あさかぜみずほの趣味活動記録簿

旅行記や主に飛行機の写真をひたすら載せ続ける、趣味のブログです。たまに日記らしき投稿もあり…?

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「ジャンボ」のいた空を振り返る - ハイテクジャンボ編

1989年、新しいジャンボの試験機が空を飛びました。その名も Boeing 747-400
機体の見た目は1981年にデビューした-300型とほとんど同じで、長い主翼の先端に上向きの小さな翼が付け足されたぐらいにしか見えません。しかし中身は今までのジャンボとは全くもって別物になっていて、むしろ従来のジャンボとは見た目しか似ていないと言っても大げさではありません。

そして進化した-400型からは様々な用途に合わせた派生型も数多く誕生しています。747シリーズ最大のベストセラー機を観察していってみましょう。

● 胴体
翼の付け根部分の形状を改良した以外は-300型と同じ。座席間隔を詰めれば2階席部分だけで70席が配置できます。

主翼
より経済的、かつ高速で飛行できるよう形状や角度、エンジンの取り付け部が設計し直されました。わかりやすい特徴は先端につくウイングレット」という、高さ1.8mの上向きに生えた小さな翼。飛行中に空気抵抗となる主翼先端にできてしまう空気の渦「翼端渦」を拡散させ、燃費を向上させる効果があります。

離着陸時に展開されるフラップも改良され、低速時の飛行がさらに安定するようにもなりました。

B747.jpg
<目立たないところでは主翼の取り付け方の構造が変化している。-400型の方は空力改善>

● エンジン
パワーアップし、FADECを装備した新型エンジンを装備。FADECとはエンジンを制御するためのコンピュータで、デジタル制御になったことで始動の自動化や燃費の向上がなされたことが大きな違いです。
従来のクラシックジャンボと同様に3社のエンジンから選択できます。

● 操縦席
最も大きく変わったのはコクピットです。-300型までは機長と副操縦士に加え、航空機関士を入れた3名が必要でした。機関士はたくさんのアナログ式計器をチェックし、主にエンジン関連の操作や調整を行う役回りです。
-400型では「グラスコクピット」を導入パイロットの前にあるモニターに情報が映し出されるようになり、コンピューターの判断で必要な情報がピックアップされるようになりました。デジタルな表示へと統合されて壁一面にあったアナログ計器の多くがなくなったため、航空機関士も不要になったのです。大型機で2名運航となるのは初めてのことだったため、安全面を理由にアメリカのパイロットの労働組合を中心に激しい反発が起きました。
ゆえに運航開始からしばらくの間3名体制で運航にあたっていた時期もありましたが、やがて安全上問題の無いことが確認されると正式に2名運航へと移行していきます。以後、B777A380のような大型機でも機長・副操縦士の2名で運航することが標準となったのです。

● 客室
基本的にはベースとなった-300型と同一。頭上の荷物棚(オーバーヘッドビン)は容積の大きなものへと改良され、より多くの手荷物が収納できるようになりました。


特にコクピットを中心に従来機とは全く別物になった-400シリーズ。続いては個性ある派生型を見ていきます。


■ -400型
747-400.jpg
主翼の端に見えるウイングレットで燃費向上を図る。短距離の飛行ではむしろ重量が増えて燃費面では不利とされた>

標準モデルとして最も多くの機数が製造されました。どこの航空会社でも社を代表するフラッグシップとして君臨し、絶大な評価を得ます。
メインデッキ(1階客室)の最前方は主にファーストクラスにあてがわれました。静かだけれども乗降は手間になるアッパーデッキ(2階客室)はビジネスクラスとして使われることが多かったようです。

全幅×全長×全高:64.4×70.7×19.4m
離陸重量:362,875kg
航続距離:13,445km
座席数:416席(3クラス)
初就航:1989年2月
製造機数:442機


■ -400F型
747-400Fa.jpg
<-400Fは頭の「コブ」が短いのが特徴>

純粋な貨物型です。標準の-400との大きな違いはアッパーデッキの長さ
-300の項でも触れたとおり、アッパーデッキは長い方が燃費が良くなります。ただアッパーデッキの床がメインデッキの高さを圧迫してしまうため、かさばる荷物を積むときには邪魔になってしまいます。
-400Fはあえてアッパーデッキを-200などと同じ短さにして、メインデッキの高さを稼いでいます。貨物型では長い距離を一度に飛ぶよりも多くの荷物を積むことの方が重要になるので、この方が都合がいいのです。
-200型と同様、鼻先に上向きに開く「ノーズカーゴドア」も装備しています。
モデル名のFは「Freighter(貨物機)」から。

