※本文中の移動距離は「Googleタイムライン」機能を基にしています。実際の距離や営業キロとは誤差があります。
宮崎では乗り換え時間が5分しかないので、慌ただしく隣のホームへ移動して鹿児島中央ゆきの特急「きりしま11号」へと乗り継ぎます。
本来の乗換駅は1つ手前の南宮崎ですが、せっかくフリーパスを持っていることですし、始発駅の宮崎まで戻って来ました。
駅の放送によると14:07発の宮崎空港ゆきが20分、後続の特急「ひゅうが11号」も15分程度遅れているとか。「きりしま」も接続を受けて遅れるのかと思いきや、とりあえず宮崎は定刻通りに発車。
■ のりもの14:JR九州・787系(宮崎→鹿児島中央:114km)
すぐ次の南宮崎で普通列車と「ひゅうが」の接続を取り、「きりしま11号」は南宮崎を15分遅れで発車しました。駅を出てすぐ左に分岐していくのが志布志へ向かう日南線。次の田吉で宮崎空港線がさらに分岐して宮崎空港へと通じています。
車庫の隅に止まっているのは土日祝日を中心に運転する観光特急「海幸山幸(うみさちやまさち)」の車両です。災害で廃止された高千穂鉄道から買い上げたものですが、車内は面影など全くない新車のような姿に改造されています。
客室が割とシックな装いでまとめられている一方、デッキの色使いはなかなか鮮烈です。ドアが赤なのは警告の意味もあるのでしょうか。
885系「白いかもめ」「白いソニック」あたりからJR九州の、というより水戸岡鋭治氏のデザインは木や革を強く意識したものになっていますが、個人的には787系や883系あたりのあっと驚かせるような色使いや意匠も好きです。
外観のオーラに感心し、デッキに入って驚き、客室に座って落ち着き、音を聞いて高まる。787系は何をしても好きな車両ですが、なかなか乗りに行く機会に恵まれないのが残念です。
特に急ぐ様子もなくのんびりと列車は走っていきます。線形の悪さや行き違いの都合から遅れを回復させるのは難しいのでしょうが…
南宮崎から1時間半以上経った加治木付近でようやく検札がありました。JR九州では2018年から合理化のために特急列車でもワンマン化が行われ、この「きりしま」もワンマン特急となっています。検札はアテンダントに任せているようですが、「特急料金を支払わなければ乗れない列車が、終点の手前20分ぐらいになってやっとチェックする」というのはいくらなんでも甘過ぎやしませんかね…
上場企業として経費削減が急務とはいえ、正規の運賃や料金が正しく徴収されないような状況を作ってそれを放っておくのは運営上問題ですし、ちゃんと支払っている乗客としても不公平感があります。そもそも経費削減で取るべきお金が取れないのなら本末転倒なのでは。観光特急だけが金づるになっていればいいってこと?
ここ数年のJR九州のやり口にはだいぶ疑問を抱きます。
車窓に大きく桜島が見えてくると鹿児島市街地が近いことを感じさせます。加治木を出た時点で遅れは拡大して17分。特に急ぎではないので別に構いませんが…
鹿児島市から大隅半島へは桜島の南側を抜ける国道224号線がメインルートとなります。鹿児島市が運営する「桜島フェリー」はその国道のルート上にあり、日中は毎時3~4本、深夜帯は1時間ヘッドで24時間運航が行われている重要な航路です。運航距離も間隔も短いため、前後両方に操縦室があって転回することなく入港することができるような構造になっています。
桜島フェリーとその船内で提供される「やぶ金うどん」については以前の旅行記で触れているので、よろしければご覧ください。
結局終点の鹿児島中央に着いたのは18分遅れの16:43でした。
奥に停車しているのは数を減らした415系。鹿児島周辺ではラッシュ時間帯を中心に運用されているようです。
残り少なくなったとはいえ、下関までの関門海峡を越える列車がある限りは引退させられない車両でもあります。交直両用の電車は製造費用がかかりますから、特急列車でさえワンマン化してしまうほど節約したいJR九州からしてみれば可能な限り更新を先延ばしにしたい存在でしょう。
「521系の交流60Hz対応版ではダメなのかな」なんて思ったりもしますが、他の車両との共通性が失われたりして面倒なのかもしれません。
駅から歩いて数分のところに温泉があるのでのんびりつかろうかと思っていましたが、そこまで時間の余裕があるわけでもなくなってしまいました。むしろ外が暑くて、歩いて温泉へ行くことにいまひとつ気乗りがしないことの方が理由としては大きい…
予定を早めて17:32発の「つばめ328号」に乗車変更してきました。早めに博多に戻っておけば21時まで営業しているラーメン屋にありつけるかもしれませんから。
