日本航空(JAL)は2023年3月27日、Boeing 737-800の後継機にBoeing 737 MAX 8を選定したと正式に発表しました。
以前から
「順当にB737MAXでは?」
「Airbus A320neoの可能性もある」
とウワサはあったものの、B737MAXに決定したのはなんだかんだ大方の予想通りだったのではないでしょうか。
MAXシリーズであれば現在のNGシリーズと操縦資格が共通なので、簡単な訓練を行えば乗務できるようになりますからね。
<いち早くB737MAXの日本乗入れを再開した韓国のLCC、ジンエアー。エンジンのギザギザ(シェブロン)や主翼端のウイングレットなど、よく見比べないと違いはわかりづらい>
この操縦資格というのが大変で、パイロットは例えばB737とA320のように、大きさが似ていても原則として操縦方法が違う機体をまぜこぜに乗務することはできません。
新しい機種に乗るなら長ければ数ヶ月にもなる移行訓練を行わなければなりませんし、移行したら前の機種はやはり同時に乗務することはできなくなります。
その機体を隅々まで知り尽くした、文字通り「専門職」のパイロットによって空の安全は守られているわけです。
とはいえ、航空会社からすれば移行訓練にはコストも時間もかかるし、機種が増えたり新しくなったりすればパイロットも予備を含めて必要です。ですから、効率的に運営していくためにはB737シリーズのように
「B737の操縦資格があれば、新旧関係なく、大きさも関係なく、どのB737に乗れるよ!」
という共通性がとても大事になってきます。
B737シリーズの基本設計が1960年代初頭という化石みたいな話でも、”最新バージョン”のB737MAXが好調に売れているのにはそういう背景があるわけです。
閑話休題。
ともあれJALはB737MAXの導入を決め、2026年から21機を順次導入していくことになりました。
2023年3月現在、JAL本体は44機のB737-800(日本トランスオーシャン航空へのリース分含む)を保有しています。まずは導入年次が古かったり、大規模な検査の近い機体から置き換えていくことになるのでしょう。
<JALのB737-800のトップナンバー、JA301J。2006年導入ですでに18年目になるベテラン機。座席は2021年にリニューアルされていてきれい>
気になるのは残り半分。
記者会見でJALの社長は「残りの737-800の後継機は複数の候補から選定していくことになると思います」(乗りものニュース)と述べており、必ずしもB737 MAX 8で統一するわけではないことを匂わせています。引き続きB737MAXシリーズになるのか、はたまたA320neoが選ばれるのか、近い将来の続報が気になるところです。
とにもかくにもANA、スカイマーク、そして日本航空と、大手3社がそろってBoeing 737 MAXシリーズを導入することになりました。実際にお目見えするのはまだしばらく先のことですが、各社がどんなシート構成や配置でデビューするのか今から楽しみですね!
そうそう、飛行機の話で思い出しました。
もう1年以上前に当ブログでも話題に上げた、JALとクロネコヤマト(ヤマト運輸)が手を組んで貨物機を飛ばすという話。
発表当初はジェットスター・ジャパンが運航を受託することになっていましたが、同じJAL系のLCCであるスプリング・ジャパンによる運航が正式に決まりました。
導入する貨物機はA321ceoを改造したA321P2F。スプリング・ジャパンはBoeing 737-800を運航していて当然ながら操縦資格は全く別なので、かなり意表を突かれました。
<B737-800だけを6機運航しているスプリング・ジャパン>
JALとしては、
- スプリング・ジャパンに安定した収益基盤を持たせること
- A320の操縦資格(=A321も操縦できる)を持っていたパイロットが20人ほどいること→移行訓練が短くて済む
- 春秋航空(中国側の親会社)がA320を運航しており、移行訓練のサポートを受けられること
などがスプリング・ジャパンに運航させる理由になったそうです。
どのみちスプリング・ジャパンの機体の整備はJAL子会社の「JALエンジニアリング」が受託していますし、ジェットスター・ジャパンのA320シリーズの整備もJALエンジニアリングですから、スプリング・ジャパンとしてもパイロットさえ確保できればどうにかなるということなのでしょう。
もしかしたら将来的に日中間の国際貨物便に進出する気があるのかもしれませんね。友人曰く、対中国の国際貨物は死ぬほど面倒だそうですが…
予定通り行けば、スプリング・ジャパンが運航するヤマト運輸の貨物機は2024年4月就航。イメージイラストは出ていますが、実際にどんなデザインで現れるのか、こちらも楽しみです。
<P2Fのベースになる旅客型のA321ceo。JALではカタール航空で運航されていた機材を調達予定。写真はロイヤルヨルダン航空で全く関係ない>
--------------------
参考資料:
JALが新型旅客機を導入へ 「ボーイング737MAX」 2026年より運航開始へ 導入の決め手は? - 乗りものニュース
https://trafficnews.jp/post/125009
残りの737はA320neo?特集・JALが考える中小型機の更新計画 - Aviation Wire
https://www.aviationwire.jp/archives/273475
JALとヤマトのA321貨物機、なぜスプリング・ジャパンが飛ばすのか - Aviation Wire
https://www.aviationwire.jp/archives/265222