時刻は6時半過ぎ、順調に「サンライズ出雲」は東京へ向けて走り続けています。昨晩は「サンライズ瀬戸」を連結する岡山を出るなり23時前には眠ってしまったので、今朝は珍しく眠くありません。
数日前まで東京に着いたらそのまま帰宅しようと思っていましたが、何の気なしに「えきねっと」で空席を見ていたら185系の特急「踊り子」がガラガラではありませんか。引退の寸前だというのに。
東京や熱海での撮影マナーの悪さがしばしば話題になっていたので、「さぞかし列車の方も混んでいるだろう」と思っていたのですが…
というわけで数日前に急遽旅程を追加し、185系のお名残乗車、イヤな言い方をすれば「葬式」をしにいくことにしました。
定刻通りに東京へ戻ったものの、お目当ての特急「踊り子5号」はまだ2時間近くも待たなければなりません。特にこれといって東京駅でやることもないので、朝ご飯でも食べにいきましょうか。
285系の大柄な車体に沿って歩きながら朝食を何にするか考えます。
さすがに2日連続で二郎系の「雷」に行くのは不健康ですし、朝8時にならないとそもそも開店しません。JR系の立ち食いそば屋「いろり庵きらく」は数日前に別の場所でいったばかり。
…そばといえば、秋葉原の駅前に小田急系の「箱根そば」がありましたね。そこには久しく行ってないことですし、時間もたっぷりありますから足を伸ばしてみましょう。
秋葉原の箱そばは昭和通り改札口を出てすぐ右側、東京メトロ日比谷線への入口のすぐ裏にあります。
ちょうど世の中のサラリーマンの皆々様が出勤するタイミングなので店の中は混み合っていますが、回転が速いのですぐに入れます。むしろ朝からのそのそと立ち食いそばなんか食べていたら邪魔者でしょう。
11時までの「朝そば」は340円。半分サイズのかき揚げと生卵、ワカメが入ってこのお値段はお得です。しかもいろり庵きらくよりそばの量が多い!
さっと出されてさっと食べてさっと出る、日本らしいファーストフードです。朝からおいしくお腹いっぱいになれました。
わざわざ秋葉原を往復したものの、さして暇つぶしにはなりませんでした…
東京駅に戻って銀の鈴広場で時間を潰したのち、発車20分前ぐらいにホームへ上がってきました。
ホーム上にはカメラを首から提げた男たちがウロウロして異様な光景です。みんなわざわざ185系を見に来ているのだと考えると暇な人たちです。平日だというのに。
入線時間になるとホーム上は撮影者であふれんばかりなりました。数日前まではろくに席が埋まっていなかったのに、実はこれだけの人が電車に乗ってくるつもりなのでしょうか…?
だとしたら車内はマニアで阿鼻叫喚になりそう…
と心配してみたものの、始発の東京を出た時点で3割ぐらいしか乗客はいなさそう。なんとも拍子抜けですが、車内が静かになるので空いているに越したことはありません。結局駅に集まって騒いでいる人たちは写真を撮るのが目当てなだけで、乗るだけの時間やお金はないんでしょうね。
懐かしいモーター音を響かせながらさっき通ってきた東海道線の線路をまた西へ進みます。
川崎、横浜と停車しますが大して乗客は増えませんでした。あさかぜも含め乗客のうち半分はマニアっぽい様子で、カメラを片手に車内の様子を写真に収めている人が目立ちます。
あさかぜが最後に185系に乗ったのは大学2年生ぐらい、東京から伊東へ向かう普通列車でした。10年前から車内の様子は変わっていませんし、改めて特急料金を払って乗ってみると「よく今時こんな車両で特急料金を取ってるもんだ…」と悪い意味で感心してしまいます。
シートの背ずりは低く、ご覧の通り頭を覆いません。身長の低いあさかぜですらはみ出すほどです。回転式に改められたとはいえシートは古いですし、乗り心地は国鉄時代らしいゴリゴリした感じ、モーター音も車内によく響きます。あさかぜは録音目当てで乗っているので音が聞こえるのはありがたいのですが、普通の人は特急料金を払うんだったらもっと静かな環境を所望するはずですよね。
