あさかぜみずほの趣味活動記録簿

旅行記や主に飛行機の写真をひたすら載せ続ける、趣味のブログです。たまに日記らしき投稿もあり…?

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【microTRIP】オリエント急行で優雅なティータイム(2021年2月13日)

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年明けから再スタートされてしまった緊急事態宣言が残念ながら延長され、解除されることを見越して大学時代の後輩が立ててくれたお出かけの計画にもかぶってしまいました。
まぁ酒を飲んで大声で騒いで回るノーマスクのオッサンたちではないので、多少の外出は問題ないでしょう。体温を測って発熱がないことも確認した上で、小田急線の新宿駅へ集合します。

これから乗るのは小田急の最新型ロマンスカーGSE」こと70000形。新たなフラッグシップとして君臨しつつも、ロマンスカーの伝統であった連節構造をやめて通常のボギー車とするなど時代に合わせた対応も行われています。

 

www.odakyu.jp

 

 

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側面に描かれている「GSE」のロゴ。Gは「Graceful=優雅さ」から取られています。
先代のVSEは白が基調でしたが、GSEではバラの赤色をイメージしたローズバーミリオンに。他ではあまり見たことのない独特な赤色をしています。一応車体にはVSEと同じく赤色の細帯が入っていますが、車体の色と重なって遠くからでは気付きません。

 

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窓が大きい…!高さ1mもあるそうです。11月に乗ったE5系新幹線の窓なんて470mmしかありませんから、GSEに比べたらハガキみたいなサイズ感。大きい分日が照ると暑いんですけどね…
天井もドーム型になっていてかなり開放感がありますし、間接照明で天井の白さを輝かせているところにもデザイナーのこだわりを感じます。

しかし窓の大きさのせいか網棚が狭い…奥行きも高さも寸詰まりなので、載せられる荷物はだいぶ小さめ。通勤用のリュックでも少し不安になるぐらいなので、機内持ち込みサイズのキャリーケースはまず載らないでしょう。車端部にあるラゲージスペースの利用が必須です。

 

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シートも足下を広く見せるために薄型となっていますが、新宿~箱根湯本間は遅い列車でも1時間半以内で到着しますからケチをつけるほどではありませんMSEのに比べれば相当良くなりましたしね。
ただVSEのような窓側へ5度の角度がついて景色が見やすくなる、という工夫は継承して欲しかったと思います。

 

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終点の箱根湯本で特急列車を降り、大急ぎで駅前の箱根登山バスの営業所に駆け込みます。ラリック美術館の入場券もセットになった乗車券を人数分まとめて購入し、小走りで桃源台ゆきのバスのりばへ。何とか間に合いました。

湯本駅からはバスで25分ぐらいなのですが、山道を登っていくのでまぁ左右に揺れること…元々乗り物酔いをしない体質のあさかぜはなんともありませんが、隣に座っていた後輩は「油断すると酔いそうですね…」と弱気な声。
降車バス停でチラリと見えた前の方の席のお姉さんは、完全に座席でうずくまっていました。乗り物酔いをする人は可能な限り登山電車を利用した方が良さそうです…

 

www.hakone-tozanbus.co.jp

 

 

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ラリック美術館のティータイムイベントは13時から。さすがにお昼時ですし、非番のあさかぜは早朝にパンを1つ食べたきりでかなり空腹です。
というわけで予約を済ませたら美術館の目の前にあるちゃいなハウスでお昼ご飯とします。威勢のいいおばちゃんに案内され、メニューを決めます。観光地だしそんなに量が多いのは出てこないでしょう、と勝手に決め込んでスタミナ餃子セット(1,518円)」を選びましたが…

すごいボリューム…!
そしてうまい!

