングで目標金額に到達せず - skybudget
https://sky-budget.com/2023/03/24/jcasnews-2/