あさかぜみずほの趣味活動記録簿

旅行記や主に飛行機の写真をひたすら載せ続ける、趣味のブログです。たまに日記らしき投稿もあり…?

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ひとりでお気楽アルペン紀行 - 2日目【中編】(2020年9月11日)

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いよいよ堤体に踏み出します。写真で見るとそこまで迫力は感じられないバルブからの放水ですが、実際に近くで見ると空気の響きが低音となって聞こえてきてゾクゾクします。これを体感するだけでもアルペンルートの料金を払う価値が大いにあるでしょう。

 

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急峻な山に挟まれて黒部川はダムの下流ですぐに見えなくなります。

 

 

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さっき抜けてきた関電トンネルはこの壁のようにそびえる後立山連峰をくり抜いたもの。こんな場所をくぐり抜けてコンクリートで谷を塞ぐだなんて、すさまじいまでの覚悟と気力です。

 

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結構歩いてきた気がしますがようやくここで半分です。標高は1,454mもあって日が隠れると涼しく感じますが、今日はほとんど日が照っているので歩いていると結構暑い…今のところは半袖のポロシャツ1枚で充分ですね。

 

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またダムの技術的な話になってしまいますが、実は黒部ダムは純粋な「アーチ式ダム」ではありません
本来のアーチ式ダムはせき止めた水の重さをダム左右の岩盤へと逃がす構造となっており、コンクリートの使用量が少なく工費が圧縮できる一方で強固な岩盤構造が必要になってきます。
ところが建設直前の1959年にイタリアのアーチ式ダム「マルパッセダム」が決壊し、400名以上の犠牲者を出す大惨事が発生します。ダムを支える岩盤が水の重さに耐えきれなかったのが原因で、黒部ダムでも周辺の岩盤調査を行ったところ想定以上に弱い場所があることが発覚しました。

このため両端にはダムのアーチを支える部分を用意することに。このウイング部はコンクリートの重さで水圧に耐える「重力式コンクリートダム」の構造を取って、ダム本体から伝わる水圧を下方向へ逃がす造りとしています。
こうした複数の方式を採ったダムのことを「コンバインダム」と呼びます。なので厳密に言えば黒部ダムはコンバインダムなのですが、メインで水圧を受けているのがアーチ式構造の部分なので「アーチ式ダム」の分類でいいんでしょうね。

 

www.kurobe-dam.com

 

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上流側へ張り出してくるアーチ式ダムの構造がよくわかります。歩道のすぐ下に開いているのは「非常用洪水吐」で、水位がいっぱいいっぱいのところに来てしまった場合はそこから水を排出してダムが壊れないようにするためのもので、これは穴が開いているだけの「自然越流型」というタイプ。洗面台に開いた穴と同じ役目です。

 

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観光する側としてはとてもありがたいことに観光客の数がとても少なく、構造物や展示物をじっくり観察しやすくて助かります。近くに人がいなければマスクも外せますし、その分山奥の汚れていない空気を思う存分吸い込めます。

 

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せっかくですから水をたたえる黒部湖を巡る遊覧船にも乗っておきましょう。
天端を渡り終えて物々しいゲートをくぐったら左へ進み、廃道みたいな雰囲気の通路を5分ちょっと歩いて行くと遊覧船「ガルベ」のチケット売り場があります。

 

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料金は1,100円、日中は約40分間隔で運行されている遊覧船「ガルベ」。出航まで20分ほど時間があるので少しその辺を散歩してみます。

近くで見るとあれほど巨大に感じていたダム堤体も、少し離れたところから見ると周囲の景色に気圧されるかのように小さく見えてしまうのですから不思議です。

 

www.kurobe-dam.com

 

 

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遊歩道をさらに先へ進んでいくと15分ほどで「ロッジくろよん」へと到達できます。周辺の山々への登山客はもちろん、黒部ダムの観光客も宿泊できる山小屋だそう。キャンプもできるようです。
場所も場所ですし山小屋ですから設備も限られます。我々のような観光を主体として設備のいいところをと思うのであれば、大人しく室堂のホテルに泊まる方がお互いに幸せでしょう。

 

www.kuroyon.com

 

 

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出航のおよそ8分前、改札が始まります。そしてひたすら下へ下へ続く急な階段…!下りるだけでもなかなかだと思いますが、これは船を降りて階段を上ってくるのはかなりしんどいのでは…?

現に数分前に戻ってきた人の中には途中にある休憩スペースで座り込んでいる姿もあります。ちなみに写真は残り1/3ぐらいになったところで撮ったもの。船を降りたらこの上にまだ2倍の階段が待っています。

 

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遊覧船というと何年か前に佐渡島尖閣湾で激しく揺れた苦い思い出がよみがえりますが、今日の黒部湖は風はほとんどありませんし外海にも通じていないので穏やかです。ちゃぷちゃぷんと少し上下に揺れる程度でいたって快適。遊覧船というのはこうでなくては…

雲が増えてきて景色の色合いがいまひとつですが、黒部湖の独特の色はよくわかります。日が照っていれば確かにエメラルドグリーンに見えると言ってもウソではありません。
岸辺は植物が生えている部分とそうでない部分がはっきりと分かれています。春頃の雪解けシーズンでは白いところいっぱいいっぱいのところまで水位が上がるのでしょうね。

 

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写真のずっと奥にそびえる山は標高2,864mを誇る飛騨山脈の赤牛岳です。黒部ダムから登山ルートが通じており、ちょっと検索してみたら結構な数の登山レポートが見つかりました。