全幅×全長×全高:64.4×70.7×19.4m
離陸重量:396,900kg
航続距離:8,232km
積載重量:113,000kg
初就航:1993年11月
製造機数:126機


■ -400M型
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<機体の後ろ半分が貨物室へと変化した-400M。-400Fと同じ位置にカーゴドアが見える>

前方に旅客、後方に貨物を積んでいいとこ取りをしようとした「貨客混載型」です。見た目はほとんど-400と同じですが、よく目をこらすと機体の左後部に貨物用の大きなドアが見えます。
後方を貨物室として使っても、およそ270名の旅客も運ぶことができるのはジャンボならではです。
モデル名のMは「Mix(混載)」から。

全幅×全長×全高:64.4×70.7×19.4m
離陸重量:362,875kg
航続距離:12,594km
座席数:268席(3クラス)
初就航:1989年1月
製造機数:61機


■ -400D型
747-400D.jpg
<国内の巨大な移動需要を支えた-400D。双発機ながら500席を装備できるB777-300の台頭で姿を消した>

全日本空輸ANA)と日本航空JAL)だけが導入した日本国内線向けの専用モデルです。短距離の飛行では重量面でむしろ不都合となるウイングレットを省略し、搭載できる燃料も(書面上では)減らしました。
代わりに頻繁な着陸に耐えられるように足回りを中心に強化が施されています。
基本構造は-400のままなので、ANAではウイングレットを装着して国際線用に一時転用された機体もありましたし、逆に-400型2機がウイングレットを外して-400D型として運航されました。
国内線向けとあって収容力にステータスが振り向けられていて、JALでは2クラス最大568席ANAでは夏の繁忙期用にエコノミークラスのみ594席という記録も持っています。
モデル名のDは「Domestic(国内線)」から。

全幅×全長×全高:59.6×70.7×19.4m
離陸重量:272,200kg
航続距離:4,170km
座席数:568席(2クラス)
初就航:1991年10月
製造機数:19機


■ -400ER型 / -400ERF型
747-400ER.jpg
カンタスだけが導入した旅客型の-400ER型。オーストラリアという位置の都合上、カンタスはたまに超長距離型をメーカーに要望する>

標準型の足回りを強化してより積載量を増やしたのがER型です。増えた分を燃料タンクとすればおよそ800km分長く飛べるようになり、燃料タンクとしなければその分多くの荷物や乗客を搭載できます。
旅客型のER型はカンタス航空が6機を発注しただけのごく少数派。一方積める荷物が増えるとあって、貨物型のERF型はそれなりの売れ行きとなりました
機内やコクピットに若干の改良が加えられた以外は大きな変更点はなく、通常の-400型と比べると見分けはつきません

-400ER:
全幅×全長×全高:64.4×70.7×19.4m
離陸重量:412,770kg
航続距離:14,251km
座席数:416席(3クラス)
初就航:2002年10月
製造機数:6機

-400ERF:
全幅×全長×全高:64.4×70.7×19.4m
離陸重量:412,775kg
航続距離:9,200km
積載重量:123,208kg
初就航:2002年10月
製造機数:40機

747-400ERF.jpg
<標準のF型と見分けのつかないERF型。タイヤのサイズがわずかに大きくなっている>

ここまでが-400とその仲間たちで、最初からその目的で新造されたグループ。時が経って貨物型へと改造されたモデルが以下の通り

■ -400BCF型 / -400BDSF型
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<元々が旅客型のためアッパーデッキの長さや窓はそのまま。ちなみにこの機体はJALで飛んでいた機体(元JA8902)>

-400型を貨物機へと改修したもの。両者の違いはボーイングが改修したか(BCF)イスラエルのメーカーが改修したか(BDSF)で違いはほとんどありません。元々が旅客型なので、-400Fに見られるノーズカーゴドアはありません。またアッパーデッキも長いままなので、純粋な-400Fに比べると貨物の搭載量も若干少なめです。
ただ安く貨物型を調達したい航空会社からは人気で、各社から引退した旅客型が貨物機へと生まれ変わって空を飛び続けている例も多くあります。