お土産がてら友人の家で飲むための焼酎を買って、ホームへと上がってきました。
新幹線の終点駅はある程度延伸が予定された構造になっているか、車庫への線路が先につながっているかで、プッツリと線路が途切れている光景というのは珍しいものです。ところが鹿児島中央はご覧の通り線路が途切れて建物で塞がれています。ここは計画上でも新幹線の終点駅となっているので、ここから先へ線路がつながる予定は一切ありません。
九州新幹線長崎ルートの終着駅になる長崎でも同じようにプッツリ終わるそうですね。あちらはホームから海が見えるのだとか。
800系新幹線で博多へ戻ります。ちなみにこの車両は2011年に新八代から博多まで全線がつながったときに追加投入された、「新800系」とも呼ばれることのあるマイナーチェンジ車両です。追加分の車両はヘッドライトの形状がもっと丸みを帯びた形になって、2004年に導入された初期の車両より少し印象が変わりました。
隣に停車するN700系に比べるとスピード感を感じさせない形ですが、800系は九州新幹線専用で山陽新幹線には直通しないので、最高速度は時速260km。一方N700系は山陽新幹線に直通して時速300kmで運転しますから、イメージが違うのも当然です。
開業当初は「つばめ」とひらがなでロゴマークが入っていた800系は、2011年3月に全線開業すると一部の「さくら」でも走ることになりました。停車駅も違うのに「つばめ」と書いた車両が「さくら」に入るのはまずいでしょ、ということで他の在来線車両と同様の「AROUND THE KYUSHU」デザインへと置き換わったとのこと。
先ほども触れたとおりこの編成は全線開業時に導入されているので、最初からこのロゴマークでした。
昨日500系に乗ったときに触れたパンタグラフの構造。JR東日本のE2系1000番代では台座と碍子の構造を改良することで騒音を低減し、大型のパンタカバーを装備しなくて済むようになりました。800系でもその構造を受け継いだので、屋根の上にちょこんとパンタグラフが載っかっているだけのように見えます。
改良が進んだ現在では両脇に遮音板はあるものの、シングルアーム式パンタグラフの応用版で時速320km運転まで可能になりました。
御託はこれぐらいにして車内に入ってみましょう。
客室に踏み入れた瞬間の感想は、もはや「すごい…!」の一言。良くも悪くも質素な787系とは真逆のきらびやかな雰囲気です。ちなみにシートに使っている布地は京都の伝統工芸である西陣織を使うというこだわりようです。
デッキとの仕切りは本物の木材が使われているのだとか。さすがに木そのままでは鉄道車両に求められる難燃性が確保できないので、クスノキを薄くスライスしたものを金属板に貼っているそうですが、それでも木ですからすごい。
座席の背面や肘掛けは難燃合板が使われていますが、それさえも九州産の木材を使っているという徹底ぶりです。
そしてこれから1時間半にわたって見ることになる博多寄りの仕切りは金色。日本の伝統工芸として石川県金沢市の企業が手がけているのだそうです。
また額に入った蒔絵は鹿児島県南九州市の職人の方が手がけている様子。新幹線の技術をはじめ、様々なところで「日本」を発信していくところはさすがJR九州です。
■ のりもの15:JR九州・800系(鹿児島中央→博多:255km)
鹿児島中央を発車して20分もするとだいぶ日が傾いてきました。「秋の日はつるべ落とし」のことわざの通り、景色はあっという間にオレンジ色から群青色へと移り変わっていきます。
移ろいゆく景色を眺めながら「隼天 はやて」というハイボールを傾けます。2020年11月に発売されたずいぶん新しい商品だそうですね。
後で調べたらマズいとかいう評判も目につきましたが、香りがさほど強くないのでむしろウイスキーになじみのない人でも飲みやすいのではないでしょうか。ファミリーマート限定なのであまり飲む機会はなさそうですが…
熊本に近づくと有明海を挟んで対岸にある雲仙普賢岳の姿が浮かび上がってきました。火砕流に巻き込まれて43人の命が失われた1991年の噴火は教科書に載るほど有名です。
「撮れ高」を求めたマスコミの取材に警告を発したり、建物などを無断に使用されないよう警戒して回っていた地元住民も数多く巻き込まれたといいます。その教訓は30年経った今でも生かされていないようですから、マスコミというのは反省も成長もない業界なんだなと思います。挙げ句の果てには平然とデマゴーグと化して一般市民を混乱に陥れるのですから、普通の人間の精神状態ならこんな所行はできません。
博多駅に戻ってきました。このままホテルに戻ってもいいのですが、わずかな乗り換え時間で博多南線に乗ってこられるので急ぎ足で改札口へ向かいます。
