※本文中の移動距離は「Googleタイムライン」機能を基にしています。実際の距離や営業キロとは誤差があります。
Googleマップの案内では由布院駅から徒歩15分ぐらいと書かれていましたが、少し早足で行けば7分ほどで到着します。マップのピンが駐車場側に打たれており、建物の入口はそれより手前にあるのでアプリの案内よりも早くなります。
「クアージュゆふいん」は内風呂・露天風呂のほか、追加料金を払えば温水プールのある「バーデゾーン」も利用できます。バーデゾーンは水着の着用が必要で、これは受付で貸してもらえるようです。
入浴だけなら520円と公共らしい安さ。
これは道中の橋から撮った由布岳の写真ですが、露天風呂からもこんな感じで山の上半分がよく見えます。
大きな山には何でも富士とつけたがる日本人の習性で、由布岳も「豊後富士」というまたの名があるそうです。2~3時間で登ることができるので登山客からの人気も高いのだとか。
周辺に豊富な温泉を供給する活火山で、最後の噴火は2,000年前と推定されています。市内の南側にある宇奈岐日女(うなぎひめ)神社の御神体ともされている象徴的な存在です。
さっぱりして駅へ向かって歩いていると、向こうからパッカパッカと観光の辻馬車がやってきました。1人1,800円で、駅前のツーリストセンターで予約でき、由布岳を眺めながらおよそ1時間のルートとのこと。
いやはや、今日も半袖でいられるぐらい暑い。お風呂に入ってきたので、やっぱり何か飲みたくなりますねぇ…
というわけで駅前にあった地ビールのお店で1本買ってみることにしました。
「冷えてる地ビールってありますか?」
と聞いてみると、
「ありますよ。でもこれだけしかないからお兄さんに足りるかしら」
なんて茶目っ気のあるおばあちゃんが数種類30本以上は冷えている棚まで案内してくれます。由布院温泉に泊まるのであれば地酒なんかも飲んでみたかったところですが、まだまだ先があるので今は1本だけ。
この先の列車の中で飲むことを告げると栓を抜いて渡してくれました。
■ のりもの19:JR九州・キハ200系(由布院→大分:37km)
12:46発の大分ゆき普通列車で由布院をあとにします。
隣のホームには普通列車より先に出るキハ185系「ゆふ」が到着しました。本来は「ゆふいんの森3号」別府ゆきとしてキハ72系(ゆふいんの森III世)が充当される列車ですが、キハ71系(同I世)がメンテ期間のため「ゆふ」が代走しています。本来は3号に入るキハ72系がさっき乗ってきた1号として代打に入っていたのでした。
すっきりと飲みたいのでエールビールを選んできました。「由布院森の宝」というブランド名で、国立公園にも指定されているくじゅう連山の伏流水を使ったビールなのだそうです。うまさが進化するビン内発酵とは…?
売り文句はよくわかりませんでしたが、エールのすっきり感の中にビールらしい苦みがあっておいしかったです。やっぱりもう1本買っておけばよかったかな…
地ビールは当たり外れがあって賭けの要素も結構あるのですが、このビールはオススメできます。
(経験上最もオススメできないのは伊豆高原ビールですが、それはもう皆様の舌でぜひ確認をしていただきたい)
由布院から1時間ほどで終点の大分に到着しました。大分駅のすぐ手前から中学生ぐらいの女の子たちが大勢乗り込んできましたが、こんなに早く学校が終わるとは試験期間だったりしたのでしょうか。
到着した大分でもホーム上に大勢の人が。奥の方に止まる濃い茶色の客車は、JR九州が誇るクルージングトレイン「ななつ星in九州」ではありませんか!