747-400BDSF.jpg
イスラエルのBedek Aviation Groupが改修を担当するBDSF型。同社はB767の貨物型改造なども行っている>

■ -400LCF
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<明らかに異形なLCF型。機体の中央部分をそっくり交換している>

世界各地で製造されたBoeing 787の主翼や胴体などの大きな部品を、最終組み立て工場のあるアメリカ・シアトルまで運ぶためだけに改修された機体。787の愛称である「Dreamliner(ドリームライナー)にちなんで、「Dreamlifter(ドリームリフター)」の愛称がつけられています。
大きな部品を入れるため、ぼっこりと膨れた機体形状が特徴。荷物の積み込みは機体の後部をバックリとあけて行うため、どこまでもブサイクな飛行機です…

-400型から改造されたものの、特徴的なウイングレットは取り外されました。ウイングレットがついていると飛行中にフラッター(振動)を引き起こすためだそうです。-400D型のような雰囲気ですね。
日本では愛知県の中部国際空港セントレア)に週3~4便程度がやってきてSUBARU川崎重工三菱重工で製造された787の部品を積んで飛び立ちます。
LCFは「Large Cargo Freighter(大型荷物用貨物機)」の頭文字から。4機が改造されました。

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<長くて大きな主翼などを積み込むため尾部を専用の車両でバックリと開ける構造。旅客機だった頃の流麗さはそこにはない>


● まとめ
-400だけで今までの747クラシックと同じぐらいの機数が売れました。やがて世界中の空港で設備の受け入れサイズを決める基準となる飛行機となっていきます。

最新技術を持ち込んでBoeing 747シリーズのベストセラーとなった-400ファミリー。最後に登場した-400ERF型もそこそこ好調な売れ行きを見せ、ヨーロッパでは「ジャンボ」よりもさらに大きな飛行機 Airbus A380 の計画も始まっています。
エアバスに対抗してボーイングは747シリーズのさらなる次世代化を進め、新たなジャンボの計画を始動します。それが結果として最後のジャンボである747-8I / -8Fとなるわけですが、またまた長くなってしまったので次回へ持ち越します

Huaweiはいよいよアップデートも厳しいか

ボーイング747-400の記事を書こうと思っていましたが、記事に使う写真をまだ探している最中なので、今回はスマートフォンの話題でも
いつものようにインターネットのニュースを読んで回っていると、こんなタイトルを発見しました

ファーウェイ過去スマホAndroidアップデート不可に?米政府ライセンスが期限切れ - engadget日本版

2019年5月にファーウェイはアメリカの禁輸企業リストである「エンティティリスト」に登録されました。これに登録されるとアメリカとの製品のやりとりはもちろん、アメリカの技術を用いた部品や製造技術そのものも取り入れることができなくなります

Google Mobile Service(GMSと呼ばれるGoogle マップGmailGoogle Play ストアなどのGoogle謹製アプリも対象で、Huawei P40シリーズからはこれらが使えなくなってしまいました。最初のうちは裏の手を使ってインストールできるなんて話もありましたが、まもなくそれも使えなくなり、Huaweiオリジナルのアプリストアに載っているアプリしかダウンロードできなくなってしまいました。

Androidを使っているのにGMSを使えないだなんて、正直言ってAndroid環境にいる意味が半分以上失われているようなものです。元から入っていないだけならまだしも、上述の通りインストールさえできないんですからね…

ただ当面の間アメリカ政府公認の抜け道は存在して、リスト入りする前に発売されたスマートフォンは引き続き製造もできるしGoogleのサービスもアップデートも受けられる、となっていました。
これはリストに関連して用意されたTGL(Temporary General License Rule=一時的一般許可証)」の中に期限付きで認められていたもの2019年5月のTGL発布から3回延長されていて、元からHuawei製の端末を持っていた人は何の問題もなく使えていました。

ところが今年5月のTGL延長「Expected Final 90-Day Extension(きっと最後の90日延長)」という但し書きつき。時限となる8月13日になっても次の延長は発表されていません。つまりHuaweiの製品はもう使っちゃダメ」と言われたも同然というわけです。
アメリカ政府としては「1年3ヶ月も猶予を持たせたんだから、企業も個人も何かしら代わりのものを見つけたでしょ?」ってことなのですけどね。

