あさかぜみずほの趣味活動記録簿

旅行記や主に飛行機の写真をひたすら載せ続ける、趣味のブログです。たまに日記らしき投稿もあり…?

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陸海空四千キロを制覇せよ - 2日目【中編】(2021年10月4日)

※本文中の移動距離は「Googleタイムライン」機能を基にしています。実際の距離や営業キロとは誤差があります。

 

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8:16、1時間半以上にわたって静寂を保っていた備後落合に三次からの一番列車が到着しました。降りてきたのは2人だけで、うち1人はさっき新見から一緒に乗ってきたお兄さんです。備後庄原あたりで折り返してきたのでしょうか。
もう1人も旅行者の雰囲気でしたが、そのまま駅を出てどこかへ歩き去って行きました。

谷にある駅舎にもようやく日の光が当たるようになりました。太陽光でホームの屋根が温められ、昨晩についた夜露が蒸発するという幻想的な風景を見せています。

 

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まもなく語り部をしてくれるおじいさんがやって来ました。SLの運転士を勤めておられた方で、この備後落合駅を拠点に芸備線木次線に乗務されていた時期もあったのだとか。
駅に貼ってあった新聞の取材記事を見る限りまもなく80歳になろうかというお年ですが、お兄さんとあさかぜの2人のために事細かに力強く備後落合駅の栄華について語ってくださいました。

 

trafficnews.jp

 

 

 

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今でこそ無人駅で夜間には周囲の明かりなんてないほとんどないところですが、最盛期には116人もの人たちが働いていた大きなターミナル駅だったそうです。早朝に見ていたコンクリートの遺構が石炭庫だったことがわかったのもこの時です。

他にも三八豪雪昭和38年1月豪雪)」の時にあった出来事のお話など、インターネットでは知り得ない貴重なお話ばかりを伺うことができました。ある程度記録は残してありますが、ここで書いてしまっては訪れる楽しみがなくなってしまいます。
ぜひとも新見からの一番列車で静かな備後落合駅を堪能し、貴重なお話を聞く機会をもってもらいたいと思います。

昨今芸備線が注目される機会が増え、新聞やテレビの取材もずいぶんと増えたそうです。ただメディアの取材というのは非常に心身ともにとても疲れるものだそうで、最近は取材の依頼があっても断っているのだとか。それでも備後落合を訪れる人には魅力を知ってもらいたくてボランティアの語り部を続けていらっしゃるとのことで、愛情と熱意にただただ感服するばかりです。

 

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駅舎のすぐ隣にある小屋には最盛期を再現した鉄道模型ジオラマがあります。備後落合を愛する有志の人たちが作ったものだそうで、残された図面や写真を頼りに当時の配線をそのまま再現しているとのこと。
手前が三次・木次側、奥が新見側となっています。駅で働く職員や家族の人たちが暮らす宿舎も駅の周囲にはあって、それはそれは賑やかだったとか。

 

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興味深い話を伺っているうちに出発の時刻が近づいてきました。備後落合の到着から2時間50分、すっかり日が昇って温かくなっています。今日も暑くなりそうです。

これから乗る木次線の車両は定番のキハ120系。トップナンバーが待っていましたが、一目見てリニューアル車ではないことがわかります。


■ のりもの6:JR西日本・キハ120系(備後落合→木次:49km

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9:20、おじいさんに大きく手を振られながら木次ゆきは発車しました。乗客は3人、Twitterで見かけた青春18きっぷシーズンの様子と比べたらすさまじいまでの落差です。空いていて快適なのは確かですが。

 

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駅を出てすぐの急な坂を下り、2時間ほど前に歩いた国道183号線を越えるとまもなくトンネルに突入します。

乗客数から察せられるとおり、木次線も利用者が極小といっていい路線です。平均通過人員で見れば芸備線の最奥区間に比べればマシ(東城~備後落合:9)とはいえ、出雲横田~備後落合間は18とドングリの背比べといったところ。

 

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三井野原(みいのはら)を出てまもなく、車窓左側には巨大な道路橋が見えてきました。「奥出雲おろちループ」と呼ばれる国道314号線の名所で、急な斜面をクリアするため1992年に開業した道路です。
先ほどのおじいさんの話によれば、このループ橋が完成するまでは狭くて急な坂を上り下りしていて、道が凍る冬場になると事故が絶えなかったのだそうです。

