ヴァージンオーストラリア航空はその名の通りオーストラリアの航空会社…なのですが、拠点がオーストラリアなだけというのが実の姿という航空会社です。
photo by ERIC SALARD
<Flickrより引用。フルサービスキャリアにしてはシンプルなデザインのヴァージン・オーストラリア。本来なら2020年3月から羽田でもこの姿を見ることができるはずだった。>
イギリスの実業家リチャード・ブランソン氏率いるヴァージングループが2000年にLCC(ローコストキャリア)として立ち上げたのが前身となる「ヴァージン・ブルー」。同業他社やニュージーランドの子会社を合併して規模を拡大し、カンタスに続いてオーストラリアの国内線では2番目の地位を獲得しました。
ところがカンタスが立ち上げたLCC「ジェットスター」との競争が激化し、「やってらんねぇわ」となったヴァージン・ブルーは2010年にフルサービスキャリアへと転換を図ります。翌年に社名を「ヴァージン・オーストラリア(以下VA)」と改め現在に至ります。
しかしこのVA、FSCに転換してからの10年間で黒字だったことがたった2年だけという有様。ヴァージンもなんだかんだで株式をずいぶん手放して他社に売り払ったようで、今や保有率にして10%程度しかありません。
代わりに中国からの投資がかなり多く、海南航空を保有する海航集団、青島航空を保有する南山集団が合わせて40%近くを獲得しています。ほかにもエティハド航空、シンガポール航空がそれぞれ20%ほどの株式を持っており、つまりはVAの株主はヴァージングループも含めれば9割が外国と言うことになります。
<ヴァージン・オーストラリアの兄貴分にあたるヴァージン・アトランティック航空。日本に就航していた時期もある>
が、政府は「株主に支援を求めるべきだ」と冷たくあしらいます。政府の言い分はごもっともで、ほとんど自国の企業でもないところにカネを出す義理はありません。そもそもコロナ云々の前にずっと赤字なわけですし。一時期中国にべったりだったオーストラリアは最近になって関係が冷え込んでいますから、VAの4割が中国の資本というのも支援を拒否した理由の一つかもしれません。
「自分では再建できないので誰か助けてください」というわけです。
8月に入ってアメリカの投資会社「ベイン・キャピタル」による支援が決定しました。
お金の問題はもちろん、経営そのものを立て直すために
・傘下のLCC「タイガーエア・オーストラリア」の廃止(権益は残す)
・長距離国際線は中止
・雑多な機材はBoeing737に統一
このまま日本の路線認可は消滅…と思いきや、VAが航空当局に延長を申請します。2021年10月末までの申請は3月末までしか認可されませんでしたが、それでもB737しか機材のないVAはどういうつもりなのか…?
どうやら長距離国際線にも再進出するつもりのようで、航空機メーカーとの交渉に当たっているのだとか。3月までに再開できるかは別として、規模の拡大は諦めていないようです。メーカーとの交渉、ということは中古機ではなく新造機を検討しているのでしょうか?
いずれにせよ、ヴァージン・オーストラリアの姿をまだ羽田で見ることができる可能性が残されたのは楽しみです。
<イギリスで鉄道事業をフランチャイズ運営していたこともあるヴァージン・グループ。現在は別会社に移行>