JR北海道公式サイトによれば午後の「おおぞら」は動くというので、あきらめの悪いあさかぜは丘珠空港にいる間に弾丸旅行のチケットを取っておきました。14:15発の「おおぞら7号」で、この旅行の最大の目標であるキハ283系乗り納めに出かけます。
本当はホテルに戻って望遠レンズを置いてきたかったのですが、時間的にギリギリなのでそのまま持って行くことにしました。
グダグダながらもなんとか快速「エアポート」は運行している様子。北海道の玄関口、新千歳空港を結ぶ最重要ルートなので、運転ができるようになれば真っ先に動き始める列車です。
発車10分前、特急「おおぞら7号」が入線してきました。ここまでしてキハ283系に乗りに行くのは、あさかぜにとって思い出の列車だからです。
2010年9月に人生で初めて北海道に上陸した際、南千歳から釧路まで最初に乗った特急がまさにキハ283系の特急「スーパーおおぞら」でした。広い大地、たまにつながらなくなるケータイの電波、本州では見られない長い駅間距離、ぶつかるシカ…北海道の懐の深さを身を持って体験した列車であり車両です。
乗った回数はそんなに多くなかったとはいえ、そんな経験が背後にあると思い入れが芽生えてきます。
学生の時と違うのは、グリーン車に乗れる程度にはお金を手にしたことでしょう。快適性の高さで定評のあるキハ283系のグリーン車には最後に乗っておきたいところです。
午前中の「おおぞら」が動いていなかったせいかそこそこグリーン車の乗車率は高く、窓側の座席は全て指定済みのようです。需要減退で「おおぞら」も減車されているとはいえ、グリーン車はもっと空いていると思っていたのですが…
「おおぞら7号」の札幌発は14:15ですが、発車3分前に出発遅延の宣告。14:23発の快速「エアポート」を先に通し、11分遅れで札幌を発車しました。
上りの「おぞおら6号」を待ち合わせるために南千歳でさらに遅れが伸び、23分遅れで石勝線に踏み出していきます。
2018年まで夕張への線路が延びていた新夕張。現在の夕張に炭鉱都市で栄えた姿は見る影もなく、最盛期は11万人に及んだ人口も現在は1万人を切ってしまいました。
夕張への鉄路が消えた今は新夕張の中線の重要度は高くないようで、雪に埋もれたまま…
夕張支線廃止後の姿は2019年12月の旅行記で取り上げました。鉄道がバスに転換となり、かえって便利になったように感じられた夕張市の光景に触れています。
根室本線との合流地点、新得に着く頃にはすっかり日が暮れていました。ちょうど夕方5時になるぐらいですが、やはり東側にある北海道は日が暮れるのが早いですね。
他の車両からは数名が降りたもののグリーン車はほとんど人が減ることはなく、何ならグリーン車らしからぬ落ち着かない雰囲気となっています…
赤ちゃんがずっと泣いているのは仕方がないのです。家と違って揺れるし、うるさいし、トンネルに入れば耳もツンとするし。小さな子にとってはグリーン車だろうと何だろうと猛烈に苦痛な空間に違いありません。ですから、我々大人は赤ちゃんが泣いているのは甘んじて受け入れなければなりません。
問題は近くに座る高年男性です。
たまにイヤホンをつけることなく動画を見ていますし、客室で電話もするし、途中で知り合いまで乱入してくる始末。グリーン車どころか特急列車に乗る品格さえ持ち合わせていません。本当に不快…!
