石造りの立派な建物が見えてきました。
現在の大湊地方隊の前身、大湊警備府のさらに初期にあたる大湊要港部時代に、士官の官舎として1915(大正4)年に建設されたものです。石造りになっているのは防寒の役目もあり、このあたりの冬の厳しさをよく表しています。
終戦後は近くにある大湊高校の学生寮として使われていたとのこと。
写真は壱番館で、道路の反対側にある弐番館は地域の交流センターとして使われているそうです。
斜面の上には立派な建物がそびえています。「北の防人大湊 安渡(あんど)館」で、帝国海軍大湊要港部の庁舎をイメージして2015年に建てられました。
中には観光案内コーナーのようなものもあり、海自やゆるキャラのグッズを販売しています。案内看板にはレストランの標記もあったので期待して入ってみたのですが、なんとレストランは2021年1月で閉店になっていました。
うーん、これはお昼ご飯を食べられない流れではないか…?
すぐ裏手には「海望館」なる展望台がありました。上まで行って大湊の基地を見渡してみましょう。
奥に見える横に長い地面は芦崎(あしざき)という長い砂嘴(さし)。砂嘴とは周辺の川から流れ込んだ砂が海流に流されて1カ所に集まり、長い砂の吹きだまりのようになったものです。植物のアシのようにどんどん砂嘴が伸びていったことから「芦崎」という名前になったとか。
この砂嘴のおかげで内側は天然の港となり、帝国海軍がこの大湊に基地を置いたとされています。現在も砂嘴の部分まで含めて海上自衛隊が管理しており、年に1日ある潮干狩りの日を除けば一般人が立ち入ることは一切できません。
壁には大湊地方隊に所属する艦艇などの写真と名前が掲出されています。大きな船はほとんど出払っており、左側に見える1隻ぐらいしかいないようです。
あとで近くまで行ってみたいと思います。
交通量も少なく、他に人の姿もほとんど見当たらない「北の防人館」。雪の多い真冬ですし、爆弾低気圧が近づいているともなれば観光客が来る理由もないですよね…
防人館を降りてくると、海上自衛隊大湊地方隊が運営している資料館「北洋館」があります。建物自体もとても歴史のあるもので、1916(大正5)年に海軍士官の社交場として建てられたもの。建材は基地の背後にそびえる釜臥山(かまふせやま)から切り出された安山岩が使われています。
先ほどの壱番館・弐番館と非常に似た建物なので、あちらも同じ釜臥山の安山岩が使われているのでしょうか。
海軍から自衛隊にかけての歴史を学べるものと思って喜び勇んで近寄ってみたものの、新型コロナウイルスの影響なのか閉館されたままでした…残念。
※2023年6月から土・日・祝日のみ開館、平日は団体見学のみで要事前予約とのこと。
宇田児童公園というところに来てみました。基地の東門のすぐ目の前にある公園で、桟橋に停泊する艦艇を間近で見ることができる場所としてむつ市のウェブサイトでも紹介されています。
この日停泊していたのはむらさめ型護衛艦の3番艦「ゆうだち」。神奈川県横須賀市にある住友重機械工業で建造され、1999年に就役しました。当初は長崎県の佐世保基地に配備されましたが、2013年からここ大湊を本拠地として活動しています。
「ゆうだち」の艦名は海上自衛隊に入ってから2代目、帝国海軍の「夕立」も含めると4代目となる歴史ある名前です。
2代目「夕立」は艦船をモチーフにしたソーシャルゲーム『艦隊これくしょん』や『アズールレーン』でも有名ですね。
14時半の列車までまだ1時間以上の余裕があります。バスであっさり戻ったところで特にやることもないので、運動がてら大湊駅まで歩いて戻ることにしましょう。
とは簡単に言うものの小さな雪の粒が結構な勢いで降っていて、払っても払ってもあっという間に全身が真っ白になってしまいます。やはり早い段階で通りに戻ってバスに乗るべきだったか…
湾にはオオハクチョウがたくさんたむろしていました。人間にとっては寒くても、シベリアやオホーツク海で繁殖するようなハクチョウには青森は温かい場所のようで、秋の終わり頃から東日本の各地で越冬します。
昔ながらの雰囲気が漂う渋い理容室です。
あさかぜも幼少期には祖父にこんな雰囲気の床屋に連れて行ってもらっていました。
少し手前には同じ家系の方が経営しているのか、「食堂しなだ」というお店もありました。Googleの評判を見てみるとかなり評判が高くて気になっていたのですが、「営業中」の札こそ出ていたものののれんは窓の内側。
のれんが出ていないということはやっていないのでは…?