アプリを提供するGoogleは「TGLに基づいてサービスを行ってきた」と述べた以外は明確な反応を示していません。今すぐ切るとは言っていないものの、続けるとも言っていないわけです。

アップデートなどが入らないということは、新機能が載らないのはもちろん、セキュリティーホールなんかが見つかってもHuawei端末では対処されないということでもあります。
さらに可能性の話ですが、GmailGoogle マップの新機能が提供されても使えない。それどころか2019年5月以前に発売の端末でもGMSが使えなくなってしまうおそれもあります。しかもアメリカ国内の話ではなく、日本も含めた世界中で
一応ユーザーのツイートに返答する形でファーウェイは「セキュリティーのアップデートは継続する」と述べてはいるようですが…https://japan.cnet.com/amp/article/35158395/ 「ファーウェイ、古い「Andoroid」デバイスへのアップデートは継続へ」CNET Japan

ファーウェイにとどめを刺しにきた米国の追加規制。ユーザーのスマホはどうなる?影響は? - engadget日本版

もはやHuawei製の端末を持つメリットはなくなりつつあります。この頃海外侵略を進める中国に金を落とすのもよろしくないでしょうし。

すでにリスト入りしているZTE、ファーウェイのような通信インフラの技術を持つ中国メーカーに加えて、場合によってはOPPOやXiaomiなどの端末メーカーも制裁の対象となってくる可能性は充分にあり得ます。

GoogleからPixelシリーズの新製品が出ますし、SONYも日本国内向けのSIMフリーXperiaを発表し、中国メーカー以外のスマートフォンに乗り換える大きな理由は出てきました「まぁ大丈夫だろ」と使い続けてきたこのHuawei P20ともおさらばするときは近いようです。正直言ってP30 Proを買うようなマネをしなくて正解だったかもしれません。

2019年11月6日【羽田空港】

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110842 posted by (C)あさかぜみずほ

公休だというのにわざわざ職場の近くまでやって来て健康診断を受けていました。鉄道の現業は年に2回受診しなければいけないのでなかなか面倒です。

健康診断のためだけに都内へ出てきたのもアホらしいので、ついでに羽田空港へスポッティングへ行くことにします。が、羽田のターミナルは何やら断水中…?基準値超えの塩分が検出されたということで復旧には時間がかかりそうです。

送水系統が異なる国際線ターミナルは無事だそうですから、とりあえず腹ごしらえをしてそちらへ向かうことにします。大阪王将で期間限定メニュー「炎のラーメン」を注文しましたが、思っていた何倍も辛い…!チェーン店のメニューだからと舐めていました。

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_DSC9249 posted by (C)あさかぜみずほ

B-20D8 / Shanghai Airlines / Boeing 787-9 Dreamliner

ニュースの通り国際線は通常通りトイレが使えて何よりです。普段よりも人の数が多いような気はしなくもありませんが、わざわざ国内線から食事をしに来る暇な人はそんなにいないでしょうから気のせいかもしれません。

シンガポール以来の上海航空です。ようやく国内で同社のB787を撮影できました。

登録記号はアルファベットを交えた新タイプとなっていますが、遠くから見ると「2008」なのか「20D8」なのかほとんど見分けがつかず苦労します。

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「ジャンボ」のいた空を振り返る - 747クラシック編

2020年7月29日、アメリカのボーイング社はBoeing 747シリーズの生産終了を発表しました。「747」という数字を知らない人でも「ジャンボ機」と言えばわかる方も大勢いることでしょう。

「ジャンボジェット」ボーイング747、22年生産終了 - 日本経済新聞

「ジャンボジェット」ボーイング747型機が生産終了へ - 朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASN7Z2T11N7ZUHBI004.html

特に日航ジャンボ機墜落事故と呼ばれることの多い日本航空123便墜落事故の発生から8月12日で35年良くも悪くも人々の印象に残る「ジャンボ(機)」は空の輸送に大きな革命をもたらし、世界でも日本でも経済を支えた功労機です。B747を無くして飛行機の歴史を語ることはできません