■ のりもの16:JR西日本・700系(博多→博多南:8km)
博多から博多南へ伸びる「博多南線」。博多駅の南側約9kmの位置に博多総合車両所という新幹線の車両基地があり、元々はただ車庫の出入りに使われるだけの線路でした。
基地周辺の宅地開発が進み、地元住民から出入りの車両を使って博多まで乗せて欲しいという要望が寄せられるようになります。1990年に博多南駅が設置され、バスで1時間かかっていた博多までの所要時間がたったの10分にまで短縮しました。
博多南駅周辺はこの路線の「開業」によってさらに宅地化が進んだと言います。
博多南駅は5分で折り返します。想像していた以上に乗客が多く、1カ所しかない改札口を抜けるのに3分近く時間を要してしまいました。博多寄りに出入り口があるため、博多発は後ろ側に乗ると近くなります。あさかぜは空いていたので前寄りに乗ってしまいましたが、やはり熟知している人たちは後ろ寄りに集中していたようです。
大急ぎできっぷを買い直し、再びホームへと戻ります。
乗ってきた車両でそのまま博多へと戻ります。「レールスター」の愛称がついている700系7000番代で、今日が初めての乗車。
デビュー時は列車名にも「ひかりレールスター」という愛称がついていましたが、九州新幹線に直通する「さくら」ができてから「ひかり」もろとも運行本数が減ってしまい、現在はほとんどが「こだま」として運用されています。元々の「ひかり」で運行される定期列車はたった3本だけ(2021年3月改正)なのだとか。
■ のりもの17:JR西日本・700系(博多南→博多:8km)
座席は回さず後ろ向きのまま博多南を発車します。
駅のすぐ隣は先ほども触れたJR西日本の博多総合車両所が広がっています。山陽新幹線で運用されている16両編成のN700系シリーズの鼻先がずらりと並び、奥には九州新幹線の直通列車に使うN700系7000番代の姿も見えます。
なんとなく察せられると思いますが博多南線はJR西日本が運営しています。旅客化が決まった当時は「九州島内の運営はJR九州が行う」という原則があったために一悶着あったそうですが、そうしたところがお役所っぽいというか…実際に博多南駅の管理は2010年までJR九州が受託していたそうです。
利用者側としては運営管理なんて二の次でいいから早く乗せてくれ、って感じですが。
扱いは在来線ですが「新幹線車両に特急料金タダで乗せるわけにはいかん」ということで、博多~博多南間は運賃の200円に加えて特急料金の100円がかかります。またきっぷに書かれている通り、JR九州の路線ではないので手持ちの「ぐるっと九州きっぷ」を使うこともできません。博多駅でわざわざ改札を出たのも博多南線のきっぷを買いに行っていたからです。
なお現在は九州新幹線が博多まで通じたために博多駅から分岐点まではJR九州の持ち分となり、博多南線の営業キロ8.5kmのうち本当のJR西日本単独の線路は0.3kmしかありません。
10分で博多駅に戻ってきました。博多南発着の列車は多くが山陽新幹線に直通する「こだま」となりますが、この列車のように博多南線内での折り返し運用もあります。通勤通学需要が直通列車だけでは賄えないからでしょう。
なお博多南ゆきの最終列車は23:38とかなり遅い時間ですが、逆に博多へ向かう列車は22:10が最終と早め。このあたりからも通勤通学の利用がメインであることがよくわかります。
21時までに戻ってくればラーメン屋の1つぐらいは開いているだろう、と思ってホテルに荷物を放り込んで出てきましたが、どうやらラーメン屋は20時でおしまいのご様子…
街中を歩いてものれんの出ているお店がどこにもありません。
一応ラーメンっぽいものが食べられそうな長浜百味ラーメンなるお店が開いていました。昨日と同じく牛丼では芸がないのでここに入ってみましょうか。
「長浜」「ラーメン」という文字がありましたが、別にとんこつラーメンを出すわけではなく中華料理店でした。店内の奥の方にあるテーブルで騒がしくご飯を食べているのも中国人の大家族です。
店員のお兄さんによれば「餃子ト炒飯トカ、ゴ飯モウアリマセン。ラーメンナラオッケー」とのことなので、看板メニューらしき牛肉麺をいただくことにします。辛さは細かく選べ、明日の予定もあるので下から2番目の中辛にしてみましたが、思ったほど辛くありません。もう少し辛いのでよかったかも。
想定とは違いましたが、思いがけず新しい食べ物に出会えたのでよしとしましょう。メニュー表には780円って書いてあったのに請求額が860円だったのも、まぁしょうがないか。
今日の移動距離:785km(鉄道785km)
ここまでの総移動距離:2,292km