ただいま早朝6時半の札幌駅です。
旭川や函館へ向けて朝一番の特急列車が出ていく時間帯ですが、駅構内の売店やコンビニは7時開店というところばかりで朝ご飯を手に入れるのは少々難しい…
朝早くから出発する場合は、駅の周辺にあるコンビニなどで予め手に入れておいた方が良さそうです。
6:56発の特急「オホーツク1号」に入るキハ183系が苗穂の車両基地から入線してきました。
「北海道の特急列車といえばキハ183系」というぐらいありふれた車両だったのに、今や定期列車は「オホーツク(札幌~網走)」「大雪(旭川~網走)」の実質1列車だけ。
まもなくの引退を感じさせるかのように、2両だけ国鉄時代末期の赤・オレンジに塗り直された車両がいます。当初は2両セットで運用されていましたが、いつの間にか1両ずつに分けられているようです。
塗り直された方はきれいですが、元からのHETカラーは塗装が傷んでボロボロですね…
今日は6:48発の特急「おおぞら1号」からスタート。
今年3月のダイヤ改正で全ての「おおぞら」がキハ261系に統一されました。1998年に札幌~稚内間の特急「スーパー宗谷」(当時)用の14両が製造されただけの小規模な所帯だった当初には、キハ261系がここまで勢力を拡大するとは思ってもみませんでした。
現在主力となっている1000番台は2006年から製造が始まったグループで、改良を経つつ今も新製投入が続く息の長い車両です。
長丁場になることですしグリーン車を奮発しました。「北海道フリーパス」にはグリーン車指定席は含まれませんので、特急券を含めて全て自腹です。
15年も製造が続く間にバージョン違いが生まれており、中でもグリーン車の座席は2018年に革張りから布張りへと変更されています。今回の旅では両者の座り心地の違いも体感したいところ。
グリーン車は1+2の3席配置で、ゆったりとした大型シートが並ぶクオリティの高さはさすがJR北海道です。最近の車両らしくシートの肘掛け部分にはコンセントも設置されており、ケータイの充電を気にしなくて済むのは旅行者にはとてもありがたい。
朝早い列車だからか、グリーン車の乗客は南千歳を出ても10人いるかいないかといった程度。
今乗っている車両は2021年製造とかなり新しいものなので、グリーン車のシートは布張りです。包み込まれるような座り心地がとても気持ちいい…!
革張りのシートは高級感がありますし、清掃が楽という利点はあります。一方で本革ならば手入れは必要だし、合成皮革でもこすれて耳障りな音がしたり蒸れたりと一長一短。使い込んで磨耗すると滑りやすくなってきますから、長期間使う鉄道車両では結局布張りの方が向いているのかもしれません。
新得付近から急に車窓が霧で白くなってしまいました。
トマムの山中にある「星野リゾート トマム」は雲海が一望できるテラスをウリにしているぐらいですから、新得やトマムといったエリアはそもそも霧が発生しやすいエリアなのかも。
デッキに出てみます。
製造から1年程度しか経っていないこともあって、どこを見てもまだまだピカピカ。乗降ドアがJR北海道のコーポレートカラーの萌黄色になっているのも雰囲気を明るくします。
ドアの横には川崎重工業のロゴが。最近はグローバル戦略の一環なのか、メーカーを記した銘板も「川崎重工」とか「日立製作所」ではなく、「Kawasaki」「HITACHI」という世界に知られているブランド名が刻まれるようになりました。
普通車のデッキにもコンセントと小さなデスクがついていて、占有はできなくともいざという時には役立ちそうです。
帯広の手前、車窓の左側には見るからに線路の跡が併走しています。
帯広市の西隣、芽室町に所在する日本甜菜製糖 芽室製糖所から伸びていた専用線の廃線跡です。この線路を使ってテンサイ(サトウダイコン)から作られた砂糖が帯広貨物駅まで運ばれ、さらに全国へ配送されていました。
この線路は帯広市が保有しており、実際の列車の運行は日本甜菜製糖の子会社である十勝鉄道が行っていました。他に石油の輸送などもあったそうですが、最終的に残る甜菜糖の輸送のみでは採算が取れないことを理由に2012年に廃止されています。
定刻通り帯広に到着。道内で4番目に人口の多い市とだけあって、駅の周辺には大きなマンションが建ち並んで立派な街並みです。
先ほど出てきた十勝鉄道は帯広市内で乗客を運ぶ軽便鉄道をメインに運行しており、最盛期には65kmもの路線を持っていました。芽室からの砂糖の輸送は会社の歴史としては浅く、1970年に開始されたものです。
帯広市内の軽便鉄道と砂糖輸送の貨物列車が終了してからは、社名はそのままにテンサイや砂糖、石炭などのトラック輸送を担っています。
帯広からは国鉄の路線も南北に延びており、南へは「愛国から幸福へ」のきっぷで有名になった広尾線(1987年2月廃止)、北へはぬかびら温泉へ通じる士幌線(1987年3月廃止)が営業されていました。
今となっては根室本線が東西に貫くだけですが…
帯広の市街地を外れるとまた広々とした田園風景が広がります。この広大な農地はやはり北海道の象徴的な姿ですね。
テンサイが帯広で大規模に栽培されるのは冷涼な気候であるのも理由のようです。1年間に複数の農作物を育てる「輪作」ができるのも特徴で、テンサイを植えていない時期は小麦やジャガイモを育てているのだとか。農地の有効利用ですね。
池田に着きました。だだっ広い構内は過去にターミナル駅だったことを彷彿とさせます。
2006年まで「北海道ちほく高原鉄道」という第三セクター鉄道が池田から石北線の北見まで営業していました。池北線が国鉄から切り離された時に運営を引き継いだものですが、北海道の宿命というべきかやはり経営は厳しかったようです。
路線延長は140kmもあり、全線の所要時間は3時間以上…沿線人口も多いとはとても言えませんから、むしろ2006年までよくもったものだと感心します。
rikubetsu-railway.jimdofree.com
やがて景色に原野が広がるようになり、釧路が近づいてきたことがわかります。
10:57、札幌から4時間以上を要して終点の釧路に定刻通り到着しました。JR北海道の「最盛期」には遅くても3時間50分台で走破していたので、最高速度の制限と車体傾斜装置の使用停止で20分もの時間差が出ていることになります。
それでも都市間高速バス「スターライト釧路号」では5時間半はかかりますから、時間だけで見れば鉄道の優位性はまだ充分にあるといえますけどね。
>>つづく<<