台湾鐵路、高雄メトロ、台湾高鐵の交差するターミナル駅だけあって、新左營(しんさえい / シンズォーイン)駅の構内は広く様々なテナントも入っています。
これから乗る台湾新幹線まではしばらく時間があることですし、駅構内をブラブラ散歩してみましょう。
といって建物の中を歩いてみたものの、なんだか見覚えのあるお店ばかりが目に入ります…
台北に戻る前に軽く腹ごしらえをしておこうと考えていましたが、さすがに東京でもよく見かける麺屋武蔵に入るというのもねえ…
メニューを見ると日本の店舗とは内容が異なり、つけ麺ではなくラーメンがメインのようですが。台湾ではあまり「つけ麺」という文化になじみがないのかもしれません。
ダイソーにいたっては日本語の求人が出ていました。現地に暮らす日本人を相手にしたものなのでしょうか?
改札階のフードコートに戻って来ました。やはりここで台湾っぽい何かを食べるのが一番良さそうです。街中よりはちょっと強気の値付けが目立ちますが、旅行ですしあまりケチケチしても仕方ありません。
台湾のローカルフードの1つ、牛肉麺でも食べることにしましょう。
注文は番号式なので観光客でも簡単でした。ものの1~2分で提供された牛肉麺は165NTD(約825円)。あっさりしたスープでなんだか健康に良さそうな味がします。
麺はなんだか“もっちゃもっちゃ”という噛み応え…茹だっていないのでは…?と思ってしまう食感ですが、こんなものなのかも…?
カウンターの近くに調味料が置いてあり、ラー油などを小皿にとって持ってくることができます。自分の好みに味変できるのも台湾メシの楽しいところです。
駅の北半分が台鐵の新左營駅で、南側半分は台湾新幹線こと台湾高鐵の左營(さえい / ズォーイン)駅になっています。北側は自然公園がすぐ近くにあって静かなのに対して、市街地がすぐ目の前にある高鐵側の構内は賑やかです。
…いや、賑やかにしてもずいぶん人が滞留しています。なんだか改札で駅員さんもメガホンで説明していますし…
騒がしい理由がわかりました。
台南で発生した震度5弱の地震の影響で線路の点検を行っており、高鐵は大幅な遅れが発生しているとのこと。台湾も地震大国だということをすっかり忘れていました。
この画面を見た瞬間に「あっ、地震で遅れてるのか!大変だそりゃ」とわかるのは漢字圏のありがたいところです。中国のように元の字がわからないぐらいまで簡略化された簡体字ではなく、台湾では繁体字を使っているのでほとんど悩むことなく読み取れるというのもなおさら大きいですね。
というわけで、18時ちょうどに台北方面から到着するはずの新幹線は20分以上過ぎても到着しておらず、現時点で69分の遅延が確定しているとか。あさかぜは18:35発の676次(列車) 南港(なんこう / ナンガン)ゆきを予約してありますが、これも1時間ぐらいは遅れそうです。
とはいえどこかに遊びに行くわけにもいかないですから、おとなしく駅構内で待っていましょうか。
今のうちに高鐵のきっぷの取り方をご紹介しておきましょう。
といっても台鐵と同じくオンラインで予約ができるので、現地に行って慌てる必要はありません。もちろん券売機があるので、現地に行ってから購入することも充分に可能です。
いずれにせよ券売機に行くわけですが、券売機は現地語か英語で日本語には対応していません。
オンラインで予約してある場合は「一般取票」から受け取り画面を開き、パスポート番号の下4ケタ、次に予約時に発行された8ケタの予約番号を入力します。
合っていれば下部の取り出し口にレジャー施設の入園券のような乗車券が出てきますから、それを改札機に通すだけ。
QRコード1つで済む台鐵に比べると若干の手間は増えますが、それでも複雑でわからないということはありません。旅行者に親切な国です。
台灣高速鐵路、通称「高鐵」は2007年に開業しました。日本では”新幹線は国主導で建設しJR各社が運営”となりますが、台湾高鐵は民間会社。そのため在来線の台湾鐵路管理局とはライバル関係ともいえるわけです。
