先日は、鉄道車両がどこで作られているかということを書きました。
しかし、作るということは余った分を処分しなければいけない状況が少なからず発生します。そんな時、要らなくなった車両はどうしているのか。
1. 廃車解体
まずは単純にスクラップします。つまりバラバラに解体します。鉄道会社は自分のところで使っている車両を手入れするための工場を所有していますが、解体するときはだいたいその工場で重機を使ってバラバラにします。
また工場で車体を輪切りにし、トラックに載せて専門の解体業者で最終的に処分をするという形をとっている鉄道会社もあります。
いずれにせよ、鉄の箱としての使い道がなく、鉄くずとしての利用価値しかないものは解体してしまいます。
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解体設備のある工場まで廃車回送される電車。編成まるごとではなく、必要な車両は改造して使い、不要な一部の車両は解体されるといったこともあります。写真のように機関車に引っ張られていくこともあります。
2. 中古車として譲渡・売却(国内)
大きな利益を上げている鉄道会社はバンバン新しい車両を入れることができますが、経営規模の小さい鉄道会社では新しい車両を作ることがなかなかできません。
そうした時に、他の鉄道会社で不要になった、状態のいい中古車を譲り受けたり購入したりするのです。使う地域や環境によっては、そこに適応した改造が必要になってきます。ですがそれらの費用を加味しても、新車を入れるよりも費用削減はできるのです。小さな鉄道に乗ったときに、「どこかしら都会で見たことのある電車だな」と思ったら、もしかしたらそれは第二第三の人生(車生)を歩み始めた車両かもしれません。
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熊本電鉄で活躍する、元都営三田線の6000系。全国的に見ると東急電鉄や京王電鉄の車両が目立ちます。
3. 中古車として譲渡(海外)
日本の鉄道車両は、法律によって厳しく検査などの項目が定められています。そのため、走る分にはまだまだ問題がないことがほとんどです。ましてや鉄道発展途上国からすれば、故障の心配がなく、しかも普通の通勤電車なのに空調が付いていることは破格のサービスだったりします。
そういうわけで、以前から海外へ日本の鉄道車両が譲り渡されることが多々あります。譲渡先は主に東南アジアで、近年は電車はインドネシア、ディーゼルカーはミャンマー(ビルマ)へと進出することが多いようです。
4. 静態保存
静態保存とは、線路上で動かさず、公園などに静置して保存することです。
公園に置かれる際は、その地域で活躍した縁のある車両が置かれることが多いです。また博物館などで展示されるのも、静態保存の一種です。
ただ雨ざらしになるような場所は車両が傷んでしまい、残念ながら解体撤去という運命になってしまった車両も少なからずいます。
千葉市の公園で保存されている蒸気機関車。川崎製鉄の製鉄所で使われていたもので、日本では最後の方に製造された蒸気機関車です。
5. 動態保存
文字通り、「動いた状態で保存」される車両。真っ先に連想されるのはやはりSL(蒸気機関車)でしょう。
動態保存を行い続けることはなかなか難しく、小さな鉄道会社ではサポーターや自治体からお金を集めて維持していることも少なくありません。費用はかかりますが、しかし注目をあつめるので観光客が呼び込める動態保存。様々な場所で色々なイベントが開かれているので、比較的目にすることは多いでしょう。
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動態保存の代表格、蒸気機関車。SLを動かし続けるには莫大な労力と多額の費用がかかります。
6. 店舗・倉庫としての利用
少々場所をとるものの、すでに箱型に組まれており、屋根もついているということで店舗や倉庫として使われていることも少なくありません。渋谷駅前の緑色の車両(元東急電鉄の5000系)も、原型から改造されてしまってはいるものの、一種の店舗利用と言えるでしょう。
寝台車ということを生かしてバイカー向けのホテルになっていたり、路面電車の車両を使って喫茶店をやったり、古い貨車を使って倉庫にしたり…と、使い方は人によって様々です。昔の貨物列車につないでいた車両を使った駅舎なんかもあったりします。
といった具合に、解体も含めたいくつかの「処遇」が鉄道車両には待っています。
ですが、古くなった車両は解体されてしまうことがほとんど。中古車としての国内への譲渡はある程度見受けられますが、3~6の用途となるのはほんのわずかです。
さて、「使い終わる」までには作られてから何年ぐらいなのでしょうか。それはまた後日。