さて、まだ11時と少し早いですがお昼ご飯を食べておきましょう。お腹も空いたし。
倶知安の駅前には「駅前食堂 停車場」というお店があって、おいしいしボリュームもあるしと満足度が高いそうですが…
うーん?ないぞ…?
事前に調べた駅前食堂の場所では、違う飲食店が新規開店の準備をしています。
泡を食って調べたところ、ちょうど下調べをしていた2週間ぐらい前に「駅前食堂」は閉店してしまった様子。なんということ…!
散歩がてら周辺の飲食店らしき場所を見てみましたが、どう見ても営業していなかったり、まだ開店時間じゃなかったりと食事にありつけません。
国道5号線までえっちらおっちら歩いてきて、その名も「弁当屋」でお弁当を買うことにしました。
出来合いのものが並んでいるわけではなく、欲しいメニューを注文するとその場で作ってくれて暖かいお弁当が食べられます。楽しみに店内で待っているうちに、外はあいにく雨が本降りになってしまいました…
※ こちらのお店は2022年10月末で閉店になってしまったとのこと。残念すぎる!
作ってもらったお弁当を持って、可能な限り早足で駅まで戻ってきました。旅先で雨に降られるとひどく気分が下がります…
朝ご飯も食べていませんから空腹の限界です。駅の待合室で「唐揚げセブン!」(640円)をかき込みます。唐揚げ、北海道ではザンギと呼びますが、これが最高におかずになる味付け。ご飯がどんどん進む!
お酒に合わせてもおいしいのはわかりきっていますが、残さずについ夢中で全部食べてしまいました。
次に乗るのは12:35の長万部ゆき、山線の深淵区間を通り抜ける列車です。この列車に合わせて12:12に小樽からの列車が到着するのですが…
どうもここ最近の山線は観光客で混み合っているようで、下手をするとその列車からの乗り継ぎで座れない可能性があります。
わざわざ朝食を犠牲にしてでも1本早い電車で倶知安に来たのには、そういう理由もあったのです。
小樽からの列車が着く直前に改札が始まりました。あさかぜが乗車口に並んだ直後、予想通り大量の老人が列車から吐き出されて、多くがそのまま長万部ゆきの乗車口に並びます。
それでもキハ150形なら座りきれるぐらいの人数ですが、座席がいくらもないH100形では微妙…
ボックス席も、ドア付近のロングシートも全て埋まり、立ち客まで出した1両編成の長万部ゆきは倶知安を発車します。
冬場はスキーリゾートとして名高いニセコでは、わずか2~3人が降りただけでした。
会話に花を咲かせる老人たちからは「もうすぐこの路線もなくなっちゃうんだって。だから今のうちに乗らなきゃね」みたいな話が聞こえてきて、どうやら乗り通す人が大半のような雰囲気です。
旅情も快適性もないH100形に乗って、旅の風情も感じさせない世間話に花を咲かせるお年寄りに囲まれて、硬い座席に縮こまって座って…旅の高揚感はすっかりしぼみきってしまいました。
そんな気を紛らわせたいときにもお酒は有効です。部屋で飲もうと思って昨晩買ったものの、飲むことなく残っていたサッポロクラシックを開けることにします。
正面に座る潔癖症っぽい高年女性からはゴミを見るような視線を浴びせられましたが…
別に飲んで暴れるわけでもなし、飲酒も禁止されているわけではないのでそんな目をされる筋合いはありません。変な人は気にしないことにします。
ようやく車内に余裕ができたのは蘭越(らんこし)です。1/4ほどの人が降りていきました。
町内には看板にも出ているように、弱アルカリ性の温泉「美人の湯」を謳う幽泉閣というそれなりに大きな温泉施設があります。町内を流れる尻別川は1999年~2006年までの7年連続で「清流日本一」に選ばれた川で、エゾイワナ、ヤマメ、ニジマスなどの魚が釣れる有名な釣りスポットでもあるそう。幻の魚、イトウも釣れる自然にあふれた町です。
14:11、山線を走破して長万部に到着しました。いやはや、ずいぶん長く感じられた1時間40分でした…
倶知安でのザーザー降りがウソのように晴れ渡り、暑いぐらいの気温も相まって解放感に包まれます。んー、やっと体を伸ばせる…!