しかも仕事の経験上、こういう生き物は社会性がほぼ皆無なくせにプライドだけは宇宙に届くほど高いので、注意されれば逆ギレしてお門違いの正当性を主張し始めるのです。なのでトラブルを防ぐには放っておくしかないのですが…
何もかも耳障りだし目障り。
自分がこういうジジイにならないように気をつけなければいけません。
帯広には17分遅れで到着。少しだけ遅れを取り戻しました。例のマナーのないジジイは帯広で降りていったので一安心です。赤ちゃんも泣き疲れたのか静かになりました。新得以降はトンネルも急カーブも少なくなったので、不快感を招く要素が減ったのもあるかも。
ようやくグリーン車らしい静寂が戻って来ました。
また少し遅れを取り戻し、16分遅れで終点の釧路に到着しました。遅れやすい冬、しかもこの大雪の中でこれぐらいの遅延で済んだのは、かなり健闘したといっていいレベルです。
ササッと記録用の写真を撮り、すぐにホームへと戻ります。折り返しの遅れを最小限にすべく車内清掃が終わり次第すぐの乗車となるそうですから、うかうかしていると置いてけぼりを喰らってしまいます。車内で飲む飲み物を買う暇すらありません…
19:05、6分遅れで「おおぞら12号」は釧路を発車しました。目を見張るほどの折り返し準備の早さです。意外と札幌には定刻の22:58とは言わずとも、23時過ぎには着いてしまうのではないか。この時はそう思っていました。この時は…
帯広にも6分遅れのまま到着。客扱いを済ませてさっさと発車します。
逆側のホームは…とっくに発車しているはずの釧路ゆき「おおぞら9号」がまだ来ていないようです。
JR北海道の運行情報によれば9号は約1時間25分遅れだそう。本来なら12号ととっくに行き違っているはずの列車ですから、先行きに少しばかり不安がよぎります。
帰りは指定席。窓側の席がおおよそ埋まる程度の乗車率で、ところどころ通路側も座っています。最前列で目の前が壁になるあさかぜの隣は誰も来ないようです。
グリーン席ほどではないとはいえ座り心地はかなり良く、乗車時間が長くなりがちな特急列車にはふさわしいシートです。これでAC電源までつけば最強ですが、発電容量なんかを考えるとさすがに無理でしょうかね…
ここまで割と順調だった「おおぞら12号」に暗雲が漂い始めました。21時過ぎにやっとこさ新得で「おおぞら9号」と行き違った時点でお察しではありますが、やはり道央の降雪がひどいことになっているようです。
新得を出ると線路際の雪の高さが一段と高くなりました。
21:50頃、占冠でまた対向列車をやり過ごすのかと思ったらついに足止め。放送によれば千歳線内でポイントの不転換が起きているとのことです。Twitterによると北広島駅が現場だそうで、とにもかくにも復旧が見込めないと占冠から動けません。
深々と降り続ける雪を眺めて25分、やっと動き始めました。次はどこまで進むのか…
22:30、駅でもない場所に止まりました。Googleマップで確認すると楓信号場に停車しているようです。今度は30kmほど先にある追分駅でポイント不転換が発生しているとのことで、一応は30分後に発車する見込みだそうです。
この楓信号場は2004年まで乗客が利用できるちゃんとした駅でした。とはいえ楓駅時代の末期は1日1往復が停車するだけで、日曜日に至ってはその1往復さえ通過していたような有様。駅舎は現存しないもののホームは残されており、保守車両の留置線として使われています。
往路は通過列車の車内からなんとか信号場の光景をカメラに収めようとしていましたが、まさかこんな形で止まることになるとは…
止まってばかりでエンジンが暖まりきらないからか、暖房が弱まって室温が下がってきています。周りを見渡すと上着をかぶって寝ている人が多く、あさかぜも同じように眠ってやり過ごそうとしたのですが、こういうときに限って眠れず…
追分の不転換が解消されたのか、「とかち7号」帯広ゆき(約2時間35分遅れ)、「おおぞら11号」釧路ゆき(約1時間45分遅れ)とここで行き違い。
楓に止まってから1時間10分後の23:40、やっと次の駅に向かって動き出します。今度はおよそ6km先の新夕張まで動くとのこと。