ちょうど乗ってきた列車と入れ替わりに発車していってしまったので間近で見ることも写真を撮ることもかないませんでしたが、あの特別なオーラは感じられたのでよしとしましょう。出発時には子供たちが旗を振って見送っていました。
乗継の合間でお昼ご飯にします。
大分といえば「とり天」が有名ですが、あさかぜは豚骨ラーメンが食べたくて仕方ありません。九州に来てからというもの本格的なラーメンには一度もありついておらず、昨日の朝のではやはり物足りなさを感じます。昨日の晩に至ってはラーメンですらありませんでしたからね。
わざわざ大分に来ているのにも関わらず、こうしてあさかぜはラーメンの食べられるお店を探すことにします。
駅前に「ラーメン工房 ふくや」というお店がありました。豚骨ラーメンが専門ですが、このお店で「豊(とよ)ラーメン」というのを注文すれば大分鶏と豚骨を合わせたスープが食べられて大分要素も摂取できます。
よし、ここにしよう。
豊ラーメンと半チャーハンのセットで830円、麺の硬さが選べるのでバリカタを。純粋な豚骨だけよりも飲みやすさが感じられるようなスープで、ついついレンゲが止まりません。薬味も豊富でついつい替え玉までオーダーしてしまいました。
食べ過ぎな気もしますが、旅行先でカロリーなんて考えてはいけないのです。
「青いソニック」こと883系で博多へと戻ります。
博多・小倉から大分・宮崎を結んでいた特急列車はひとまとめに「にちりん」と呼ばれていましたが、1994年にデビューした883系によって博多~大分間のスピードアップが図られます。1995年から「ソニックにちりん」という列車名が与えられ、1997年には博多~大分間の列車が「ソニック」へとほぼ統一されます。
昨日乗っていた「にちりんシーガイア」はソニック統一前の時代の生き残りといった具合です。
外見も特徴的ですが、内装はさらに独特。強烈なデザインのJR九州の車両群の中でも883系が放つ異彩は唯一無二だと個人的には思っています。メタリックな色の金属で装飾されたデッキの雰囲気もさることながら、客室の座席も883系でしかみられない作り。
この耳のように見えるヘッドレストにはスピーカーを仕込む計画だったそうですが、音漏れや予算の都合でなくなってしまったとか。座席背面のテーブルもイス本体と一体化するようなデザインですし、小物を置く部分もただのネットではありません。
意欲的すぎたのかこのあとの車両ではここまでぶっ飛んだデザインは現れませんでしたが、近未来感のある列車名とともに「ソニック」のイメージを作り上げたと感じています。
デビュー当初は先頭部だけ淡いブルーメタリックで車体はステンレス地そのままの銀色でしたが、2005年から2年間で施されたリニューアルで全面的に濃いブルーメタリックへと塗装されました。
このリニューアルで「白いソニック」と呼ばれていた885系の対をなす存在として883系「青いソニック」の愛称が生まれ、駅の案内表示器にも使われるようになりました。
■ のりもの20:JR九州・883系(大分→博多:197km)
ソニック40号は定刻通り大分を発車し別府湾沿いに出ると、まさに「音速」の名の通り隣の別大道路を走るクルマをビュンビュン追い抜いていきます。
883系はカーブの通過速度を向上させるため、遠心力を使って車体を傾ける振り子式車両となっています。空気シリンダーでタイミングを制御するので381系のように「おっ、傾いてるな」とは実感しづらいですが、カーブ通過時は窓から地面の近さが感じ取れます。
傾いている実感が少ないということは遠心力への違和感が少ないと言うことでもあり、883系のような「制御つき振り子式車両」は381系の「自然振り子式車両」よりも大幅に酔いづらくなったといわれます。実際トイレにビニール袋が備え付けられているのは381系以外では見たことがありませんしね。
つまりお酒に酔ったがゆえに気分が悪くなるということもなくなったわけで、安心してニッカウヰスキーのハイボールを開けることができます。ハイボールはプリン体が入らない健康飲料ですから、どのタイミングで飲んでもヘルシー。
百貨店「井筒屋」の看板が見えてくると北九州に戻って来たなという実感が湧きます。ご当地百貨店はその都市・街のステータスともいえたわけですが、時代が変わって県を代表する百貨店が消えてしまうのも当たり前になりました。