それなりにお腹いっぱいになればいいやと軽い気持ちでしたが、しっかりたらふく食べてしまいました…

 

chinahouse.web.fc2.com

 

 

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ラリック美術館に戻り、いよいよ今日のメインイベントの始まりです。
ラリック美術館には1両まるごと「オリエント急行」に使われていた食堂車が収蔵されています。もちろんレプリカではなく本物。1日に数回この車内でお茶をいただくコースが用意されており、我々は「鉄道研究会(のOB)」らしくそれを体験しにやってきたのです。

まずは車両の前で説明を兼ねたDVDを見ます。箱根の山の中まで25mもある鉄道車両を運び込んでくるのは簡単な話ではないわけで、企画から実現に至るまでの苦労がよくわかりました。

 

www.lalique-museum.com

 

 

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この車両が連結されていたオリエント急行ベルギーで設立されたワゴン・リ社によって運行されていました。1988年には台車を履き替えて日本に上陸し「オリエント・エクスプレス '88」として日本一周旅行が行われたこともありましたが、その際に来日した食堂車がまさに今ラリック美術館で展示されている車両なのです。

 

www.1999.co.jp

 

 

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車内に使われているのはほとんど全て木目の美しいマホガニー。長い時間と丁寧な手入れが重なってつややかに美しく光っています。
洗面所でさえ惚れ惚れとするような美しさですが、手洗い石けんのプラスチック部品だけがやけに現代っぽさを見せてなんともミスマッチです。この車両は2002年まで現役だったので末期に取り付けられたものなのでしょう。下手に取り外しても最初期の状態に戻すことは大変でしょうから、これでいいのかもしれません。

なおこの洗面所も展示物の一部なので、触ったり使用することはできません

 

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きれいにテーブルクロスがひかれたテーブルへと案内されました。肘掛けつきのイスもこれでもかとばかりにフカフカで、とても鉄道車両のものとは思えません。
長くても2時間ぐらいしか滞在しないであろう食堂車でこのクオリティなら、寝台車のベッドはどれほど快適だったことでしょう。

 

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席についてまもなくティーセットが運ばれてきます。予約の時にホットコーヒーかホットティーを尋ねられるので、あさかぜは紅茶を選んでおきました。

予想の倍は大きなシフォンケーキです。そのまま食べてもおいしいですが、添えられたホイップクリームでもっと甘くクリーミーに。
紅茶もカップ3杯分ぐらい入っていて、正直なところお昼を食べ過ぎたせいで全部飲みきれません。もったいない…!

 

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この時代の食堂車は窓を開けられたんですね。窓枠には「身を乗り出すと危険(英語)」「身を乗り出すな(フランス語)」と書かれた金属プレートがネジ止めされています。
おそらくガラスの横にあるレバーで窓の開閉かロックの解除を行うのでしょうが、壊してしまっては大変なので触らないでおきます

 

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窓と窓の間にはガラス製のレリーフも飾られています。モチーフになっているのはローマ神話に出てくるお酒の神様Bacchus。日本では「バッカス」と呼ばれますが、元々はギリシア神話ディオニューソスの異名「バッコス」がローマに入ってラテン語読みの「バックス」となり、綴りを見てイギリス人が「バッカス」と呼んだものが日本に入ってきました。

ギリシア神話から入ってきたディオニューソス改めバックスは元からローマ神話で豊穣の神であるLiber(リーベル)と結びつき、同一のものとして崇拝を集めるようになりました。同じような神様ならまとめてしまえ、というローマ人の合理性が見えて面白くなります。

 

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車両の隅には異常時に列車を止めるための緊急ブレーキの取っ手があります。国際列車らしくドイツ語・フランス語・イタリア語・英語の4カ国語表記。こうやって並べられるとそれぞれの言語における単語の意味がなんとなくわかってきますね。

 

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40分ほどのティータイムはあっという間に終わってしまいました。後ろ髪を引かれる思いで車両から退出します。

 

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我々の滞在していた共有スペースに加えて、奥の方へ進んでいくと個室スペースもありました。高位の人たちがここで他の人に邪魔されることなくディナータイムを過ごしていたのでしょうね。
この部屋には我々のような下々の見学者は立ち入ることはできずガラス越しに眺めるだけですが、雰囲気はよく伝わってきます。