正直なところ、青春18きっぷのシーズンでもない今の時期でここまで山線が混み合うとは想像していませんでした。まだH100形の硬い座席だけなら耐えられたかもしれませんが、この混雑が合わさるとキツいですし、二度と味わいたくありません。今日が山線への最後の思い出になりそうですね。
ボリューム満点の唐揚げ弁当を食べてから3時間しか経っておらず、さしてお腹は空いていないのですが、やはり長万部へ来たからにはこれを手に入れておかねばなりません。
そう、名物駅弁の「かにめし」(1,180円)です。
駅から歩いてすぐのところに「かにめし本舗かなや」があるので、ちょっとした乗り継ぎの合間に買うことができるのはうれしいですね。
店舗の窓口のすぐ右側には休憩所が用意されています。「自由席」という札が出ている木の扉を入ると、2人掛けの座席が16席分正面を向いて並んでいました。
この座席は、1988年3月の青函トンネル開業から2002年まで青森~函館間を結んだ快速列車「海峡」に使われた50系客車のものを譲り受けたのだそう。正面のモニターには北海道の鉄道にちなんだ映像が映し出されており、鉄道旅行気分を味わいながらお弁当を食べることもできます。
まぁ鉄道で旅行している人にはあまり関係のない場所ですが、のんびり景色を眺めているわけにはいかないクルマ移動の時なんかには小休止にぴったりですね。
噴火湾こと内浦湾の最も奥まった場所に位置する長万部町。海岸まで出てみると、天気が良いので湾全体を一望することができました。
波打ち際まで降りられるみたいですし、ピクニックがてら砂浜で食べる「かにめし」もまたおいしいかも。
山線はガッカリ電車のH100形に統一されてしまいましたが、事実上のメインルートである函館本線と室蘭本線では引き続きキハ40系が活躍しています。
といっても、これらの車両が置き換えられるのは時間の問題。目を見張るスピードでH100形は増殖しているので、よその路線で余ったキハ54形やキハ150形がこちら側に転属してくることも充分に考えられます。
北海道で国鉄形らしい乗り心地を味わいたい、というのであればここ1~2年が勝負かもしれませんね。
本当ならキハ40でのんびりと新千歳空港まで戻りたいところですが、さすがにそれは時間が許してくれません…長万部に着いてからおよそ1時間後の特急「北斗13号」に乗って、泣く泣く急ぎ足で札幌方面へ向かいます。
ちなみにこの北斗13号は堂々の9両編成!キハ261系の限界(10両)に迫る長編成です。実際に車内もそれなりの混み具合になっており、幸いあさかぜは隣に誰もいなかったものの8割ほどの席は座っていました。
また小幌駅を飛ぶように通過していきます。速度が速すぎて見られる写真にはなりませんでしたが…訪問客はこの時はいなかったようです。
エンジンをうならせて室蘭本線をかっ飛ばしていきます。
湾のはるか向こうに見えるのは、渡島富士とも呼ばれる北海道駒ヶ岳です。東側から見るとこのように富士の名前も納得いくような山体をしていますが、見る角度によって全く山の姿形が異なります。
Wikipediaの『北海道駒ヶ岳』の項目を見ると、下の方にいくつかの方向から見た駒ヶ岳の写真が上がっていますので、ぜひご覧あれ。
南千歳で乗り継いで千歳に降り立ちました。帰りの飛行機まではまだ少し余裕があるので、駅前のイオンに寄ってビールを家に送りつけることにします。
最近は千葉や東京でも北海道限定を謳う「サッポロクラシック」が手に入りやすくなりましたが、やはり季節限定の商品は道内のみでの販売。例年秋口に出る「富良野ビンテージ」や今の季節に出てくる「夏の爽快」は、北海道以外で普通のスーパーに並ぶことはまずありません。
というわけで、「サッポロクラシック 夏の爽快」350ml缶と500ml缶をそれぞれ1ケースずつ配送をお願いしました。この組み合わせにすると1梱包で最大の量を送ることができるのです。
かなりお腹が空いてきました。ラウンジに入って駅弁を開けるというのもちょっとためらわれたので、ターミナル2階のテーブルが並ぶスペースでおやつ代わりに「かにめし」を開けましょう。
中身は基本的にシンプル。ご飯の上に味が染みたカニの身が敷き詰められ、濃い味付けのシイタケが添えられています。箸休めは佃煮とさっぱりとした桜漬け、そしてデザートの(缶詰めの)ミカン。
こういうお弁当にはなぜかグリーンピースがつきものなので、食感も風味も大嫌いなあさかぜはまずこいつらをお茶で丸呑みするところからスタートです…
駅弁というある程度長時間持ち運ぶのが前提ながら、カニの風味がちゃんと伝わってくるのが最高!
散歩がてら展望デッキに出てみるとANAのBoeing 767-300ER「『鬼滅の刃』じぇっと」がまもなく出発のタイミングでした。ANAは流行り物にすぐ乗っかるミーハーな印象がありますが…
『鬼滅の刃』を知らないので何がデザインされているかがさっぱりわからないのですが、このJA616Aは「『鬼滅の刃』じぇっと -壱-」ということで主要キャラクターが描かれているようです。2022年1月末から運航を開始しており、3月末からは同じくB767のJA608Aが「『鬼滅の刃』じぇっと -弐-」として運航を開始しています。
機内は専用のヘッドレストカバーや放送が用意されているとのこと。
出発まで1時間半ぐらいになったのでサクララウンジで一休み。北海道を離れる前に最後の「サッポロクラシック」を味わっておきます。
帰りのJAL便はA350-900の10号機。2,000円で普通席からClass Jへとアップグレードしておきました。座席の幅は広く、前後の間隔も大きくて非常に快適なシートなのですが、やはり国際線用B777のビジネスクラスの座席は気になるものです…あの席はどのタイミングで予約をすれば座れるんでしょうね。
いつぞやのようにフットレストが壊れると怖いので、今回はリクライニングだけにとどめておきます。それだって十二分に快適な座席なので、1時間半のフライトではもったいないぐらいです。
(C)乗りつぶしオンライン より出力
さて、今回の旅を含めると、JR北海道の路線のうち97.6%を乗ったことになりました。残すところは富良野線のみで、JR北海道の全線完乗が見えるところまで来ています。
次の機会には残った旭川~富良野間を乗って、達成率100%へ持って行きたいところです。
それでは、また次の旅でお目にかかりましょう。
■ 今日ののりもの
○ その1
【札幌市営地下鉄・5000形】すすきの→さっぽろ:2km
○ その2
【JR北海道・733系】札幌→小樽:34km
○ その4
【JR北海道・H100形】倶知安→長万部:78km
○ その5
【JR北海道・キハ261系】長万部→南千歳:162km
○ その6
【JR北海道・721系】南千歳→千歳:3km
○ その6
【日本航空・Airbus A350-900】新千歳空港→羽田空港:884km
今日の合計移動距離:1,228km
※Google mapのタイムライン機能より算出