それほどまでの「ジャンボ機」とは何だったのか、せっかくなので簡単に系譜を振り返ってみましょう


■ 開発計画

開発計画が持ち上がったのは1960年代のこと。当時はBoeing 707やDouglas DC-8など、せいぜい200席ぐらいまでの旅客機しかありませんでした。しかし航空需要は急速に延びており、便数を裁く空港も限界に来ているところがありました。加えて当時の飛行機のエンジン音は今よりもはるかに騒々しいものでしたから、空港を拡張して便数を増やすというのはすさまじい反発に発展しかねません。

そこでアメリカのパン・アメリカン航空は1970年代の大量輸送時代を見越して、ボーイングに400席クラスの巨大な飛行機を開発するよう働きかけます
いくら需要が伸びているとはいえ他の飛行機の倍以上の大きさですし、しかも超音速旅客機の開発もスタートしており、音速を超えない巨人機は早々に時代遅れとなってしまうかもしれません
しかしパンナムは25機をオーダー、話を聞きつけた日本航空も含めた他社もパンナムに遅れまいと発注をかけましたいよいよ開発計画がスタートします。

折しもボーイングは同じアメリカのロッキードと大型の軍用輸送機の受注を競った後で、設計が流用できるので受注失敗も補えます。元の設計があったおかげで、たったの2年ちょっとというスピードで就航までこぎ着けました

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<成田空港そばの航空科学博物館に展示されている747-200Bの機首部分。塗装は試験機のものを再現しており、発注者となった各航空会社のロゴマークが入る>


■ -100型(だっしゅ100がた)

最初期はナンバリングはありませんでしたが、発展型の登場でのちに-100型とつけられます。早速パンナムがニューヨーク~ロンドン間の大西洋横断路線へと投入します。日本航空も太平洋を横断する路線へ投入しますが、初期型は航続距離が足りず太平洋をひとっ飛びできないという欠点がありました。
1970年代初頭のオイルショックでいったんは危機的状況に陥るものの、やがて原油価格が落ち着くと運航する航空会社が増えていきますしかし想定していた航続距離が発揮できないのはなんとも都合が悪い…

全幅×全長×全高:59.6×70.7×19.3m
離陸重量:333,400kg
航続距離:8,856km
座席数:366席(3クラス)
初就航:1970年1月
製造機数:205機

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JALの747-100型の機内を再現した模型。2階客室はファーストクラス向けのラウンジとして使われたり寝台が置かれたりしていた>


■ -200B型(だっしゅ200びーがた)

-100型の各部を強化して、より多くの燃料とパワフルなエンジンを載せられるようにしたのが-200B型です。元々「747B型」として設計が始まったので、ナンバリングが行われてもBというアルファベットは残ったままです。いわゆるクラシックジャンボ」と呼ばれる中では標準的なモデルで、日本航空JAL)、全日空ANA)が導入して日本でもポピュラーな存在となりました。
2020年現在で使われているアメリカの大統領専用機VC-25もこの-200B型をベースに作られています。

-200B型から貨物型も設定され、Freighter(貨物)から取って-200F型と呼ばれます。特徴はなんと言っても機首にある「ノーズカーゴドア」コクピットの下からガバッと上に開くようになっていて、側面の貨物ドアからは積めない長い貨物を積むことができますコクピットが2階部分にある747ならではの機能で、元々の輸送機の設計が生かされています。

なおコクピットがある分、高さ方向は側面のドアの方が余裕があります。そのためノーズカーゴドアを使う頻度は高くなく、めったに見られるものではありません。-200F型は日本では日本貨物航空(NCA)が導入しました。

全幅×全長×全高:59.6×70.7×19.3m
離陸重量:374,850kg
航続距離:10,408km
座席数:366席(3クラス)
初就航:1971年6月
製造機数:393機

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アメリカの大統領専用機「VC-25」。エンジンなどは異なるがベースは747-200B>


■ -SP型(えすぴーがた)

-100型が当初の想定通りの性能を実現できず-200B型も航続距離を伸ばしたとはいえアメリ東海岸のニューヨークから日本の東京へはノンストップで太平洋を渡ることができません。太平洋を横断する便はアラスカのアンカレッジを経由して燃料を補給していました。
他社との競争で優位に立ちたいパンナムがさらなる長距離モデルを要求し、実現したのが "Special Performance" を冠したSP型です。