木次線から見える名所の一つでもありますが、この橋ができて道路がより便利になったからこそ列車に人が乗らないという現象にも至っているわけです。
比較的坂道に強い道路でさえ二重のループ橋を使わねば安全に通行できないのですから、坂に弱い鉄道ではさらに苦しいものがあります。

 

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木次線の最大の見所といえる二段スイッチバックに到達しました。右側に見えるのはこれから向かう出雲坂根駅に延びる線路です。
線路は合流した先で行き止まりになっており、運転士が反対側の運転台に移動してきて今までとは逆の方向に発車。右側の線路へ入って出雲坂根へと坂道を降りていくのです。

 

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出雲坂根に到着しました。再びここで運転士は先ほどまで座っていた運転席に戻って、方向転換の手順を終えてからドアを開けます。出雲坂根では3分の停車時間がありますが、この一連の流れがあるために実際にドアが開いている時間は2分ほどです。

JRでは唯一となる二段スイッチバック区間で、鉄道が急な斜面を乗り越えるのにどれほど苦労しているかがよくわかる場所です。クルマならせいぜいループ橋で降りてくれば済むものを、鉄道はわざわざZ型に行ったり来たりしなければならないのです。
今でこそ軽量でパワーのあるディーゼルカーで簡単に上り下りができるようになりましたが、非力な蒸気機関車では進む向きを変えるのも大きな手間でした。可能な限り距離を短くするため当時で許された最大の傾斜を使っていましたが、それでも道路の何倍も遠回りをしなければなりません。

 

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2分の停車時間では寄ることができませんでしたが、出雲坂根の駅前には「延命水」という湧き水があります。「100歳を超えたタヌキが愛飲していた」なんていう伝説に基づいたネーミングで、駅構内に加えて写真のように道路の反対側にも水くみ場が設置されています。
長寿延命のご利益があるとされる人気の湧き水だそうで、観光列車「奥出雲おろち号」では方向転換の時間が長いのでゆっくりと水を汲みにいけるそうです。

 

okuizumo.org

 

 

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出雲横田です。木次線内では3番目に乗降の多い駅で、一部の列車はここで木次・宍道方面へと折り返していきます。
木次線の平均通過人員はここを基準に分かれており、宍道出雲横田間は198となっています。全線を通しての平均通貨人員は133、比較に上げられている1987年度は663だったので1日の利用者は1/5程度まで減っていることになります。

なおこの駅では1人が降りただけで乗車はありませんでした。

 

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亀嵩駅に停車しました。
この駅舎内にはそば屋「扇屋そば」が営業しており、1時間半前までに電話で予約しておけば列車の到着に合わせてご主人がホームまで持ってきてくれます。昨日三次で電話をしたのはこれの予約で、テイクアウトの「そば弁当」は750円です。
わずかな停車時間でのやりとりですから、おつりのないように事前に準備しておきましょう。

ロングシートの車内で開けるのはちょっと風情に欠けるので、あとで食べることにします。

 

www.kamedakesoba.jp

 

 

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途中で1人が降りていよいよ車内はあさかぜ一人となってしまいました。

芸備線木次線の魅力を知って欲しい、人が集まって存続につなげて欲しい。自分たちが必死の思いで支え上げてきた鉄路をみすみす廃止にするわけにはいかない」
備後落合の語り部のおじいさんの言葉からはそんな強い思いが痛いほど伝わってきました。しかし現実の厳しさは「2020年度平均通過人員」という誰の目にも分かる数字となって表れていますし、その現実を昨日からずっと目の当たりにしています。

なおJR北海道ではバス転換が望ましい路線の基準の1つとして「平均通過人員が200未満」というのを挙げています。その基準と照らし合わせれば、芸備線木次線がいかに厳しい状況であるかがよくわかるでしょう。

 

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備後落合から2時間10分、終点の木次に到着しました。同じ車両がこの先の宍道まで走りますが、運行上は一旦ここで区切りをつけます。
駅前には立派なショッピングセンターがあるのでお酒やつまみを買いたいところですが、まずはその前に先ほど亀嵩で受け取ってきたおそばを食べる場所を探します。

 

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駅を出てすぐに斐伊川の大きな堤防があります。堤防を少し歩いて行くとベンチがあったので、きれいな青空の下で少し早めのお昼ご飯としましょう。