 

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最後に車両をもう一度外から観察しておしまいです。
台車は現役時代そのままのものでこの車両を運び入れる際にちゃんと下に1,435mm軌間のレールを敷き、その上に台車と車体を置いてあります。
車両を運び込んでから建物を造ったので、雨風が完全に排除できるという鉄道車両の保存には理想的な環境ですね。

 

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台車を写した上の写真に、NIOEという文字が車体に小さく入っているのが見えるかと思います。Nostalgie Isutanbul Orient Express(ノスタルジーイスタンブル・オリエント・エクスプレス)の頭文字で、この車両が2002年までつながれていた列車です。

1976年頃からドイツのイントラフルークという会社が運行しており、ドイツやスイスを起点にイスタンブールまで走っていました。来日が実現したのもイントラフルークが乗り気だったからというのもあるようです。1993年頃に経営難で他の旅行会社に売却されつつも、2002年まで活躍したのは先ほど触れたとおりです。

イントラフルークから受け継いだ旅行会社はドイツの古い客車も集めて運行していたようですが、フランス国鉄から「オリエント急行のものではない車両がメインなのにオリエント急行を名乗るとは何事か」と訴訟を起こされ、2008年以降は別の列車名で運行しているようです。

 

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台車付近には乗り入れできる国の記号(UIC国別記号)が列記されています。

D=ドイツ、A=オーストリア、B=ベルギー、BG=ブルガリア、CH=スイス、CS=チェコスロバキア、DK=デンマーク、F=フランス、GR=ギリシア、It=イタリア、J=日本?、L=ルクセンブルク、N=ノルウェー、NS=シンガポール?、PL=ポーランド、R=ロシア?、S=スウェーデン、TC=?、H=ハンガリー

?がついているのは確証のない国名です。TCに至ってはタークス・カイコス諸島というイギリスの海外領土が出てきましたが、そこに鉄道はないようです…

 

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もうちょっと見ていたかったですが退出の時間です。後ろ髪を引かれる思いで展示室を後にしてきました。

この貴重なオリエント急行 ル・トラン」のティータイムは2,200円で体験できます。タイムテーブルはこの情勢ゆえ変更されていることもありますので、事前にラリック美術館のホームページでご確認ください。

 

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肝心のラリック美術館の本館ですが、帰りのバスまで時間がないので大慌てで回ってきました。ガラスを使った美しい芸術品の数々が所狭しと飾られています。ちなみに冒頭の箱根登山バスのセット乗車券を買うと受付で記念品のポストカードをもらえます。

なお我々は完全に「オリエントエクスプレス」目当てですが、本来はフランス人の芸術家ルネ・ラリック(1860-1945)が手がけた美術品を飾っているのがラリック美術館。そのラリックが先ほどのオリエント急行の内装デザインを手がけたので、あの車両が収蔵されているというわけ。旧朝香宮邸の装飾品も手がけるなど日本にも少し縁のある人物です。
せっかくですから、オリエント急行を訪れた際は本館も入ってルネ・ラリックの美しい美術品も見ておきましょう

というわけでなんとかバスに間に合いました

 

www.lalique-museum.com

 

 

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ラリック美術館から20分ちょっとで箱根登山鉄道強羅駅に到着です。なんだか小田急線は人身事故で運転見合わせとかいう不穏な表示が出ていますが、とりあえず箱根湯本まで戻らねばどうにもなりません。

待っていたのは箱根登山鉄道最新型車両、3000形「アレグラ」号。2014年のデビュー当初は1両編成だけでしたが、2017年からは2両編成の3100形も加わって箱根登山線の輸送力増強に役立っています。

 

