N747BC / Atlas Air / Boeing 747-400LCF
専用の機材に固定されたB787の主翼1機分が、ドリームリフターの機内へと運び込まれていきます。主翼は三菱重工業が生産の全てを担当する他、川崎重工業、富士重工業(現 SUBARU)も機体の胴体部分を担当しており、日本企業の分担比率は全体の35%にも上ります。
他にもカーボン繊維は東レが独占的に供給していますし、B787が装着するエンジン2種も川崎・IHI・三菱という名だたるメーカーが参画し、「準日本製」なんて書かれるほどです。
…だからこそ、「重要部品が造れるんだし、本気出せば飛行機だって造れるでしょ」という甘い考えが実はMRJプロジェクトの根底にあったのでは?と疑ってしまうわけですが。
N700MK / Wilmington Trust Company / Gulfstream G-V
プライベートジェットではおなじみの運航会社、ウィルミントントラストのガルフストリームが離陸していきました。
よーく垂直尾翼を見ると「SKY KUMARK III」というロゴが小さく入っています。航空写真家チャーリィ古庄氏のブログを見ると、どうやら日本のインターネットプロバイダ「GMO」の社長さんが所有しているプライベート機のようです。
ガルフストリームをはじめ、プライベート機の管理や整備は日本だとほとんどできません。運用されている数がかなり少ないですからね。
狭い国土に公共交通機関が発達しているのでプライベート機を所有する意味が薄いのはわかりますが、それゆえに航空機の開発に「本気」になれないのかななんて思ってしまったりも。
JA20MC / Star Flyer / Airbus A320-200
午後になり、国内線ターミナルを発着する機体のスポッティングカットがはかどります。
スターフライヤーの導入初期の機体はすでにリースバックされていますが、初期導入機は黒と白の境目に金色や銀色の細い帯が入っていたように記憶しています。ハセガワ製の1/200サイズのプラモにも細い金帯のデカールが入っていて、「こんなの貼り付けられないよ」と頭を抱えた思い出が…
途中の導入機からはその境目の線が省略されています。あまり印象の違いはなかったので、作業の手間が減って良かったのではないでしょうか…?
JA09RJ / IBEX Airlines / Bombardier CRJ-700ER
「ANAコネクション」としてANA便名もつけてコードシェアを行っているアイベックスエアラインズ。なのでなんとなくANAの出資するリージョナル会社なのかと思ってしまいがちですが、実はANAとの資本関係はありません。
アイベックスの親会社は会計ソフトなどを手がけるJDL(日本デジタル研究所)。国際線乗継客を地方へ運送するため成田発着の路線も複数運航していましたが、新型コロナウイルスの影響で2020年10月に成田と小松から撤退。
現在は伊丹や仙台を中心に地方を結ぶ路線を主軸にしています。
運航機材も日本では唯一となるボンバルディア・CRJシリーズ。CRJシリーズはビジネスジェット「チャレンジャー」をベースにしており、旅客機にしては天井が低めなのが泣き所です。
N747BC / Atlas Air / Boeing 747-400LCF
主翼の積み込みが終わり、再びお尻が閉じられようとしています。正確な弧を描かなければいけませんから、お尻の下の支援車両は正確な動きを要求されることでしょう。
人を乗せていた頃は垂直尾翼のすぐ下ぐらいまでが与圧エリアとなっていました。しかしドリームリフターに改造するにあたり、胴体はグッと太くなりましたし、ご覧の通り開口部も巨大なので与圧するのは困難です。
載せるのは酸素が薄くても構わない飛行機の部品ですから、与圧をする意味もありません。
そのため、ドリームリフターでは胴体が太くなる直前で与圧エリアはおしまい。機首部分の人が乗るエリアに限られているので、太い胴体を使って人や生き物を輸送することはできません。
JA05RK / Japan Transocean Air / Boeing 737-800
日本トランスオーシャン航空のジンベエジェットが到着しました。あさかぜも1回だけ乗ったことがありますが、機内のアメニティもジンベエザメの絵が描かれたかわいらしいものでした。
ピンク色をまとった「サクラジンベエ」とともにJTAのマスコット的存在ですが、運用範囲が広いのでなかなか狙って見たり乗ったりできない難しさがあります。
G-DHLW / DHL Air UK / Boeing 777F
太陽を眩しく反射するDHL機が出発していきます。
セントレアの展望デッキはT字型をしているターミナルビルの先端まで伸びていて、誘導路がすぐ目の前に見えるのも大きな魅力です。小型のB737・A320シリーズでも飛行機の大きさは味わえますが、やはりB777のような大きな飛行機が来るとその迫力に圧倒されますね。
G-DHLW / DHL Air UK / Boeing 777F
ボーイングは今年2月、777Fの後継機として開発中の777Xにも貨物型を設定することを発表しました。
ベースは機体が短い方の777-8となるそうで、2027年頃から航空会社への引き渡しが始まる予定です。日本でもB777Fを保有するANAホールディングスが2機の導入を発表しました。
B777-8Fは積載量だけで見れば118tと、今まで航空貨物業界でブイブイ言わせてきたB747-400Fとほぼ同等。さすがに最新のB747-8Fにはかなわないものの、長物さえ積まなければ747-400Fの完全な代替機といえる存在になります。
ただB777Xは最初に開発している-9が予定からだいぶ遅れており、その後-8、-8Fと開発が進むはずなので、果たして2027年という予定は達成できるのでしょうか…?
