皆さまは「経県値」( https://uub.jp/j.cgi )というウェブサイトをご存知でしょうか。自分がどこの県に住んだり滞在したことがあるかを点数化するサービスで、行ったことがあるかないかを色分けして教えてくれるので旅の記録にとても便利!
あさかぜはほとんどの都道府県に何らかの形で降り立っているのですが、47のうち2つだけ訪問したことのない県があります。それが佐賀県と長崎県。
佐賀県は電車やバスで鳥栖や高速基山を何度も通過していますし、両親によればあさかぜが2歳の時に長崎へも行ったことがあるとか。ただ佐賀県は端っこを通過していただけですし、ましてや30年も前の長崎県の記憶なんて何も残っているはずもなく…
そういうわけで、あさかぜにとっては両県は「未踏の地」。今回の旅は「その2県に踏み入って滞在したという記録を残しに行こう」という魂胆です。
まずはお出かけ前に腹ごしらえを。宿泊している「福岡東映ホテル」のすぐそばには博多うどんのチェーン「ウエスト」が店を構えています。しかも24時間営業という便利さ。
肉うどん(600円)をオーダーして、テーブル上にあるネギと天かすをトッピングします。博多うどんはコシがなく、噛むことを意識せずスルスルと進む食べやすさが特徴です。
関東では讃岐うどんが市場を席巻していますが、食べやすくておいしい博多うどんがなぜ流行らないのか疑問で仕方がありません。
渡辺通から七隈線に乗ってまずは博多へ。朝ラッシュ時なので車内はみっちりと人が詰まっています。
博多で乗り換えた空港線の筑前前原ゆきもやはり大混雑。西新でようやく座れましたが、今度は高校生を中心に再び車内は混み合っていきます。JR筑肥線との境界となる姪浜でも車内は混んだままで、博多から30分ほどの九大学研都市で一気に降りてようやく車内に空席ができました。
8:25、博多から40分ほどかけて終点の筑前前原に到着しました。この先の唐津方面へは1日数本の列車が直通するのみで、基本的には乗り換えが必要です。接続はよく考えられていて、この列車のすぐ対面にも筑前深江ゆきが待っていました。
筑肥線はJR九州の中ではとても珍しい直流電化の路線。そのためここではJR九州で唯一となる直流専用の車両が活躍していて、しかも本州でさえ数少なくなった103系がいるという昭和~平成の鉄道マニアがワクワクしちゃう路線になっているのです。
混雑を予期して1本早い電車に乗ってきましたが、その心配はいりませんでした。ホームで西唐津ゆきを待っていた人は数人、後続電車から乗り継いできた人も30人に行くか行かないかぐらいで、幸いなことにだいぶ空いています。
雨のせいでガタガタと盛大に滑りながらも、国鉄型らしい重厚な音を立てながら快走していて気持ちがいいですね。
懐かしい音や振動を味わっていると、あっさり終点の西唐津に到着してしまいました。6両編成が停車できる立派なホームですが、到着した103系は3両編成です。
ちなみに103系は福岡空港まで直通していましたが、地下鉄線内では自動運転はおろかワンマン運転にさえ対応していませんでした。2015年に地下鉄直通運用を305系に譲り渡したあとは、筑前前原~西唐津間で活躍を続けています。
1983年にデビューした1500番台の顔つきは同時期に生産されていた105系とそっくりです。片側4ドアの通勤電車であること、モーター車が2両で1組のMM'ユニットであるところから、あえて103系を名乗ったのでしょう。
活躍を始めてからすでに40年も経つ車両ですが、活躍の場を狭めただけでまだ完全な置換えは計画されていないようです。そもそも利用者数のあまり多くないローカル区間ですし、このためだけに新しく車両を作るのもJR九州としてはコスト的に厳しいのでしょう。
JR九州は鉄道事業をお荷物と思っているフシがありますから、なおさら使えるとこまで使いそうな感じはしますね…
福岡空港からの直通電車があるにもかかわらず、2022年には無人化されている西唐津駅。改札機も券売機もなく、ICカードの簡易タッチ機とチャージ機が立っているだけでした。降りた人もせいぜい5人といったところで、閑散とした終着駅です。
駅前のバス停から昭和バスの呼子ゆきに乗って終点を目指します。
「唐津も呼子も同じ玄界灘に面した街だし、そんなに遠くはないだろう」と甘く見ていましたが、バスで30分を要するぐらいには離れていました。しかもバスは海から離れて距離が短い内陸の道を進んでいくので、車窓に広がるのは想像していた玄界灘ではなく農村の風景。
