慌ただしく荷物をまとめて旅館を出てきました。ああでもないこうでもないとやっていたのは旅慣れていない両親で、いつも通り前日の晩にほぼ全ての荷物をまとめていたあさかぜはケータイ片手に暇を持て余していました。
起きたらケータイの充電器と歯磨きセットぐらいを詰めればいいようにしておくのが、出発日の朝に慌てないコツです。
玉名市街のトヨタレンタカーにヤリスを返却し、九州新幹線の新玉名駅まで送ってもらいます。
お店の前のくまモンにも手作りのマスクが装着されていました。
新玉名の駅前にはもう何年も前に祖母の葬式で訪れたときにはなかった、金栗四三(かなくり しそう)先生の像が立っていました。2019年のNHK大河ドラマ「いだてん」の主人公だった金栗氏は何を隠そうここ熊本県玉名市…のすぐ隣にある和水(なごみ)町出身。
日本で初めてのオリンピック選手であり、関東一円では正月恒例のイベント「箱根駅伝」の創設者でもあります。ゴム底をつけたマラソン用の足袋「金栗足袋」は日本のマラソンシューズの原点と言われているとのこと。
大河ドラマになるはるか前から地元では英雄的存在で、父が高校生だった半世紀近く前に玉名高校で講演会が行われた際、
「母ちゃん、学校に金栗四三が来た!」
と祖母に報告したところ、
「金栗 先 生 と呼べ!」
と怒られたとか。
像の台座に掘られているのは、名誉玉名市民 金栗先生の座右の銘ともいえる「体力 気力 努力」という言葉。
「体力」とは心身の健康
「氣力」とは初志貫徹の意志力
「努力」とは忍耐の継続
(和水町ウェブサイトより)
という意味が込められているそうで、スポーツに限らず人間の生き方そのものに通じるものです。
なお新玉名駅構内の物産店「たまララ」には金栗四三グッズがいくつか販売されていますので、玉名市への旅行の記念にいかがでしょう。
たまララの中には金栗先生を紹介する人型パネルがありますが、その向かいには『温泉むすめ』の玉名満美(たまな まみ)ちゃんのパネルが立っていました。
セピア色の金栗先生パネルとの対照っぷり…
そういえば今回泊まっていたのは玉名温泉ではなく小天(おあま)温泉だったので、温泉むすめグッズは何もありませんでした。時間があれば思い出の玉名温泉公共浴場に行きたかったのですが…
ちなみにこの玉名満美ちゃんも過激派フェミニストに目をつけられ、「胸が大きすぎて性の消費対象にしている!」と炎上させられたキャラクターです。のちに胸の大きさは修正されてこのパネルの姿になっています。
たかだか架空のキャラクターにそこまで騒ぐほどのことなんですかね…声だけ大きいあの手の人たちは現実と仮想の区別がつかず、何もかもが敵に見えて生きづらくて仕方ないだろうと感じます。同情の余地はありませんが、なんだかかわいそうですね。
ともあれ、たまララに缶バッジが売っていたので記念に買っておきました。
なお玉名市には公式マスコットとして「タマにゃん」がいます。お世辞にもメジャーとは言えず、グッズ類もくまモンに完全に喰われていますが、玉名市を訪れたときはタマにゃんもお忘れなく!!
わざわざ伯父伯母夫婦が我が家を見送りに駅まで来てくれました。我々が改札を通ってホームに上がって姿が見えなくなるまで手を振ってくれ、なんだかすごく名残惜しくなります。
いよいよ新玉名を去る時間になってしまいました。「みずほ」と「さくら」は新玉名を通過していきますが、ほんのわずかに新玉名に止まる「さくら」があります。今から乗るのはその貴重な「さくら546号」です。
写真は546号が到着する少し前に通過していった下り列車です。1/6400のシャッタースピードを確保するためにISO感度を5000まで上げましたが、そこまで極端なザラザラ感はありません。さすがフルサイズ機…
AFがしっかり追従している上にローリングシャッターも起こしていませんから、もう動きものの撮影もミラーレスで十二分な時代になりました。
引き続き「さくら546号」に乗って一人旅行に繰り出す父親を博多駅で見送り、あさかぜと母親は福岡空港へ移動してきました。博多駅から地下鉄でたった5分、天神からでも10分と、大都市に隣接する空港としては最強の立地です。
数年ぶりに訪れた福岡空港はもはや全く知らない空港へと生まれ変わっていました。天井が低く、汚れてはいないものの長年の活躍が見えていたターミナルビルの記憶とはきれいさっぱり一致しません。
3階には「ラーメン滑走路」というラーメン屋を中心に集めた通路があり、先月の旅行でもこの3日間でも本格的な博多ラーメンにありつけなかったあさかぜは、ついつい一人でそちらへ吸い寄せられていきます。
9店舗も並んでいて目移りしてしまいますが、玉名市内にあるのと同じ店名である「玉龍」に狙いを定めました。リニューアル前から空港で営業していたラーメン店だそう。ちょうどお昼時で少し待ちましたが、1人は空いた席に入れてもらえるので早い方です。
どぎつい豚骨感がある玉名の「玉龍」と違い、こちらは福岡風の上品なスープです。ラーメン720円+替え玉160円という価格は空港にしては良心的。麺はバリカタを選びました。