23:45、新夕張に到着。通過駅なのでドアは開きません。心なしか昼間に通ったときよりも中線の雪が増えているように見えます。再び追分でポイント不転換ということで、解消するまでしばらく停車とのこと。
ポイントには凍り付かないよう電熱線を張り巡らせたりして対策はしているのですが、今週は道民でさえうろたえるほどの大雪ゆえ、融雪能力を超えてしまっているようです。この天気の中、復旧のために尽力してくれる人たちには頭が上がりません。
車内の寒さは上着があるからいいとしても、問題は飲み物です。こんなに時間がかかるとは思ってもみなかったので、ペットボトルのお茶の残量がもう1/3ぐらいしかありません。駅舎の自販機まで買いに行ければよかったのですが、いつ動くかわからない状況では外に出るのは難しいですからねぇ…ましてや停車駅でもないのに。わかってはいるものの苦しい。
20分後に発車。いよいよ日付をまたいでしまいました。
24:30、新夕張からおよそ25分で問題の追分へ。ここで南千歳付近にいる帯広ゆきの「とかち9号」と行き違うため、しばらく停車します。やはりドアは開きません。向こうの遅れは2時間45分…これからまだまだ帯広まで走ると思うと気が遠くなりそう。
追分と南千歳の間には西早来・駒里と2カ所の信号場がありますが、むやみにポイントを動かさないようにするためか「とかち9号」が追分まで来るのを待つようです。無人の信号場でポイントがトラブったら大変ですからね。
一方こちらの「おおぞら12号」も本来は22:58に札幌に到着するはずの列車なので、すでに2時間以上の遅れが確定。追分の停車中に特急料金を払い戻す旨の放送が謝罪とともに流れました。車掌さんも大変です…
隣のホームには長い時間止まったままであろう貨物列車の姿もあります。このままいくと朝まで動けないことになりそうですが…
さっきから暇つぶしに音楽を聴くか動画を見ようとしていたのですが、まさか長時間列車に閉じ込められるとは思ってもみなかったので、Bluetoothイヤホンはホテルで充電しっぱなしにしてしまいました。
カバンの奥底から出てきたイヤホンは断線しているようで、音がガビガビ。もう追分まで出てきたら大丈夫なはずだと信じて、無駄あがきせず待つことにしましょう。
追分の発車は24:42、約2時間半遅れ。
千歳線への合流地点、南千歳はすぐに発車。ポイントのトラブルがあったらしい北広島もスムーズに通過して、25:18、新札幌に滑り込みます。
新札幌のホームには分厚く雪が積もっていました。
この時間になっても札幌駅に到着する列車がいくつもいるようで、2駅手前の白石で再び足止めを喰らっています。この雪で到着できるホームも限られているでしょうから、順番が回ってくるのをひたすら待つしかない…
終点が目前に迫っているだけに、この動けない15分が数字以上に長く感じられます。
やっと、本当にやっと、終点の札幌に到着しました…!
時刻は25:50、ほぼほぼ3時間の遅れです。釧路からの所要時間は6時間45分という、出発前には想像もしない長丁場になりました。
ただ座っているだけながらかなり疲れましたが、忘れようもないキハ283系への記憶が残ったともいえます。
思い返してみれば、2010年9月に初めてキハ283系に乗った帰りも、池田付近でシカをはねて途中で止まるというアクシデントがありました。あの時は11分の遅れを南千歳までに取り返すという韋駄天の走りを見せつけた、という記憶もよみがえってきます。
他にもいろいろなことが思い出されて、むしろ今日乗って良かったと思うぐらいです。
まもなく午前2時になろうという時間ながら、この「おおぞら12号」の接続を受ける小樽ゆきの普通列車が待っていました。定刻は22:35と出ていますから、発車時点で3時間15分以上の遅れという悪夢です。
今から小樽へ行くとなると、もう到着は午前2時半を余裕で回るのでは…
地下鉄は当然終わっていますし、いくらすすきのとはいえ再び雪が降り始めた状況で歩く気力はありません。なんとか捕まったタクシーに乗ってホテルまで戻ってきました。
疲れた…
でもお腹が空いた…
ホテルから歩いてすぐの山岡家で遅い夕食。24時間営業で良かった!
こんな時間になっても結構お客さんが入っているんですねぇ…
シャワーを浴びて、荷物をまとめて、ビールをあおって就寝。
明日は何もせず、まっすぐ新千歳空港に向かうことにしましょう。