正直言って昨日乗っていた381系「やくも」の方がはるかに快適で、もはや185系では比較の対象になり得ないといってもいいレベルです。この車両が地方のローカル路線ならまだしも、温泉地では知名度トップクラスの熱海や伊豆へ向かうメインルートの主力というのはちょっと…
あんまりいうと自称185系愛好家から非難の的にされそうなのでやめておきましょう。
熱海から伊東線に入り、やがて車窓には伊東市街が見えてきました。楽しかった一昨年の職場旅行を思い出します。
伊東からは伊豆急行線へと入ります。乗務員の交代で何分か止まるので、外の空気を吸いつつ記念写真を撮りに行きましょう。
東京や熱海と違って人が集まりづらいからか、電車にカメラを向けている人はみんなちゃんとした乗客のようです。
人の流れが切れたところで、あさかぜも旅の記念に1枚。
伊豆急行線に入り、車窓には大島が見えてきます。伊豆諸島最大の島で人口は6,000人超。東京の竹芝ふ頭と熱海からジェットフォイルが、竹芝のみから夜行の大型客船が就航している他、観光シーズンに限って伊東などからも航路があります。
竹芝からのジェットフォイルは羽田空港第2ターミナルの展望デッキからよく見えます。
また伊豆半島といえば温泉地帯。各所に温泉がありますし、なんなら伊豆熱川は駅の目の前に蒸気を上げる温泉街が控えています。なかなか電車では湯巡り旅行はやりづらいですけどね…
東京から3時間弱、終点の伊豆急下田に到着しました。快適かと言われるとなんともいえませんが、国鉄時代からのMT54型モーターの懐かしい音を聞き続けられたのは楽しかったです。
隣に止まっているのは普通列車に使われている8000系。元東急電鉄の8000系で、伊豆急線の主力車両として活躍しています。伊東線内の一部の普通列車もこの車両が担っており、東急の電車のハンドルをJRの運転士が握るという不思議な光景が見られます。
ちょうどお昼時です。歩いて15分ほどのところに道の駅「開国下田みなと」があるのでお昼ご飯を食べに行きましょう。
www.kaikokushimodaminato.co.jp
道の駅「開国下田みなと」の裏の漁港には伊豆の港で水揚げされた新鮮な海産物を食べられる食堂があるのですが、その「市場の食堂金目亭」は火曜日が定休日。今日は見事に火曜日なので残念ながらお休みです。
人気コミック『ゆるキャン△』にも出てくる金目鯛バーガーが食べられる「Ra-maru」は営業していますが、せっかく海っぺりに来ているので生ものを食べたいところです…
「地魚回転鮨 魚どんや」へ入ることにします。幸いなことに待つことなく席に通されました。
回転鮨と書いてはあるものの回っているのはほとんどオススメ品のポップだけで、手元の紙に書いて板前さんにオーダーするシステム。コロナ禍で客数が少ないこともあってか1人か2人の板前さんで回しているようで、今はかなり忙しそうです…
伊豆半島のウリと言えば金目鯛。煮付けはたまに食べますが、生の金目鯛はもしかしたら初めてかも知れません。
とてもおいしい白身魚ですが、個人的には煮付けになってダシが出ている方が好きかも知れません。ここまできて罰当たりですねぇ…
抜群においしかったのは金目鯛の肝軍艦。しぐれ煮のような味付けになっていて臭さは全くありませんし、あん肝とは少し違うねっとり感がまたおいしい。
あさかぜは金目鯛の握りよりも肝軍艦の方が気に入りました。メニューにあったときはぜひお試しください。
家族へのお土産にノドグロや金目鯛の干物を買い、下田の駅に戻ります。さすが温暖な伊豆半島、少し歩くと上着がいらないぐらい暖かく感じられます。
>>後編へつづく<<