…というかだいぶ暑いんですよね。
歩いていると汗ばむぐらいの陽気。荷物を入れたキャリーケースを引っ張っているのでなおさらです。

 

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適当なベンチに腰掛けて早速おそばを開けてみましょう。
中身はいたってシンプル。海苔、かつお節、ネギの載ったおそばと、めんつゆ、左上は温泉卵ととろろです。出雲そばはそばつゆをぶっかけて食べるそうなので、作法に従いましょう。

 

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少し太めのそばは香りとほどよいコシがあってとてもおいしい。暑いのでなおさらそばのツルツルした清涼感がたまりません。うまいうまいとあっという間に食べ終わってしまいました…
これなら大盛りのそば弁当(1,000円)にしておけばよかったです。

 

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空き容器をカバンに入れて駅前まで戻って来ました。駅前には「フーズマーケット ホック 雲南店」があるので、このあとの列車内で必要なエネルギー源を確保しに行きます。

…さすがに唐揚げはやめておきましょう。電車の中で開けたらひんしゅくものですからね。

 

hok.saeki-selvahd.jp

 

 

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入ってすぐのところにあるフードコートはただの休憩所となっていました。過去には店舗があったんだろうなぁという雰囲気ですが、なくなったのはここ最近の話ではなさそうです。


■ のりもの7:JR西日本・キハ120系(木次→宍道21km

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50分間の小休止を挟んで、備後落合から乗ってきた車両は改めて宍道ゆきとなって12:16に木次を発車します。木次を出た時点で乗客は全部で3人となかなかの閑散っぷり。
木次は大きな街ですが、やはり自動車の方がメインになってしまうのでしょうかね。宍道方面への列車は1時間~1時間半ごとに1本あって、そこまで不便という印象は受けませんでしたが。

 

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途中の出雲大東から高校生が十数人乗り込んできて車内がようやく賑やかになりました。そばに高校があるからか、木次線では木次に次いで利用者の多い駅です。

この時間で学校が終わりということは試験期間だったのでしょうか?もう高校時代なんて15年前のことなので、いつが試験期間だとか何だとか忘れてしまいました。そもそもあさかぜの高校は2期制でしたし。

高校時代が15年も前…だと…?

 

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12:50、終点の宍道に到着しました。
ちなみに宍道駅から宍道湖へはちょっと歩くので、駅から見えないようです。

8分の接続で出雲市ゆきの特急「やくも」に接続しますが、時間に余裕があるので後続の普通列車を待ちます。気がつけば定期列車で国鉄型の特急電車を使っているのはこの「やくも」を残すだけとなってしまいました。貴重な存在ではありますが、置換えの話が聞こえてこないからか注目度はさっぱりありませんね。


■ のりもの9:JR西日本115系宍道出雲市16km

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あとから来た普通列車はそこそこ人が乗っていました。やはり帰宅する高校生が多い印象です。ドア横のロングシートに腰掛けて18分の小旅行です。

 

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次の列車に乗り継ぐまでに1時間以上の余裕があります。おそばを食べてから1時間半ぐらいしか経っていませんが2回目のお昼ご飯を食べましょう。

出雲市には何度も来ていますが、まだラーメンを食べたことがありません。何年も前にそばを食べたことがあった、駅構内の「出雲の國 麺家」でスサノオラーメン(880円)とやらを注文してみることにします。

 

www.media-network.tv

 

 

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みそベースのパンチが効いたスパイシーなスープがとてもおいしい。他のラーメンメニューよりスープを多くして提供しているとのことで、確かに納得の味付けです。ちょっと固めな縮れ麺がスープと絡んでどんどん進みます。
スープに浮いている青色の具材はあご=トビウオのかまぼこスサノオノミコトが持っていた剣をイメージしているのだそうです。

店頭に飾ってあるイメージ写真とはちょっと、というかだいぶ違いますが、味はおいしいのでまぁいいか。
出雲縁結び空港にもこのお店は出店しているようなので、旅の記念に1杯食べてみてはいかがでしょう。

 

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そういえば「サンライズ出雲」の弾丸旅行をするときにお弁当を買っていたコンビニ「ポプラ 出雲駅前店」はきれいさっぱりなくなっていました
車内に温かいお弁当をキープできるというのは大きな利点でしたが、そのポプ弁を味わうことはもうできなくなってしまったのが残念です。

 

 

>>つづく<<