勇気が出なかったあさかぜはそのまま通り過ぎてきてしまいました。誰も入っていなさそうでしたし、果たしてやっていたのか、やっていなかったのか…
1時間半近く歩いて駅前の通りまで戻って来ました。これぐらいの距離を歩くのは慣れていたつもりでしたが、雪道ではわけが違うのでずいぶん体力を消費した感じがします。
結局お昼ご飯にはありつけておらず、ちょうどすぐ先に「ベーカリー」の看板を見つけたので近寄ってみると…
「1月24日(火) 休ませて頂きます」という無情の張り紙!何もピンポイントで今日じゃなくても…と悲嘆に暮れますが、タイミングというものは合わないときはとことん合いません。これもまた旅の宿命です。
近くのローソンでお酒とつまみになるものを買って、大湊駅まで戻ってきました。大湊地方隊の入口から大湊駅まで、いろいろ寄り道をしながら2時間弱、6.7kmも歩いてきたことになります。
普運動不足気味の体にはずいぶん良い刺激となりました。
なお、立ち寄った「ローソン むつ大湊新町店」のすぐ裏には「オタクバー・ギルド」なるバーがあることをあとになって発見しました。いったいどんなバーなのか、外観だけでも見てくれば良かったです。
野辺地ゆきの列車が出るまでまだ40分ぐらいあるし、待合室の隅で買ってきた軽食を食べるか…
とのんきに考えながら待合室に入ってみると、列車の時間を大きく勘違いしていたことに今さら気がつきました。ずっと14:37に発車するものと思い込んでいましたが、実際の発車時刻は14:13。
危ない危ない、仮に資料館が開いていたら間違いなく列車を乗り過ごしていたところです。
14:02に野辺地からの列車が到着、折り返しの準備を終えてすぐに改札が始まりました。キハ100系2両編成の列車に乗り込んだのは7~8人といったところです。
先ほどまで後部車両として走ってきた先頭部は、自分で巻き上げた雪で真っ白。窓の部分だけは熱線が入っていて、凍り付かないようになっています。
キハ100系のヘッドライトは白熱球を使った従来通りのシールドビームなので、雪が付着しても電球の熱で溶けていきます。
ところが最近の車両ではLEDが主流となり、発光部そのものからは熱を発さなくなりました。熱にならないということは効率良く光ることに違いないのですが、雪が付着すると溶けないという逆の悩みを生むことにもなりました。
これは鉄道車両に限った話ではなく、クルマのヘッドライトや街中の信号機でも同じような問題が発生しており、様々な対策が考えられているようです。
ローソンの焼き鳥(とり皮)をつまみに、アサヒの「ハイリキ・レモン」を傾けます。酒飲みの立場からすると、移動しながらお酒を飲んで景色を眺められる鉄道旅行は楽しくて仕方ありません。
自分でハンドルを握ったらお酒は飲めませんからね…
再び荒々しく波が打ち寄せる陸奥湾を眺めながら大湊線を南下します。遠くの方の雲がずいぶん濃い灰色をしていますが、あれが野辺地の方まで迫ってくるのでしょうか。
明日の弘前市や秋田市はかなり予報が悪化しています。楽観的に考えていましたが、さすがにプランを練り直す必要はありそう。
まぁ明日の朝考えればいいか、と危機感のなさは相変わらずですが。
およそ1時間、野辺地に戻って来ました。途中駅でパラパラ乗車はありましたが、1ボックスあたり1~2人程度という乗車率でかなり空いていました。
ほとんどの乗客はここから青い森鉄道線に乗り換えるようで、あさかぜのように野辺地駅の改札を出た人は数えるほど。
十和田観光電鉄の路線バスでまたホテルまで戻って来ました。
同社の一部路線ではICカード乗車券が利用可能。まかど温泉までの路線も交通系ICカード対応となっており、手持ちのSuicaで支払いが済むのはとても便利です。
この頃運賃表と財布の小銭とをにらめっこする、なんてことがずいぶん減った気がします。日本人としても手間がなくなるのはもちろんのこと、現金を数えるのは訪日外国人からすれば大きな負担ですから。
海外に行ってお金をいくら払えば良いのかわからない、という経験を自分自身でしてみると、ICカードのわかりやすさが身に染みて感じられます。
お風呂に入ってから夕食へ。昨晩と同じくバイキングスタイルですが、チェックイン時にもらったクーポンがまだ余っています。せっかくなので、オプションの馬刺し(1,800円)も一緒にオーダーしてお酒を楽しむことに。
2021年の統計によると、青森県の馬肉の生産量は日本第4位。1位の熊本とは4倍近くの違いはあるものの一大生産地であることがわかります。今晩出されている馬刺しも青森県産なので、ちゃんとご当地ものを食べることができました。
ハイボールは何と食べても合いますが、今日こそ日本酒をオーダーすべきだったのでは?と馬刺を食べ始めてから気がつきましたが…
食事とお酒の締めにせんべい汁を飲んでおしまい。中に入っている大きな塊は、北東北の伝統食品「南部せんべい」です。
戦前は普通の南部せんべいを鍋に入れて食べていたそうですが、戦後になってから鍋用に煮崩れしないせんべいが開発されました。家庭の味ではあっても観光客向けではなかった「せんべい汁」が、名前とともに一般向けに定着したのは八戸市がPRするようになった平成以降だそうです。
鶏から取った醤油味のつゆに野菜の味が染み出して、優しい味がします。
時間が経つにつれてどんどん風が強くなってきます。トイレに入ると外の風の音がビュービューと聞こえてくるほどです。
就寝前にもう一度お風呂に入りに行くと、露天風呂はさらに過酷な環境になっていました。
風に顔を向けると雪が冷たくて息ができない!立ち上がろうものなら体中に雪のつぶてが吹き付けてきて、冷たいわ痛いわでお湯から出ることもできません。
このまま行くと明日はどうなることやら…?