ぐっと豚骨の風味が押し寄せてくるスープに感動を禁じ得ません。個人的には熊本風のもっとキツい豚骨スープの方が好きですが、空港の中であんな臭いラーメンを出したらウケないでしょうからこのぐらいがちょうどいい。
これでようやく1ヶ月半越しのとんこつラーメンへの欲望がそれなりに収まりました。やっぱり熊本で食べれば良かった、という思いはわずかにありますけどね。
あれやこれややっているうちにまもなく搭乗時刻です。JGC会員でありながら今回はラウンジに入る時間もありませんでした。
旅のクライマックス、福岡から羽田へ帰る飛行機は日本航空の最新鋭機材A350-900が入る便をわざわざ選択。運航開始からかなり経ちますし、何なら初号機のテストフライトから撮っていたにもかかわらず、乗ったことは一度もなかったのです。
搭乗機はデリバリーからまだ半年と経っていない9号機、JA09XJ。国内線に使われているのですでにフライト回数はそこそここなしているはずですが、まだ機体の各部はピカピカです。
日本航空では国内線向けに16機をそろえる予定。座席配置はファーストクラス12席、クラスJ94席、普通席263席の369席仕様「X11」を標準としていますが、一部の機体はクラスJを56席に減らして普通席を323席まで増やした詰め込み仕様の「X12」で導入される予定です。
X11とX12のコンフィギュレーションは2週間程度あれば入れ替えられるようになっているそうで、通常期は369席仕様をメインに繁忙期は391席仕様を増やすという運用を可能としています。
普段から搭乗率の高い福岡~東京線ですし、土曜日ということもあってかクラスJへのアップグレードはできませんでした。
主翼前縁あたりから始まる普通席は3+3+3の9席配置。さすがに横方向はそれなりに狭いなとは思いますが、薄型の座席になったこともあって前後はさほど窮屈には感じません。今の座席はよくできていますねぇ…
JALの国内線機材ではA350で初めて採用された全席個人モニターは、右下に見える通りパナソニック・アビオニクス製。パナソニックグループではありますが、本社と開発拠点はアメリカのカリフォルニア州にあり全世界でのシェアは7割にも達するIFE業界の最大手。
やはりエアバス機と言えばこの視点から見られる機外カメラ。最新のIFEには映画、ゲーム、音楽などなど様々な機能が備えられていますが、あさかぜはこの画面とフライトマップぐらいしか見ていませんでした。
国内線ターミナルはリニューアルに合わせて展望デッキも大きく改良されました。今までガラス張りでお世辞にも撮りづらいとはいえなかった場所でしたが、羽田空港やセントレアのようなワイヤー式フェンスになって撮影環境はかなり良くなったそうです。
願わくば午後順光となる国際線ターミナルの展望デッキもリニューアルされないものかと思いますが…
ガラスに貼られたフィルムが劣化していて、撮影以前にただ眺めるだけでも見づらいんですよねぇ…
誘導路2本を使って交互に出発機を出していき、その隙間に着陸機が降りてきます。福岡空港は運航便数が国内3位という多さにもかかわらず、滑走路が1本しかなくほぼ一日中混雑しています。滑走路1本あたりの発着便数は羽田を越えており、「日本で一番忙しい空港」と言っても間違いはありません。
2024年度の完成を目指して滑走路の増設事業が続けられており、ようやく慢性的な混雑状態がある程度は解消される見込み。羽田や成田と違って新しい滑走路はすぐ隣にできるので同時離着陸はできないものの、滑走路内で待機させることができるようになるので相当に改善されるはずです。
[PDFファイル] 福岡空港 滑走路増設事業 - 国土交通省 九州地方整備局
http://www.qsr.mlit.go.jp/site_files/file/s_top/jigyo-hyoka/191126/shiryo3%20fukuokakuukou.pdf
なめらかに福岡空港を離陸しました。乗り慣れたB777-200に比べると明らかに静かで感心してしまいます。
離陸時でも驚くほど静かなのに、巡航中は隣の席なら小声で会話できるほどの静粛性。これだけ快適性が高いのですから、どこの航空会社もこぞってA350を主力機種にしているのも納得です。
早くも日が傾き始めた15時前、羽田空港に若干遅れて到着しました。
機内は満席で、いくらJGCメンバーで優遇されているとはいえ荷物が出てくるのにそれなりに時間を要しました。帰りのリムジンバスもほぼ全ての席が埋まっており、本格的に旅行などの移動需要が戻ってきつつあることを感じます。
帰り道の途中で預けてあったイヌとネコを回収し、無事に自宅へ帰り着きました。新しい発見も懐かしさも味わえた良い旅でしたが、
両親とともに旅行へ行くのはもうコリゴリです…
やっぱり旅行は一人で出かけるのが楽だ、ということをこれ以上なく感じた4日間でもありました…