全長を-100に比べて14mも縮め、航続距離を12,000km以上に伸ばしました。これによりニューヨーク~東京間のノンストップフライトを可能にするスペックを手に入れました。一方機体を短くしたせいで300人未満しか乗せることができず、コストパフォーマンスはいまひとつなものに…

採用する航空会社は少なく失敗作のように見られがちですが、アッパーデッキ(2階客室)を主翼にかかる位置まで伸ばすと空力性能が良くなり、航続距離を伸ばせることを発見した、実はとても意味のあったモデルです。

全幅×全長×全高:59.6×56.3×19.9m
離陸重量:312,600kg
航続距離:12,325km
座席数:276席(3クラス)
初就航:1976年4月
製造機数:45機

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<他のモデルと比べると明らかにずんぐりとしたSP型。2020年現在において世界で飛べる状態にあるのはおそらく数機。写真はサウジアラビア王室の元国王専用機>


■ -300型(だっしゅ300がた)

747SPでアッパーデッキを伸ばすと空力性能を向上させられることが発見できました。これをうけ、アッパーデッキを従来のモデルより約7m伸ばしたのが-300型です。空気抵抗が減少したことで巡航速度の向上と航続距離の延長が実現できました。
アッパーデッキが長くなったことで座席数を10%も増やすことができるようになり、3クラスでの標準座席数は412席まで増えました。日本航空が導入した国内線用の機材では2クラス483席、さらには全てエコノミークラスで584席という絶大な輸送能力を見せつけます。

旅客型モデルとしてはほぼ完成形になった-300型ですが、まもなく後継の-400型の開発がスタートしたことで短期間の製造に終わります。しかし-400型の機体はほぼ-300を踏襲したものですから、この後に続く「ジャンボ」空前のヒット作は-300なしには生まれなかったともいえます。

全幅×全長×全高:59.6×70.7×19.9m
離陸重量:374,850kg
航続距離:10,463km
座席数:412席(3クラス)
初就航:1983年3月
製造機数:81機



-300型までを「クラシックジャンボ」と呼んで-400型以降と区別しています。クラシックジャンボは空の大量輸送を実現し、飛行機での旅行やビジネスをより身近に、便利に、安価にして革命をもたらしました

当初ボーイングは「人は超音速機で移動するようになるから、747は貨物機に簡単に転用できるようにしよう」と考えていましたが、結局自社での開発も含めて超音速機は普及せず、延びていく航空需要に合わせてジャンボがなくてはならない存在へとなっていきます。
また「ジャンボ」という世間の愛称を「鈍重なイメージを与える」として「Super Jet スーパージェット」なんて呼び方を広めようとした時期もあります。そのイメージ戦略はさっぱりうまくいきませんでしたが、747の普及や人気の高まりを受けてボーイング自身が「ジャンボ」という愛称を使うようになりました。

そして内外ともに大きく進化したテクノジャンボ」こと747-400型が生まれてくることになりますが、長くなってしまったので次回以降としましょう。

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<機首部分「セクション41」を見上げる。国内でジャンボの実機を展示しているのは航空科学博物館だけ。機内は有料で見学可能>


参考文献:
阿施光南「ジャンボジェットの半世紀」「ボーイング747全モデル解説」イカロス出版『月刊エアライン 2019年4月号』pp.48-67, 2019.
青木謙知『旅客機年鑑 2020-2021』イカロス出版, 2020.
青木謙知「旅客機の歴史と進化」イカロス出版『月刊エアライン 2020年7月号』pp.50-54, 2020.
一般財団法人 日本航空機開発協会「主要民間輸送機の受注・納入状況(2020年6月末現在) Embraer2020 Q2発表分を追加版」 http://www.jadc.jp/files/topics/90_ext_01_0.pdf (2020年8月14日16:30閲覧)

2019年10月30日【成田空港】

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_DSC7893 posted by (C)あさかぜみずほ

JA216A / All Nippon Airways / Airbus A320-200N

冬に片足を突っ込んだシーズンになりましたが、太陽が出ている日は温かいですね。絶好の撮影日和です。

細い機体に対して太くてたくましいエンジンはA320neoの大きな特徴です。B737MAXのように苦心せずとも大きな直径のエンジンを載せられたのはA320シリーズが開発当初から持つポテンシャルの高さ。

