あさかぜみずほの趣味活動記録簿

旅行記や主に飛行機の写真をひたすら載せ続ける、趣味のブログです。たまに日記らしき投稿もあり…?

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クロネコヤマト、航空貨物に(再)参入!

日本の航空業界に久しぶりの大きなニュースです。
宅配大手のヤマト運輸クロネコヤマトを傘下に持つヤマトホールディングスが2024年4月に航空貨物事業へと参入することになりました。

 

www.aviationwire.jp

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現在でも床下の貨物室「ベリースペース」を使った輸送は行っているものの、24年4月からは自前の貨物専用機を使うというのが今までとの大きな違いです。

ヒコーキオタクとして興味深い点を4つピックアップしてみたので、項目別に触れてみたいと思います。

 

● 使用機材 - Airbus A321P2F(国内初)
● 運航形態 - JALグループが運航
● 運航路線 - 昼と夜とで使い分け
● ジンクス - 国内向けの貨物専業エアラインはどこも…

 


● 使用機材
日本で初めてエアバスA321P2Fを導入します。P2Fとは「Passenger - to - Freighter」の略で、日本語に直せば貨物転用型のこと。旅客機として運航していたA321を貨物機として改修し、全部で28tの荷物を搭載できる貨物機へと改修するプログラムです。

ヤマトHDではすでにアイルランドにある三井住友銀行系のリース会社「SMBC Aviation Capital Limited」から3機分のリース契約を結んでいるとのこと。
メインデッキにはAAY型コンテナを14台床下のロワーデッキにAKHコンテナを10台搭載でき、1機当たりの輸送力は現行の10tトラック5~6台分になるとのこと。

 

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<AAYコンテナとAKHコンテナの雑なイラスト(あさかぜみずほ作成)。角が落とされているのは筒状の機体に合わせるため>

 

国内では主に中国の航空会社がBoeing 737-800の貨物転用型である737-800BCFで運航しているのをよく見かけます。B737ではロワーデッキに貨物コンテナを搭載できず荷役の効率に劣りますし、A321の方が積載量が多いというのも理由でしょう。
(もちろんB737のようなバラ積みにも、専用の積卸機材を必要としないという利点があります)

 

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<日本では中国系の航空会社でよく見かけるB737-800BCF。機体の使い勝手は良いが床下にコンテナを積めない弱点がある>


● 運航形態
ヤマトブランドで運航することになってはいますが、実際の運航は日本航空JAL)グループへと委託するのも注目点です。自社でパイロットを養成するのは大変ですし、お役所からの認可も相当な時間と手間がかかります。
そこでヤマトHDは機材の調達は行うものの、リースしてきたA321P2Fの3機は全てJALグループのLCCジェットスター・ジャパン(JJP)」へとサブリースし、実際の運航はJJPが行います

JJPなら操縦資格が共通のA320ceoを運航していますから、手っ取り早くて安心というわけで、サブリースということは整備もJJPが担うものと思われます。JJPとしても委託料が収入となるわけですから良い話です。
また貨物スペースは利用する事業者へJALグループが販売することになっており、ヤマトのみならずJALのネットワークに組み込めるのも強みでしょう。

 

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<実際の運航を担うジェットスター・ジャパン。同社はA320ceoを運航している他、A321LRの導入も控える>


● 運航路線
路線は首都圏の羽田・成田を拠点に札幌(新千歳)・北九州・那覇の合計5空港へ展開する予定。日中の便を成田発着、夜間の便を羽田発着とするのは、おそらく運用時間に制限のある成田と24時間運用の羽田という特性を使い分けるからでしょう。

成田は航空貨物の国内最大となる拠点ですし、羽田の目の前にはヤマト運輸最大の物流拠点「羽田クロノゲート」がありますから、どちらの空港にも展開することで確実に需要を取っていくスタイルです。

新千歳・那覇・北九州の3空港はいずれも24時間運用となっているので、運用上のネックとなり得る成田の特性をうまくカバーし生かしていける構成になるようです。
多頻度運航のノウハウがあるJJPなら、1路線で1日あたり複数便を運航することもできるでしょう。


● ジンクス
ヤマトHDも強く意識しているでしょうけれども、国内の貨物専業エアラインにはギャラクシーエアラインズという派手な失敗例があります。

佐川急便グループが2005年に設立した航空会社で、三井物産日本航空も出資していました。A300F-600Rを2機導入して、当初の予定から3ヶ月近く遅れた2006年10月31日に運航を開始。ところが中古旅客機を改修した初号機はボロ機材で故障が多発…
修理費に加えて燃料の高騰もあって大赤字を垂れ流すこととなり、2008年9月末には運航を取りやめて、翌年には解散してしまいました。

 

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<エア・ホンコンが運航しているA300F-600R。UPSでは延命改修まで施されるほどの名機だが、佐川がつかまされたのは…>

 

またヤマト自身JALと手を組んで1991年に設立した日本ユニバーサル航空」も1年ほどで運航を終了したという失敗の歴史を持っています。
これはバブルという時代の不幸な流れがあったのも事実ですが、失敗は失敗です。

佐川、ヤマトとは関連はないものの、小型プロペラ機ビーチクラフト1900で貨物輸送を行おうとしたトヨタ系のオレンジカーゴという会社もありました。2002年に設立、2003年10月に就航を果たしたものの、機長不足による業績悪化で半年足らずで運航を停止して破産しました。

…といった具合に、国内で貨物専業として立ち上がった航空会社は、三者三様の理由があるとはいえ運航停止のちに解散という同じ結末に至っています。
ジンクスともいえる過去の歴史を跳ね返して成長していけるか、という点でも注目の航空会社といえます。

 

まぁ当時とは情勢が大きく違っていますし、過去の例を学んで失敗のないように準備をしているはずです。運航開始と成長が楽しみですね!