左營~台北間の所要時間は速達列車で1時間40分、各駅に止まる便でも2時間20分程度と、高雄~台北間が4時間以上かかる台鐵の自強号に比べると圧倒的なスピード。
台鐵も時間の差はわかりきっていたので、長距離列車から都市間列車に軸足を移しパターンダイヤ化する「捷運化」を推進。これによって台北~台中~台南~高雄を高速移動する“高鐵”と、合間の都市や東海岸側を補完する“台鐵”という棲み分けが構築されるようになりました。
その高鐵で運用されているのは700T型。JR東海・JR西日本の700系をベースに台湾に合わせて改良された車両で、12両編成34本408両が投入されました。
日本では285km/hが最高でしたが台湾では300km/h。1~5・7~9号車が指定席、6号車はグリーン車に相当する商務車、10~12号車が自由席というのが基本。ただし臨時列車は全車指定席になる場合もあります。
700T型の全体的な雰囲気はベースの700系によく似ていますが、ちらほら違う部分もあります。
日本よりも余裕のあるサイズで建設されたフランス方式に合わせて、先頭部の鼻は短くなりました。
乗務員扉がないのは、最後部の客用ドアで車掌がドア扱いをするやり方が高鐵にも踏襲されたためです。近年はEMU900型やEMU3000型のように乗務員扉がある車両が出てきていますから、車両の置換えが計画されている高鐵にもその波が来るのかもしれませんが。
ホームで車両の写真を撮るにしても暑い…!19時近くになったとはいえ気温も湿度も高く、歩き回っていると汗をかいてきます。
自分の乗る列車がどうなったかと思って発車表示を見に行くと、「延遅(遅れ)○○分」の表示はついに「発車未定」になっていました。
こんな中でホームに並んでいても仕方ありませんし、コンコースなら冷房が入って涼しいのでそこで待つことにします。自動放送は現地語と英語で流れるので、発車時間と列車番号さえ覚えていればなんとかなりますからね。
19:05、思っていたよりも早く3Aプラットホームに列車が滑り込んできました。超スピードで車内清掃を終え、折り返し676次南港ゆきとなります。
乗車口で今か今かと待ちわびていた乗客がゾロゾロと足早に吸い込まれていくのに置いていかれないよう、あさかぜも足早に車内へ。
ちなみに「對號座」というのが指定席のことで、自由席はそのまま「自由座」です。
1本でも早い列車へと乗車変更した人も多くいるようで、車内は満席。あさかぜの隣に座ったスーツ姿の男性は席に着くなりお弁当を開けています。
そういえば改札の近くに「高鐵便當」が売っていました。「まだお腹空いてないしいいや」とスルーしたものの、隣でおいしそうに食べる光景を見てしまうと、なんだか急にお腹が空いてきます。
「ちょっと高かったけど買っておけば良かったかなぁ」
は後の祭り。あさかぜは目の前の2本のお茶で耐えるのみです。
そうそう、緑茶に砂糖を入れないのは日本ぐらいなのか、「Green Tea」と書いてあるからといって何も見ずに買うと甘いなんてことがままあります。
文字の読めないタイではお手上げでしたが、台湾では成分表示を見れば「蔗糖」と書いてありますし、パッケージに大きく「無糖」と書いてくれているものもあります。
甘くないお茶が飲みたい、というときはよく見て買いましょう。あさかぜは昨晩早速失敗したので…
左營駅を42分遅れの19:17に発車した676次は先行列車に追いついて止まったりして、順調に遅れを拡大させていきます。台中(たいちゅう / タイジョン)站には57分遅れで到着。
台中直轄市は約280万人という台湾で2番目の都市ですが、高鐵はその少し郊外を通り抜けていきます。駅名こそ「台中」とついていますが、台鐵の駅とは全くもって別。中心部へは台鐵の區間車か台中メトロ(台中捷運)で15分ほどかかるそうです。
高鐵の駅のほとんどは台鐵のターミナル駅と違うところにあるため、観光などで利用の際は少し注意が必要です。日本であれば「新○○駅」とか、地名を使った複合駅名になるところなので、このあたりは台鐵とは別組織になったが故の弊害といえるかもしれません。
