あさかぜみずほの趣味活動記録簿

旅行記や主に飛行機の写真をひたすら載せ続ける、趣味のブログです。たまに日記らしき投稿もあり…?

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ひとりでお気楽アルペン紀行 - 2日目【前編】(2020年9月11日)

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だいぶ酔っ払って早々に寝落ちしてしまいました。いつもよりもだいぶ睡眠時間が長かった気がします。

大浴場へ朝風呂をしに行きましたが、昨晩同様にほとんど人が入っていません。ホテルの駐車場は白いバンタイプのクルマが多く入っていて工事関係者っぽい姿の人を結構見かけたのですが…のんびりとお風呂につかるぐらいなら睡眠と食事に充てた方が良いということなのでしょうか。

 

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チェックアウトを済ませ、ホテルのすぐ目の前にある信濃大町駅へ出てきました。

今日は人生初のアルペンルート
期待に胸が高鳴ります。

朝食を食べている時には雨が降っていましたが、とりあえず今は上がっています。このままもってほしいところです。
アルペンルートへ向かうバスは駅に向かって右側のバス停から出発するので、まずはそばの発売所で扇沢までのバスチケットを買います。アルペンルート本体のチケットは扇沢で改めて購入。

 

kitaalps-kotsu.k-amenix.co.jp

 

 

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8時ちょうど発の扇沢ゆきはアルピコ交通の高速バス車両で到着しました。乗り込んだのはあさかぜも含めてたったの4人で、アルペンルート観光にはかなり良い時間のスタートにもかかわらず閑散としています。

途中いくつかホテルを経由するので、そこで乗客をある程度拾っていくのかもしれません。

 

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黄金色に色づきつつある田んぼや白い花を咲かせるそば畑を脇目に、バスは緩やかに高度を上げていきます。大町温泉郷、日向山高原とホテルのあるエリアに立ち寄りますが乗車はなし
他の3人もみんな一人旅のようで、ただひたすらバスのエンジン音だけが車内に響きわたります。

 

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日向山高原を過ぎると一気に山間部へと突入します。勾配がきつくなり、カーブも急になりました。険しい後立山連峰に近づいている感じがしてきます。

 

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信濃大町駅から40分で終点の扇沢に到着。目の前には新幹線の駅舎のような立派な建物がそびえています。
バスターミナルの前には広大な駐車場があり、マイカー利用者はここでクルマを置いてアルペンルートに入らねばなりません。環境保全の観点からアルペンルートはマイカーでの通り抜けはできないので、自家用車で来た人はアルペンルートを往復して戻ってくるか、3万円近い料金を払ってルートの反対側に回送してもらうかのどちらかになります。

大きな建物の1階部分はチケット売り場。乗り物別のきっぷも買えますが、立山まで通り抜ける人は9,300円の「通り抜けチケット」を買った方が楽でしょう。コンビニで引換券を買っておくとほんのわずかですがお得になります。

※2021年度はコンビニチケット販売していない様子。

 

www.alpen-route.com

 

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スタートの扇沢からまず乗るのは関電トンネルトロリーバス
だったのは2018年までの話。老朽化に伴って2019年からは架線設備の不要な電気バスの運行へと切り替わり、路線名も「関電トンネル電気バス」に改められました。
ちなみにトロリーバスは鉄道という扱いだったので、最後まで使っていたバスも「300形無軌条電車」という形式がつけられていました。充電式の電気バスになり、鉄道としての関電トンネルトロリーバスは2018年12月1日で廃止されています。

扇沢駅売店にはトロリーバスグッズが大幅値引きで販売されており、むしろ過去を偲ぶマニアにはラッキーかも知れません。

 

www.kurobe-dam.com

 

 

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ヒュイーンとモーターの音を響かせて扇沢駅を発車した電気バス。駅を回り込むように走るので「ほほう、電気バスの充電設備はこうなっているのか…」と観察していると、すぐにトンネルへ突入します。

長さ5.4kmの関電トンネルは、黒部ダム建設のため1958年に関西電力が開通させたトンネルです。途中に大量の水を含んだ「破砕帯」と呼ばれる脆弱な地盤に阻まれ、とてつもない難工事になりました。
80mにわたる破砕帯は青色の照明でライトアップされ、そこが最大の難所であったことを示しています。

 

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7ヶ月にわたる死闘を繰り広げた破砕帯の部分をあっという間に通り過ぎ、扇沢から16分で黒部ダム駅に到着します。
車体は外からだと普通の日野・ブルーリボンに見えますが屋根の上にはパンタグラフが隠れており、扇沢駅の所定の停止位置に止まるとパンタグラフを上げて10分間で急速充電するようになっています。蓄電池の技術が成熟したからこそ可能になった運行形態ですね。

 

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黒部ダム駅に降りるとルートが2つに分かれます。1つは黒部ダムの天端に直接出て行く階段60段のルート、もう1つは220段の階段を上り詰めて黒部ダムを俯瞰する展望台へ至るルート。

…ここまで来たなら展望台を目指すのが男として当然でしょう!

