朝ごはんは一日の活力の源といいます。バイキング形式で好きなものを選べるのは嬉しい。由緒正しいホテルや旅館で出される御膳スタイルも風情があっていいですが、一人で行くならバイキングスタイルがやっぱり好きですね。
朝食を済ませたら外湯めぐりに出発します。
城崎温泉のホテルや旅館では施設の浴場に加えて、温泉街にある「外湯」と呼ばれる公衆浴場にも入れるパスがセットでついてきます。チェックイン後から翌日の14時まで使える優れもので、それぞれの施設の入口にあるリーダーにQRコードをかざせばいいだけ。
せっかく歴史ある城崎を発つまでだいぶ余裕があるわけですし、いくつか外湯を巡ってみましょう。
ちなみに外湯めぐりの「正装」は浴衣に下駄。下駄の音を響かせながら街並みをゆっくり眺めて歩くのが正統派のスタイルなのだそうです。せっかちなあさかぜは小股で歩く上品さを持ち合わせないので、大股でズンズン歩けるジャージとTシャツという風情もなにもない出で立ちです。
城崎温泉のメインの通りに出てきました。山陰本線の鉄橋の向こう側にきれいに整備された道と川が見えます。多くの外湯はこの大谿(おおたに)川沿いに並んでおり、すべてを訪れたとしても徒歩片道20分以内に収まっているのが特徴。
7つの外湯は営業時間や休業日がずらされており、2〜3時間で7つすべてを回るのはできません。夕方早めにチェックインして、初日と翌日で3つ〜4つずつ回っていくのが良さそうです。
大谿川の護岸に使われているのはすぐ近くで採石された玄武岩です。城崎温泉駅からクルマで15分ほどのところには玄武洞という過去に玄武岩の採石場だった場所が残され公園として整備されている他、そばには「玄武洞ミュージアム」という博物館も置かれています。
まずは最も下流側にある地蔵湯(7:00〜23:00、金曜定休)から。屋内の浴槽1つだけですが、ひょうたん型の浴槽自体はだいぶ大きいので人数は入れそうです。お湯はそれなりに熱いので、足先からじんわりと慣らしていったほうが良いでしょう。
壁際には玄武洞をイメージして六角形の玄武岩が地面から生えています。今回は玄武洞ミュージアムを訪れている時間がありませんでしたが、とりあえず間近で玄武岩を観察することはできました。
地蔵湯を出て上流方向へ歩いていきます。
正面に見えるコンクリート製の橋は「太鼓橋」と呼ばれ、1925年の北丹大震災のあとにかけられた和風の橋です。全部で5つの太鼓橋がかけられており、国指定の登録有形文化財に登録されているとのこと。
いかにも歴史のありそうな佇まいの柳湯は15:00〜23:00の営業(木曜定休)のため、まだ朝9時現在ではオープンしていません。子授けの湯という別名がついています。
昨晩泊まった大江戸温泉は城崎の温泉街からはだいぶ離れており、歩いて10分近くかかります。大谿川沿いにはクラシックな雰囲気のいかにも温泉宿という建物がいくつも並んでいますが、以前からなのかコロナウイルスのせいなのかどこも営業している様子がなく残念です。
こんな湯宿の窓から城崎温泉の風情ある景色を眺められたなら、志賀直哉でなくとも小説でもしたためてみるかという気になってしまいます。
2つ目の外湯は一の湯(7:00〜23:00、水曜定休)です。江戸中期にオープンした際は「新湯(あらゆ)」と呼ばれていたそうですが、江戸時代の名医が著書の中で天下一と述べたことから「一の湯」と改められたのだとか。
見ての通り大きな施設で、ここの売りは洞窟風呂なるもの。露天風呂として石の壁をくり抜いて作られた浴槽があり、洞窟と呼ぶにはちょっと大げさながらも不思議な感覚が味わえます。ついでに内風呂よりもぬるめなので入りやすいです。
川沿いから道を1本入っても昭和初期といった雰囲気は続いています。ご多分に漏れず城崎も景観条例があるようで、郵便局やコンビニは目立たないように地味な色合いになっていました。
ここは四所(ししょ)神社、城崎温泉の守護神と呼ばれている神社で起源は708年といわれています。温泉の守護神1柱と水の守護神3柱を祀っており、毎年4月23日には温泉祭が、毎年10月15日には先ほどの一の湯の前でだんじり祭が行われるそうです。
このときは見落としてしまいましたが本殿の裏には名水「延命水」があるのだとか。
四所神社の隣にまるで神社の一部かのような雰囲気で建っているのが御所の湯(7:00〜23:00、木曜定休)、美人の湯の二つ名があります。
2つある石造りの湯船はともに露天風呂で、特に外側の浴槽の一部は立って入れる「立湯」となっているほど深い。さらに奥には山を利用した滝まで流れていて観光客受けをしそうな作りです。実際他の2つの外湯よりも多くの人で賑わっており、城崎温泉街の中心に位置することもあってか人気の高さが伺えます。
外湯めぐりはこれにておしまい。短時間で7つのうち3つを回れたので割と上出来だったのではないでしょうか。
川に沿ってホテルへと戻ります。入口付近に比べると上流側はあまり整備されていない様子がありますが、むしろ草や苔が生えたりしている方がより雰囲気を掻き立てる気がしますね。
ハイペースで歩いてくると少し汗ばんでしまうぐらいの気温です。温泉に入って体をきれいにした意味がなくなってしまいそう…
部屋からの景観はご覧の通り。大谿川が合流する本流、円山川がきれいな青色をして流れています。左側の方向へ少し行けば日本海、右側へ遡ればさっきも触れた玄武洞があります。
当初の予定では外湯めぐりではなく玄武洞ミュージアムを訪れるつもりだったのですが、2時間程度の駆け足で見てこなければなりませんし、そもそも博物館へアクセスするための公共交通機関がないので行きづらいというのもあります。せっかく世界でも貴重な地形だというのにもったいない。連絡すればJRの玄武洞駅から渡し船が出るそうですが、列車本数も1時間〜1時間半に1本程度と利便性はいまひとつ…
今度時間があるときにタクシーで行ってじっくりと見学するのが良さそうです。
>>後編へ続く<<