ともあれ降ったりやんだりが続いていた雨が上がり、ところどころ青空が広がって景色が緑色に輝くようになりました。いかにも夏といった感じ。
終点の呼子バスターミナルから、事前に目をつけていた昼食の店へ向かって歩いて行くことにしましょう。
海沿いの道路から1本入ると急に時代が巻き戻りました。軒先に出す品物の雰囲気も見慣れたスーパーとは違いますから、昭和とは言わずとも平成初期ぐらいにタイムスリップしたかのようです。
途中にある立派なお屋敷は「旧中尾家住宅」。江戸初期から明治初期までの8代170年間にわたって捕鯨業により巨万の富を得ました。その財力や唐津藩主をもしのぐものだったとか。
収めた税金が藩の財政を支えたのはもちろん、中尾家も神社やお寺を建てるなどして、呼子の街の発展を支えた立役者です。
内部は一般公開されており、建物自体も佐賀県の重要文化財に指定されています。今日は時間がないのでパスしますが、呼子の歴史を語る上で欠かせない存在なので訪れた際はぜひここも覗いてみてください。
「呼子のイカ」といえば、ちょっとした旅好きなら知らない人はいないであろう存在ですが、実際に足を運んでみると意外と簡単にはありつけません。
新型コロナウイルスの大流行が与えた影響は大きかったようで、以前あった店舗や旅館は店じまいとなったところも少なくないようです。
「いか本家」は表向きは休業となっていますが、柱についている休業を知らせる張り紙はボロボロで、営業再開を望むのは無理っぽい雰囲気…
道路を歩いていると干物を扱うお店はいくつもあって、中には写真のように店先でイカを乾燥させる機械が回っていたりします。版権的に大丈夫なのかというツッコミはさておいて、カラカラと音を立ててイカを乾かす光景は呼子ならではでしょう。
バスを降りてから10分ちょっと歩いてきただけですが、暑くて軽く汗ばんできました…
港に漁船がたくさん係留されています。イカ釣り船といえば独特な形の大きな白熱電球をたくさんぶら下げているイメージですが、近年は消費電力が少なくて明るく光るLEDを採用する例も多いそうです。
目の前に係留されている船も、あさかぜのイメージにあるイカ釣り電球とは形も大きさも異なるものがくっついています。LEDかどうかまでは判別することができませんでしたが…
省電力で長寿命と万能に思えるLEDですが、白熱球とは光の波長が異なるので、それぞれの光源の特性、あるいは捕まえる魚介類の種類によって使い分けする必要があるのだそうです。
お目当てのお店「河太郎 呼子店」に着きました。呼子バスターミナルからは20分ほどの道のりですが、暑さもあってだいぶ長く感じた道のりでした…
すでに整理券の発行は始まっていて、11時の開店までまだ20分あるにもかかわらず番号は11番目。どんどん駐車場に入ってくるクルマからは、整理券を取りに次々と人が降りてきます。
西唐津駅からのバスには6人しか乗っていなかったし、歩いてくる道も観光客らしい姿はわずかだったので「そんなに混むことはないだろう」と考えていましたが、それはあさかぜの勝手な思い込みだったようです。
順番を呼ばれるまでお店の周辺をウロウロしながら待つことにします。
奥に見えるのは加部島へ渡る呼子大橋。長さ700m以上ある立派な斜張橋で、道路だけでなく農業用の水道も通る加部島の命綱です。
先ほどの呼子バスセンターからフィーダーバスが通っているものの、便数はあまり多くなく観光客には使いやすいとはいえません。あさかぜのような時間に追われる旅をしていると、どうしても便利な場所から歩いて行ける範囲に行動圏が狭まりがちです…
開店とほぼ同時に店内に案内されました。
周りを見ると夫婦や家族で訪れていて、一人で来ているのはあさかぜぐらい。そういった客層を反映してか店内にカウンター席というものは存在せず、4人が座れるボックス席へと案内されました。場所効率の悪いヤツです…
お店の中央には大きないけすが設置されていて、その中にたくさんのイカが泳いでいました。きっとここからすくったイカがさばかれて手元に出てくるのでしょう。
ここへ来ておいてイカを食べずに帰られようか。イカ刺しがメインの「河太郎定食(3,480円)」と、のどが渇いていたのでレモンサワーも注文。クルマを運転しない旅だからこそできる昼飲みです。
10分も待たずにお目当てのイカが出てきました。まだ触手がピクピク動いているような状態で、動画で見ると体色が変化しているのもわかります。
提供される重さが決まっているらしく、締められたイカとは別のイカが刺身になって載せられていました。人間とはなんと残酷な食べ方をするのでしょう…!