JA627A / All Nippon Airways / Boeing 767-300ER
発着機の合間を縫って、JA627Aがひたすらタッチアンドゴー訓練を続けています。
この訓練はひたすら同じ周回ルートを飛び続けます。上から見ると大きな長方形を描く飛行経路になっていて、デッキから見ているとかなり滑走路に近いところで着陸地点に正対しています。
あさかぜはシミュレーションゲーム「MSFS2020」でも着陸が死ぬほど苦手なので、鮮やかにルートを描いて決まったポジションに接地するパイロット訓練生を尊敬します。
JA05RK / Japan Transocean Air / Boeing 737-800
到着からおよそ1時間で早くも折り返していくジンベエジェット。
ちなみに朝からずっと展望デッキに張り付いているあさかぜは、未だに食事らしい食事をできていません。のんびりお昼を食べている間にドリームリフターが動いてしまったら、わざわざセントレアに来た意味がありませんから。
そんな趣味への執着心の結果、ホテルの朝ご飯以来ほとんど何も食べていないという…一人旅だからできる行為ですが、決してほめられたものではありません。
N747BC / Atlas Air / Boeing 747-400LCF
不健康へと追いやっている張本人(?)はようやく動き出しそうな気配を見せました。
全ての扉という扉が閉められ、乗降用のタラップも外されて、つながっているのは機体の先端に見える電源車とそのそばに控える空調用の車両のみ。出発が近づいているのがわかります。
地上支援はANAが行っているようですが、奥に見える空調車はJALのロゴが入っています。
JA627A / All Nippon Airways / Boeing 767-300ER
そうこうしているうちに、今日の訓練を終えたらしいJA627Aが降りてきました。一度昼頃に訓練生の交代のためか降りてきましたが、休憩もそこそこに空に舞い戻ってひたすらタッチアンドゴーを繰り返していました。
訓練生のたゆまない訓練と努力によって、日々の日本の空の安全が守られているわけですね。
N747BC / Atlas Air / Boeing 747-400LCF
支援車両が離れ、ついにドリームリフターが動き始めました!
N747BC / Atlas Air / Boeing 747-400LCF
日が傾きかけたセントレアの滑走路を重々しく滑走していくドリームリフターの姿。
展望デッキでカメラを構えるヒコーキオタクだけでなく、居合わせただけのカップルや家族連れからも「ドリームリフターだ!」という声が上がります。さすがセントレアの人気者!
N747BC / Atlas Air / Boeing 747-400LCF
B787の主翼を載せて、ドリームリフターはセントレアを優雅に飛び立ちました。左右の主翼の反り返りから機体の重さが伝わってくるかのようです。
ただ飛び立つ姿は優雅でも、機体全体を見るとまぁ不格好な姿です…さすが世界で最もブサイクな飛行機、なんて言われるだけあります。
B787の主翼や胴体の一部をまるごと積み込めるようにした結果、流麗なジャンボの機体ははるかに巨大な筒に置き換わってしまいました。同じような目的で開発されたエアバスの「ベルーガST(A300ベース)」「ベルーガXL(A330ベース)」に比べると、やっつけ感も漂いますし、ネーミングも安直な感じ…
ちなみに機種名の「LCF」は「Large Cargo Freighter(長大貨物用貨物機)」の頭文字を取ったものです。
N747BC / Atlas Air / Boeing 747-400LCF
離陸も見送ったし引き上げるか、と立ち去ろうとしたところ、近くで同じようにカメラを構えていた耳の聞こえないおじさんから身振りで呼び止められました。
ドリームリフターは離陸後ぐるりと上空を周回して、セントレアの上空を飛び越えていくというのです。全然知らなかったあさかぜは、それを眺めることなく立ち去ってしまうところでした。
教えてもらったとおり、ドリームリフターはセントレアの上空を飛び越えて、はるかアンカレッジへ向かって飛び去っていきました。
改めてお礼を告げようと振り返ると、すでにおじさんはいなくなっていました。
たまたま居合わせただけの知らないヤツに教えてくださったおじさん、ありがとうございました!
とりあえずセントレアへ来た最大の目的は達成しましたが、ここまで来た以上はまだ見ておくべき施設があります。
そう、B787をまるごと1機展示している「フライト・オブ・ドリームズ」です。