乗り物ごとのきっぷが売られているのはどういうわけだろうと不思議に思っていましたが、途中から乗り降りして登山をする人たちがいるからなんですね。

 

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ところどころに沢が流れ込んでくる場所があります。沢というにはずいぶん規模が大きく見えなくもありませんが…
黒部川上流の年間降水量は3,000~4,000mmでだいたい東京の倍ぐらいです。普段から雨の多いところに雪解け水が加わったりするとすごい水量が流れてくるんでしょうね。

 

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残念ながら船着き場より下流、ダムに近いところまでは進んでくれません。取水設備や非常用洪水吐なんかも近くで見てみたかったところですけどね…
まぁ景色を見るための遊覧船であって、ダムの構造物を観察したい変な人たちのものではないので仕方ありません。

そんなことよりも問題は船を降りた後です…

 

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見てください、この階段…
繰り返しになりますが、足腰の弱い人はかなりの覚悟を持って「ガルベ」に挑んでください。貯水量が多く水位が高いシーズンならまだしも、現在のように水位が低い時だと階段を見上げて絶望します。

次の便に乗る人たちがこの階段を見下ろして「ええ…すごいねこれ…」という戸惑いの声を上げていましたが、30分後にはきっと何も言えなくなっているはずです。

 

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5分ほどかけてやっと入口まで戻ってきました。途中で止まったら動く気力がなくなると思ってひと思いに上ってきましたが、いやはや死ぬかと思った…
トンネルの中のひんやりした空気が火照った体に心地良いです。

 

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黒部ダムをあとにしてアルペンルートの続きを進みましょう。電気バスとは対岸にある黒部湖駅から、黒部ケーブルカー黒部平駅へと上がります
このケーブルカーは日本で唯一の全線地下式なので、窓はついていますが外の景色は全く見えません。雪崩などの被害を防止するために地下となっているそうで、雨風に晒されない分車両の傷みが遅いためか1969年開業時の車両がそのまま現役で使われています。

 

www.alpen-route.com

 

 

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およそ5分で400mを上り詰め、標高1,828mの黒部平に到着しました。ここはもっぱらケーブルカーとロープウェイを乗り継ぐための施設なので、土産店とトイレ以外はこれといって特にありません。一応駅のそばには高山植物の展示施設があるようです。

記念碑の横は湧き水が汲めるようになっており、先ほどの長い階段で体から失われた水分をここで補います。「破砕帯の水」ほどキンキンではありませんでした。

 

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すぐに乗り継いでしまうのもなんだかもったいない感じがします。時間はたっぷりありますからね。建物の上は展望台になっていることですし、周辺の眺望を楽しんでからさらに上へ向かうことにしましょう。

 

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はるか斜面の上へと伸びているケーブルは「立山ロープウェイ。長さは1,700mあり、間に支柱が1本もない「ワンスパンロープウェイ」としては日本最長を誇ります。
ここは日本有数の豪雪地帯で、暖かくなってくると雪崩もしばしば発生します。間に支柱があると雪の重さや雪崩のダメージをもろに喰らうことになってしまうので、わざわざこうした構造にしているのです。

 

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黒部平駅の展望台からは黒部ダムはほとんど見えません。

 

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30分を黒部平で過ごして、立山ロープウェイ大観峰へとさらに登ります。ロープウェイが出発してすぐに雨模様となってしまいました…黒部ダムにいたときは暑いぐらいに晴れていたのに、天気が悪くなるにつれて気温も明らかに下がっていきます。

ちなみにロープウェイも「索道」と呼ばれて鉄道の仲間に分類されています。トロリーバスといいロープウェイといい鉄道とは何なのかという気もしますが、決まった場所しか走ることができない乗り物は全部雑多に「鉄道」として分類しているんでしょうね。その方が整備状況の管理などもやりやすいのでしょう。

 

www.alpen-route.com

 

 

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標高2,316mの大観峰に到着しました。外はザーザー降りですが、ここまで来ているからには展望台へ行っておかねば。

この高さまで上がってくるとちょっとした動作でさえ体力を消耗するそうです。階段には警告文の代わりに「挑戦状」が掲げてありました。
階段の途中にある解説によれば、この標高では気温にして約14℃、酸素濃度は3割が地表に比べると低くなっているそうです。アドバイスに従って無理せずゆっくりと階段を上がります。

 

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後立山連峰の険しい山々が一望できる展望台。晴れていればそれはそれは美しい景色であろうことが容易に想像できますが、あいにく今の天気では水墨画のような状態です。山の天気は変わりやすいので仕方ありませんねぇ。

 

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背後は立山連峰の険しい山々が連なります。山と言うより目に入るのは崖だけ…

 

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「急に雨が降ってきたと言うことは急にやむこともあるかもしれない」と気長に待っていると、眼下の黒部湖に太陽の光が当たって独特の緑色がハッキリ見えるようになりました。

しかしどこを向いても平らな場所がありませんね…そりゃ雪崩も起きるわけです。

 

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大観峰はその名の通りアルペンルートの中で最も美しい景色が見られる場所。待合所にはスタッフが撮影した写真が飾られており、どれも美しさのあまり見入ってしまうものばかりです。
真冬の景色を見ることができるのはスタッフならではですが、気候の厳しさを想像すると乗り切れる気がしません…

 

【後編へ続く】