というわけで気合いを入れて220段の階段に挑みますが、これがまたキツい。途中の踊り場には休憩用のイスも置かれていますが、他のオジサンたちには負けられないと意地になって上がってきたら足がガクガクになってしまいました…

 

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意地になるんじゃなかったと半ば後悔しながら展望台へ出ると、つまらないプライドなんてどうでもよくなるような美しい景色です!話し相手もいないのに思わず一人で「おお、すごい…!」と感嘆の声を出してしまうぐらい。景色を見てこんなに感激したのはいつ以来でしょうか。

 

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眼下に見えるのはかの有名な黒部ダム堤高186m、堤頂長492mを誇る日本最大のアーチ式ダムです。思い描いていた姿をはるか超えた迫力に息を呑みます。

展望台の後方には破砕帯から湧出した水が飲めるように流れています。ちょうど手元にほとんど空になったミネラルウォーターのペットボトルがあったので、中身を捨てて水を入れてみます。
天然のフィルターで磨き上げられた水の温度はたったの4度。めちゃくちゃ冷たい!こんな刺すように冷たい水が毎秒660リットルも破砕帯では湧き出したのですから殺人的です。

 

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周囲はどこを見回しても急峻な山、山、山…こんな険しい山を削って谷を埋めてダムを建設しようだなんて普通では考えられません。それだけ建設当時の関西地区の電力事情が切羽詰まっていた証でもあります。

黒部ダムの建設では171人の作業員が殉職しています。建設当時「黒部にケガはない」と言われたのだとか。安全が確保されているということではなく、ケガをするまでも無く死ぬという危険な現場だったというわけです…

 

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展望台から外階段をレインボーテラスへと降りていきます。途中には建設に使われたコンクリートバケットと滑車が展示されていました。

 

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レインボーテラスからは放水による水しぶきが文字通り虹を描く光景が見られます。
このように霧状に放水するのは何も景色を楽しませるためではなく、地盤が削られる(「洗掘 せんくつ」といいます)のを防ぐためです。そのまま滝のように放水してしまうと水の勢いで地盤が削られていってしまうので、「ハウエルバンガーバルブ」という弁を使って空気を取り込んで水の勢いを殺しているのです。

 

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ダムの対岸を見上げると、建設時に使ったであろうコンクリート製の遺構が見えます。あそこで先ほどの巨大なバケットにコンクリートを積み、谷に渡した太いロープを使ってクレーンで谷底までコンクリートを下ろしていました。その回数は1日で最大960回という記録が残されています。

 

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レインボーテラスのすぐそばには黒部ダム建設の歴史をたどることの出来る特設会場があります。内部には関電トンネル建設を描いた三船敏郎石原裕次郎主演の映画「黒部の太陽」撮影のセットも再現されていました。

撮影に用いたトンネルセットのレプリカの一番奥では、黒部ダム建設の時代背景や技術などを解説する映像が流れています。20分以上ある映像ですが見応えのある作品なので、ぜひとも最初から最後まで通して見てもらいたいと思います。

 

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再び長い階段をひいひい言いながら上りきり、レストハウスで休憩することにします。まだ10時半ですが混み合う前に早めのお昼ご飯としておきましょう。

 

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やはりダムへ来ているからにはダムカレーを注文せねば。
黒部ダムカレーは1,100円と少々お高めですが、山の上ですから仕方ありません。ほうれん草ベースの緑色のルーはダム湖の色をイメージしているのだそうです。かなり辛めなのが一口食べただけでわかりますので、辛いカレーが苦手な人は避けた方が良いでしょう。

どこかで食べたことのある味だな…と半分ぐらい食べたところで思い出しました。
いなばのタイカレーだ…

 

www.kurobe-dam.com

 

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いなばの黒部ダムカレーを平らげていよいよダムの堤体へと進みます。

…その前に右岸側の設備なども見ておきましょう。

 

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右岸側は管理事務所があって点検用の船を上げ下げするためのインクラインが設置されています。発電所へ送水するための取水口もここにあります。

黒部ダムの場合、付随する発電所「黒部第四発電所」はダムから離れた下流の地下に設置されており、33万5千キロワットという水力発電としては日本最大の出力を稼ぎ出すため、545.5mの大きな落差をつけています。発電所は一般人が立ち入れないそうで、時たま開催される「黒部ルート見学会」に当選すれば見学ができるとのこと。

 

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殉職者を弔うレリーフが飾られています。黒部ダムの建設当時「出力1万キロワットごとに1人の死者が出る」と言われていたダム建設工事。計画出力25万キロワットの黒部ダムでは171名もの方が犠牲になり、いかに危険な工事であったかを物語っています。

 

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左岸側と同様に右岸にも建設時に使用されたコンクリート製の遺構がはるか高いところに見えます。

 

【中編へ続く】