そんな中でも生き残る井筒屋ですが、やはり百貨店という形態で生き残っているのは小倉の本店のみで、それ以外は間借りスタイルの小規模店舗です。
小倉で進行方向が変わりました。同時に席もそれなりに埋まるようになります。福岡県の二大都市間の往来は多く、JR西日本(新幹線)・JR九州・西鉄バスがそれぞれしのぎを削ります。
17:28、たった2時間17分で博多に到着しました。乗ってきた40号は停車駅が多いタイプですが、速達タイプだと大分~博多間をほぼ2時間で走破します。
ライバルの高速バス「とよのくに号」はスーパーノンストップ便でも2時間40分はかかりますから、驚くべき速さです。とはいえとよのくに号は通常運賃が3,250円とソニックよりも2,430円も安いので、安さを取るか速さを取るかでなかなか難しい選択肢となってきます。
さて、あさかぜもソニックどころか光の速さでコインロッカーから荷物を回収してこなければなりません。次の電車まで15分しかないですからね。
■ のりもの21:JR九州・813系(博多→原田:20km)
改札を出て、広い駅構内をコインロッカーまで急ぎ、引っ張り出した荷物にお土産などを詰め込み、持ち上げるのがイヤになるほど重くなったキャリーケースを再びホームまで引っ張り上げてきました。
なんとか間に合ったものの快速列車は帰宅ラッシュで満員…比較的マシだった先頭車に滑り込んで、ほうほうの体で原田に到着です。九州では「原」という字を「はる」と読むので、この駅の読み方は「はるだ」。
よっこらしょと荷物をホームに下ろし、一息つきながら発車していく813系を見送ります。
ここまでして慌ただしく原田にやって来たのは、これから乗る原田線の運転本数が1時間半~2時間半に1本程度と少ないからです。今思えば1本早い「ソニック」に乗ってくればここまで慌ただしく移動しなくて済んだのですが…
最悪の場合さっきの快速を逃しても間に合いはしましたが、このクソ重たい荷物を持って2分の乗り換えはさすがにハードです。旅行先では無理をしないのが一番。
発車5分前になってようやく1両のキハ40系が到着し、折り返しの桂川ゆきとなります。
ちなみに筑豊本線が正式名称ですが、乗客の流れは桂川から北に向かって吉塚で鹿児島本線に合流する篠栗線がメインルートとなっています。案内上も「福北ゆたか線」として一体になっていて、筑豊本線の末端区間はこうして「原田線」とあたかも別の路線であるかのように細々と運転されるだけ…
■ のりもの22:JR九州・キハ40系(原田→桂川:20km)
18:25、ブルンブルンと車体を震わせてのっそりと原田を発車しました。車内はあさかぜを含めて4人。夕方の帰宅時間帯だというのに、まるで深夜時間帯のような乗客数です。
日が暮れてしまったので車窓はほとんど何も見えませんが、冷水(ひやみず)峠という峠越えの区間にあたります。途中で長いトンネルを通過しましたが、それが峠の頂上をくぐる3,286mの「冷水トンネル」だったようです。
■ のりもの23:JR九州・817系(桂川→直方:21km)
桂川ではギリギリでしたが3分の乗り換えがうまくいき、817系の快速電車で直方に着きました。さっきから読みづらい駅名が続きますが、桂川=けいせん、直方=のおがた です。桂川は大学生の途中まで「かつらがわ」と読んでいました。無理もありません。
直方といえば最高齢の大関として有名になった魁皇関(現 浅香山親方)の出身地です。これにちなんでJR九州は、2001年から福北ゆたか線に新設した特急列車の名前を「かいおう」としました。存命中の人物が列車名になるのは初めてのことです。
駅前には魁皇の功績をたたえた立派な銅像がライトアップされていました。
さて、下調べをしたのでわかってはいましたが、駅に併設の博多うどんのチェーン店は19時で店じまい。そこ以外はめぼしい飲食店がなくいよいよ食事難民になってしまいました。
ないものを嘆いても仕方がないですし、JRの直方駅から500mほど離れた筑豊電鉄の筑豊直方駅へと歩くことにします。
駅からまっすぐつながっている商店街もほとんどのお店がシャッターで閉ざされ、立派なアーケードを備えているのにこの青果店ぐらいしか開いていません。夜だからというより、以前からシャッター街のようですが…
>>つづく<<