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_DSC7920 posted by (C)あさかぜみずほ

D-AALM / AeroLogic / Boeing 777F

DHLのフルカラーとなっているB777Fはドイツのアエロ・ロジックです。普段見ている地味なカラーリングと対照的に、機体のほぼ全域が真っ黄色なのでかなり存在感があります。

ドイツのライプツィヒから週3便で成田にやって来ます。折り返し便は香港経由。

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イースター航空消滅まで秒読み

日本と比較して国土面積は約1/3、人口は約半分の国家でありながらLCCが林立する韓国。以前から「よくビジネスとして成り立っているもんだ…」と感心していたのですが、いよいよLCCの再編を考えなければいけない局面に来ているようです。

韓国には大手フルサービスキャリアの大韓航空アシアナ航空に加え、6社のLCCが運航しています。
※()内は拠点空港。ソウルのみ記載の場合は仁川・金浦の両空港が拠点

・エア・プサン Air Busan (釜山/金海)
・エア・ソウル Air Seoul (ソウル/仁川)
イースター航空 Easter Jet (ソウル)
・チェジュ航空 Jeju Air (ソウル/仁川)
・ジンエアー Jin Air (ソウル/仁川)
ティーウェイ航空 T'way Airlines (ソウル)

さらに2020年からのニューカマーとして、

・エアロ・ケイ Aero-K (清州)
・エア・プレミア Air Premier (ソウル/仁川)
・フライ・カンウォン Fly Gangwon (襄陽)

の3社が加わり、全部で9社となります。
…うーん、部外者ながら心配になってしまいます。人口1億人超の日本でさえ4社でなんとかやっているというのに、5200万人の韓国では倍の数になろうというのです。既存の6社は日本路線への依存度もかなり高めで、国際線の3〜5割は日本を発着する路線。充実した路線網のおかげで日韓間の航空シェアはFSC2社を含めると8割を韓国系エアラインが占めています。2019年前半まで、LCC各社は日本路線の新規解説と増便で絶好調でした

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<2020年3月末からはソウル~成田~ハワイ便に虎の子B747-8Iを入れる…はずだった大韓航空

ところが、ご存知の通りホワイト国除外だとか輸出管理の厳格化だとか、日本側の裁量で決める貿易のやり方に韓国は逆ギレし猛反発
さらには戦時中に強制労働を行わせたとしてまともな法治国家ではご法度である遡及処罰に及ぶなど、キチガイっぷりのアピールに余念がありません

一連の流れで元から大して良くなかった国民の対日感情が猛烈に悪化。過去にない規模での不買運動へとつながり、純粋な日本製品はもちろんのこと、原材料に日本由来のものが入っているだけで排除という徹底ぶりを見せています。もちろん「日本への旅行ももってのほか」という風潮になり、韓国からの訪日客は前年比-65%(2019年10月)となるなどNO JAPAN運動は著しい「成果」を上げました

日本訪れる韓国人旅行者数、65%減 4カ月連続の減少 - 朝日新聞デジタル

実際のところそこまで多数の韓国人が日本を忌み嫌っているわけではないでしょうが、こと反日に関しては国内の強い同調圧力があることは想像に難くありません。なにせ知日派というだけで罰金を取られたり埋葬を断られたり、日本企業だからといって財産を召し上げられてしまうのですから、流れに乗っておかねば数十年先に何をされるかわかりません
日本からの渡航者は10%台の減少にとどまっているという話もありますが、それにしたって減ったことには変わりありません。

日本からも韓国からも渡航者が減る。
結果として大きなダメージを受けたのは韓国の航空会社でした。先程も述べたように、日韓間の航空需要の8割は韓国系です。元から日本の航空会社の多くは価格競争に負けて韓国路線から撤退していますから、ダメージはそこまで大きくありませんでした。

「ノージャパン」の影響で韓国の航空会社は息絶える寸前? - レコードチャイナ
https://www.recordchina.co.jp/b818409-s0-c30-d0127.html

特に大きな影響を受けたのはLCC各社です。稼ぎ頭である日本路線が軒並み不振となり、減便や運休を余儀なくされました。落ちた収益を補うための主に中国への路線展開もうまく行かず…
結果、真っ先に音を上げたのが今回取り上げるイースター航空でした。