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大きな窓と天井を高く見せるやり方は午前中に乗ってきたGSEにそっくりで、それもそのはずで双方とも「岡部憲明アーキテクチャーネットワーク」がデザインを担当しています。
座席部分の窓も大きいですが、運転席直後の展望ゾーンでは天井から床まで届く大きな窓が取り付けられて眺望を楽しめるようになっています。開口部が大きくしつつ車体の剛性を維持する設計は大変そうですね。

 

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強羅から40分、終点の箱根湯本まで降りてきました。
途中80‰(パーミル、千分率)という急な坂と半径30mの急カーブで箱根の急な山を上り下りしますが、それでもクリアできない急な斜面は進行方向を変えてジグザグに移動するスイッチバックも3回駆使します。

箱根観光のメインルートとなっている路線なので観光シーズンになると平日休日問わず混雑している印象ですが、今日は席がほどよく埋まる程度でした。
傾斜と揺れがなかなか激しいので40分立ちっぱなしだとかなりしんどいと思いますね…

 

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箱根湯本駅では車両の水タンクへの給水風景が見られます。この列車は回送列車なので給水していませんが、折り返し列車は合間にホースを水タンクに挿します。
補給した水はきついカーブを曲がるときに車輪とレールの摩耗を抑えるために使います。水タンクは360Lも容量があり、片道50~80Lをレールに散水しながら上り下りするのだとか。

屋根上には大型の抵抗器も設置されています。坂道を下るときにはモーターを使った「発電ブレーキ」を使うのですが、モーターで生み出された電力を抵抗器で熱へと変えて放出するのです。ブレーキシューを車輪に押しつける摩擦式のブレーキでは過熱して利かなくなってしまいます。クルマで坂道を下るときにはフットブレーキを多用せず、エンジンブレーキを使いなさいというのと同じ話です。

 

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人身事故の影響でどうなることかと思われましたが、無事に予定通りVSEに乗車することができそうです。ロマンスカーと言えば展望席の印象が強いですが、実はVSEにしか存在しない特別な座席クラスがあります。

 

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それはサルーン席」。1部屋分=4人分の特急料金を支払って使える4人用の半個室で、通路とはガラスの仕切りで区切られているちょっとしたプライベートな空間です。数あるロマンスカーの中でVSEの3号車のみ設置され、数も3室12人分とほんのわずかの特別な空間です。

我々は今回このサルーン席に乗車。この状況なので大声でおしゃべりをしたりはしませんが、普段なら多少大きな声で話をしてもひんしゅくを買うことはなさそうです。なお個室感があるのはいいのですが、座席はリクライニングをせず固定のまま。うたた寝をするのにはちょっと辛い…

普通席、展望席、サルーン席、連節車体、というロマンスカーの要素を全て備えるVSEはやはり今でも小田急のフラッグシップなわけです。確かにGSEは最新かもしれませんが、車両の「格」としてはどうにもVSEよりも下に見えてしまって仕方がありません。

 

www.odakyu.jp

 

 

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伊勢原付近は広々とした田園風景が広がっているのですが、畑の中に線路へ向けて目立つように看板が立てられています。1つや2つじゃありません。

全て「高山 謝罪しろ!」という黄色地の看板で、それ以外は何も書かれていないので一体何を訴えかけるものなのかさっぱりわかりません。
おそらく現在の伊勢原市長へ向けてのメッセージだろうということですが、こういった情報に良くも悪くも詳しいTwitterなどを見てみてもこれといった情報が出てこないのが不思議です。

一時期に比べればこれでも減ったそうですが、車窓の左右両方に見えるので異様な雰囲気は感じ取れます。

 

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後輩たちのプランニングのおかげで無事にGSEVSEの乗り比べが達成できました。久しぶりに小田急と箱根登山電車に乗りましたが、遠出をしなくても関東近辺でも楽しめるところは充分にあります。

もちろんどこから来たとかなんとか宣言だとかそういうのを気にせず出かけられるのが一番ですが…「集団、近接、密閉=しゅうきんぺい」の3つを避けられるのであれば経済活動はどんどんやっていくべきだと思いますね。