と思いつつ箸を延ばせば、透明なお刺身のおいしいこと!新鮮なイカならではのポリポリコリコリという食感がたまりません。回転寿司で食べていたイカとは一体何だったのか、とつい思ってしまうほどです。
刺身を食べ終わってから店員さんを呼ぶと、いったんイカが引き上げられて今度は天ぷらにして出してくれます。
柔らかくも弾力のある身の食感に、生の時とはまた違うおいしさを見いだします。普段あさかぜは天ぷらには天つゆ派に属していますが、この天ぷらに関しては付け合わせの塩の方がよりおいしく感じられました。
刺身もうまい、天ぷらもうまい、おひつに入って出てきたご飯はあっという間に空っぽです。
お酒もつけて4,000円ぐらいのお高いお昼ご飯でしたが、その価格に見合った満足度の高さでした。わざわざイカを食べるために呼子まで足を運んだ甲斐があったというものです。
河太郎の隣には物産館「大漁鮮華(たいりょうせんか)」があり、こちらでもイカ料理を味わえるそうです。店内のポップによると今のシーズンは剣先イカだそうで、さっき食べたのもそれだったのでしょうか。
まぁおいしかったのでなんでもいいか。
物産館に併設されて温浴施設「台場の湯」があるので、汗を流してから呼子の中心街へ戻ることにします。
大きくはない浴場ですが、目の前にある呼子の港を見渡すことができて気持ちがいいところでした。浴室に入っていったら、水質チェックに来ていた係員のお姉さんと鉢合わせて若干気まずい空気になりましたが…大変失礼いたしました…
やはりコミュニティバスとは時間が合わないので、呼子バスターミナルまでまた歩いて戻ります。海から1本内側の通りに入ると時間が逆戻りしたかのような風景が広がって不思議な気分。
雨が降ってきて人通りがなくなったところも、タイムスリップのような感覚をより高めます。
歩いているうちに雨がさらに強まってザーザー降りになってしまいました。どうにも天気の安定しない1日ですね…
かなり強い雨で観光客も雨宿りしにいってしまったのか、来るときに通った通りも露店やのぼりが引っ込んで寂しい風景に。これはこれで味わいのある雰囲気ですが、自分の足下がビタビタになるのには困ったものです。
バスターミナルまで戻って来ました。一瞬だけ晴れて「うわ、暑っ!」となったらまたすぐに雨模様になってしまい、落ち着かない空模様に振り回されています…
呼子のバスターミナルは観光案内所も併設された年季のある建物。日中の唐津方面から来るバスはすべてバスターミナルを始終着としていて、呼子町内はフィーダーバスやジャンボタクシーが回って利便性を確保しています。
大漁鮮華が入る「呼子台場みなとプラザ」へもジャンボタクシーが巡回していて、1乗車200円で利用可能。
岬や島が入り組む地形になっているので、うまくバスを活かせればだいぶ移動が楽になることでしょう。
>>つづく<<