あさかぜみずほの趣味活動記録簿

旅行記や主に飛行機の写真をひたすら載せ続ける、趣味のブログです。たまに日記らしき投稿もあり…?

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飛行機の事故調査に必要なもの

新年早々にして悲惨な航空事故が発生してしまいました
2021年1月9日、インドネシアのスリウィジャヤ航空が運航するBoeing 737-500が、離陸の4分後に急な右旋回をしながら海上に墜落乗員12名(デッドヘッド=移動中の乗員 6人含む)と乗客50名の計62名が死亡したことは確実とされています。

発生したばかりの航空事故であり、原因の究明はまだこれから行われます。2件立て続けに起きたB737MAXの墜落事故のように「姿勢制御プログラムのMCASが原因」と早々に言われるようになるのはむしろ異例なことで、複数の要因が絡み合う航空事故では真相の解明にはそれなりに時間がかかるのが常です。

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<事故機と同型のB737-500はANAグループでも2020年6月まで運航していた。年季は入っているが極端に古い機体ともいえない>

さて、事故が発生してしまった時にはクルマの場合でも運転する当事者の証言が有効です。ところが大きな航空事故の場合には操縦するパイロットも含めて亡くなっていることもありますから、必ずしも当事者の証言をアテにすることはできません

ならばどうするか。

インシデント(事故には至らなかったが、一歩手前の重大なミス)や万が一の航空事故が発生してしまった時は、主に以下の4つを集めて調査していきます。

・FDR=フライトデータレコーダー
・機体そのもの(壊れている場合は残骸も可能な限り集める)
・整備記録

これらはどれも重要なもので、1つでも欠けると原因究明に時間がかかったり、そもそも原因が不明となってしまうこともあります。
例えば2014年3月の「マレーシア航空370便墜落事故」ではCVR・FDRを収めたブラックボックスも大部分の機体の残骸も見つからず、未だに原因も墜落位置も不明のままです。

ところでCVR、FDRとは何なのでしょう。
クルマの「ドライブレコーダー」とはどう違うのでしょうか。

■ CVR:Cockpit Voice Recorder
コクピット内に装着されたマイクでパイロットの音声を録音しています。録音時間は2時間のエンドレスになっていて、古いデータから上書きされていく仕組みです。
録音されたコクピットの音声からは様々なことがわかります。

パイロット達の心身状態
雑談の中での「疲れた」「カゼをひいた」「睡眠不足だ」「食事が重かった」などといったやりとりから、パイロットの体の状態がわかる。

CRMが適切だったか
Crew Resource Management「クルーリソースマネジメント」のこと。パイロット同士の役割分担が適切だったか、互いの提案事項が話し合える環境だったか、などがわかる。

・異音
爆発音、侵入者の音など、飛行に影響を与えるような異常があった音は入っていないか。

管制官とのやりとり
管制官の指示をちゃんと復唱しているか、しっかり理解しているか、そもそも無線に応答できているか

・トラブル発生時の対応
パイロットが混乱していないか、意識があるか、など。


■ FDR:Flight Data Recorder
飛行機の操縦に関わるデータや操作を最低でも25時間以上は記録しています。現在では400時間ぐらいまでデジタルデータで記録できるようになっているそうです。

記録されているデータは多岐にわたります。出発してからの時間、高度、スピード、機首の向いている方角、上昇・下降率、上下左右の傾き、エンジンのパワー、無線の操作時間、操縦桿の操作、システムの警報…などなど、88項目以上が事細かに記録されます。


CVRとFDRの記録を照らし合わせ、パイロットがどのような状況でどういった操作を行ったかを一致させていきます。そこに整備記録や機体の状況、場合によってはパイロットのプロフィールも組み合わせることで、パイロットによるヒューマンエラーか、機体に発生した異常か、外部からの侵入者によるテロやハイジャックか、などの原因究明を進めるのです。
そうして導き出された事故原因を元に、これから同種の事故を防ぐためにはどういう訓練や装備が必要か、製造や整備の手順や部品は適切か、同じ原因から別の事故が発生する可能性はないかなど、再発防止に向けた様々な対策が施されていくことになります。

私たちが日常的に利用している飛行機の安全は、過去からの経験や努力、そして尊い犠牲によって築かれていることを忘れてはいけません。

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<対策・改修が終わり2021年に入り運航が再開され始めたB737MAX。ただ写真のガルーダ・インドネシア航空のように事故が理由で導入を取りやめた会社もある>

ところで、この重要な2つの装置は肝心なときに壊れてしまっては困りますから、CVRとFDRはレスキューオレンジという明るいオレンジ色に塗られたブラックボックスに収められています。設置場所も確率的に最も壊れにくい機体後部の床下が選ばれるそうです。
そしてブラックボックスそのものもとても頑丈な金属製の箱。3,400Gというとんでもない衝撃、2.2トンの圧力を5分、摂氏1,100度の炎に30分…などなど、様々な状況を想定した厳しい耐久性が要求されます。
また水に沈んでしまっても超音波信号を30日間発信して存在場所を知らせるビーコンもついていて、ブラックボックスの居場所がわかるようにできています。

今回のスリウィジャヤ航空の墜落事故ではブラックボックスの沈んでいる箇所が特定されたそうですから、引き上げられ次第アメリカやフランスなどの調査機関に送られて速やかに解析が行われることでしょう。
今後の空の安全のためにも、1日も早い原因の究明が行われることを望んでいます。


参考文献:
フライトレコーダの話(PDFファイル) - 海上保安庁

航空機の「ブラックボックス」は事故の原因をどうやって解明するのか? - Gigazine

ブラックボックスが伝えるもの:フライトレコーダーの秘密 - カスペルスキー公式ブログ
https://blog.kaspersky.co.jp/flight-recorders/9507/

インドネシア旅客機墜落事故、ブラックボックスの位置特定