桃園(とうえん / タオユアン)にも約50分遅れで到着。ここで乗客が一気に降りていきました。多くの人がキャリーケースやスーツケースを引っ張って足早に歩いて行ったので、ここから桃園メトロに乗り換えて桃園空港へと向かうのでしょう。
50分以上も遅れていたわけですから、飛行機の利用者はみんな気が気じゃなかったでしょうね…
桃園でごそっと降りた結果、車内は写真が撮れるほどガラガラです。
内装も座席も、よく見覚えのある光景。おそらく天龍工業製のシートがそのまま採用されたんだろうという予想がつきますが、2012年に増備された最後の4編成は台湾製の内装品になっているとか。
座り心地も700系そのものではありますが、シート生地はおなじみのファブリック(布)とは少し違う、ツルツルというかモチモチした素材になっていました。ファブリックよりも手入れがしやすいのかもしれませんね。
非常時に窓を割って逃げるためのハンマーが壁に備え付けられているのも日本との違いの1つ。
21:23、半日かけて台北に戻ってきました。当初の予定より50分も遅れてしまいましたが、地震の影響があったことを考えれば早かったといえます。良かった良かった…
2016年に台北~南港間が延伸され、台北発着の列車は2023年現在では設定されていないようです。台北駅は配線の都合で折り返し容量に限界があったので、南港までの延伸は列車本数を増やす意味合いもありました。
足止めを食らっていた時間があったにもかかわらず、2時間10分で帰ってきたのは驚きです。往路は遠回りだったとはいえ7時間もかかったのに…!
大きな都市では地下鉄のネットワークも充実しているので、高鐵をうまく使えれば短い滞在期間でも台湾全体を旅行することができますね。
時間が遅くなってお腹も空いてきました。ホテルから徒歩5分ちょっとのところにある24時間営業らしき「西門麺店」で夜ご飯にします。
スマホ片手にメニューを解読していたら、店員のお兄さんが日本語のメニューを渡してくれました。一見して「コイツは日本人だな」ってわかるぐらい、日本人の観光客が多いのでしょうねぇ。
卵包魯肉飯が65NTD、ワンタンスープが40NTD、この2つで約525円という充実した夜ご飯です。卵包は目玉焼きかと思っていましたが、ポーチドエッグに近いものかな?
魯肉飯はしっかりと八角が効いたいかにも台湾という味。思っていたよりも脂身は少ないですし、豚肉独特の香りが消えていて非常に食べやすいです。
スープは濃すぎない味付けで、鶏ガラのダシが染みていてこれもまたとてもおいしい。
舌鼓を打って出てきたものの、なんだか歩いているうちにもう少し食べたくなってしまいました。
マクドナルドは国によってご当地メニューがあるので探してみると、「SIGNATURE」なるランク付けのメニューがあります。
BLTアンガスビーフバーガー、お値段なんと単品で114NTD(約570円)。これ1個でさっき食べてきた夜ご飯より高い…!
写真が死ぬほどヘタクソなのは置いておいて、肝心のお味はというと…
うーん…
確かにいつも食べているマクドナルドのメニューよりもレタスにシャキシャキ感があって新鮮な感じはします。肝心の分厚いビーフパティは、挽肉なので当然かもしれませんがアンガスビーフであることはわかりません。むしろレタスとの対比でよりパサパサ感が目立つように…
100NTD以上出してこれかぁ、と思ってしまうクオリティでした。
口の中から奪われてしまった水分はビールで補給します。今日は白い缶の金牌「台湾啤酒」。爽快感のある飲み口で、いかにも暑い台湾で飲むのにうってつけのビールという感じ。ゴクゴクといけてしまうので1本じゃ足りなかった…
なお台湾では食事中にお酒を飲むという習慣はないようで、食堂サイズのお店ではメニューにお酒が並んでいることはほとんどありませんでした。
楽しかった1日の疲れを洗い流して、また明日へ向けて休みましょう。それではおやすみなさい。