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<業界第5位のイースター航空。2009年に運航を開始>

主にキャビンアテンダントパイロットに無給の休みを取らせるなどなりふり構わぬ費用圧縮に走り、最終的には韓国のLCCでは最大手となるチェジュ航空に身売りすることとなります。
おおよそ合意に至っていたところに今度はコロナウイルス騒ぎが降りかかり、チェジュ航空も買収どころではなくなってきます。それでも当初より13億円ほど安い約49億円での買収がほぼ決まりかけており、関係者はホッとしたことでしょう。

チェジュ航空、イースター航空買収で契約締結 約49.1億円 - TRAICY

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イースターに手を差し伸べたはずだったチェジュ航空。ここまでこじれるとは…>

…といったのも束の間従業員への未払い賃金を巡ってイースター側とチェジュ側が対立。両者ともに「賃金を支払う義務は相手側にある」と譲りません。
実はイースター航空はタイに「タイ・イースター航空」なる子会社を2018年に設立し、今年の運航開始に向けて飛行機のリース契約を結んでいました。これもまた両者の争いの新たな火種となり、ついに先日7月23日、チェジュ航空はイースター航空の売却を撤回すると発表します。
最後の頼りの綱である政府ははっきりしない姿勢を貫いており、加えて現在のイースター航空のトップはムン・ジェイン大統領の側近タイ・イースター航空にはムン・ジェインの娘婿が就職、とかの国ではおなじみの政治スキャンダルへと発展しそうな雰囲気です。

韓国・文政権は“スキャンダルまみれ”! イースター航空と大統領「娘夫婦」の関係は… - zakzak
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200715/for2007150007-n1.html

チェジュ航空、イースター航空に対し問題解決ができなければ契約解消と通告 イースター航空は破産の可能性も - sky-budget

チェジュ航空、イースター航空の買収契約を破棄 - TRAICY
https://www.traicy.com/posts/20200725176763/

再建のアテがなくなったイースター航空はこのまま会社を清算するという見方が強くなっており、1,600人の社員が路頭に迷うことになります。経営不振のせいで4割しか給料が支給されず(しかも3月以降は無給)さらにそのまま会社ごと消えてクビになるだなんて、あまりにひどい仕打ちです。

イースターの場合は最後のひと押しがコロナだったとはいえ元はと言えば反日運動が原因でした。一連のNO JAPAN運動において一体誰が得をしたのか甚だ疑問でなりません
生活を不便にし、収入を犠牲にし、楽しみを我慢して、何か得られるものはあったのでしょうか。

一時の憎しみの感情で刹那的な行動に走ると、後で取り返しのつかない結果に行きつく。

そんな教訓を身をもって示してくれたのですから、我々はその教訓をよく噛み締め、自分たちが同じことを繰り返さないように生かしていかねばなりません

そしてこれが韓国のLCC再編への引き金となるのか、今後の流れが注目されますね。

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アシアナ航空も売却交渉の真っ最中。COVID-19の影響でこれも先行きが不透明に…>

2019年10月20日【羽田空港】

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_DSC7640 posted by (C)あさかぜみずほ

9K-GBB / State of Kuwait / Airbus A340-500

即位礼正殿の儀を控え、明日21日は各国からのお偉方が羽田に集結する…はずなのですが、あろうことか仕事なので撮影に向かうことができません。労働への破壊衝動が高まります。

あわよくば2日前の今日でもある程度は珍しい飛行機が来るはず、と気を取り直して羽田までやって来ました。

今のところVIPスポットに駐機しているのはクウェート政府専用機。レアなA340-500を使用しています。

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_DSC7665 posted by (C)あさかぜみずほ

JA131A / All Nippon Airways / Airbus A321-200N

しばらく動く気配はなさそうなので、とりあえずいつもの第2ターミナル展望デッキへ。屋外は割と人がいっぱいなのに、屋内のホールはそれほどでもありません。

天気はいまひとつですし、もし雨が降ってきても濡れることはないのでとりあえず館内で撮影しましょう。

飛び立つANAのA321neoの後ろには大島から到着したジェットフォイルの姿が見えます。来年の夏には東海汽船へおよそ25年ぶりに新造されたジェットフォイルが納入される予定です。

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