世間を騒がせているアメリカ大統領選。「スーパー・チューズデー」だとか「選挙人」だとか、日本の選挙では聞き慣れない単語が飛び交います。遠い海の反対側の国で行われている選挙、と他人事のように考えがちですが、経済、国防といった面で日本とは密接な関係にある国です。まるっきり無関心というのも…
というわけで、日本と違って4年に1度必ず存在するアメリカ大統領の選挙がどういう仕組みになっているのか、ちょっとばかり勉強してみました。
まずは大統領選が行われる日。
これはちゃんと決まっていて、「11月の最初の月曜日の翌日の火曜日」とされています。
今年は11月2日が第1月曜日だったので、選挙が行われるのは翌11月3日。
前回の2016年は11月1日が火曜日でしたが、月曜日は10月31日だったので翌週の11月8日に選挙が行われました。
選挙当日に投票所で直接投票するのが原則。
当日に投票所へ行けない人は、日本のように期日前投票というものがない代わりに郵便で事前に投票する仕組みがあります。
投票権はアメリカに暮らす18歳以上に与えられますが、グアムやサイパンなどの海外領土は除くようです。日本のように住民票があれば無条件で投票券が送られてくるのではなく、投票したい人は事前に有権者登録をしなければなりません。
2016年のデータでは、18歳以上の人口は約2.24億人。このうち有権者登録をした人は全体の70.3%(約1.58億人)で、実際に投票をした人は61.4%(1.38億人)だそうです。投票率で見れば日本より高いですね。
選挙戦ではひたすら共和党と民主党が取り上げられますが、実際には複数の政党から何人もの大統領候補者が立候補しています。ただ19世紀以降は共和党と民主党が圧倒的な2大政党として君臨しており、他の政党や無所属の候補者がクローズアップされることはほとんどありません。
■ 共和党 - Republican Party
経済や保険などは各個人の意思に任せる「小さな政府」の立場を取っています。
● 民主党 - Democratic Party
共和党は白人や保守層、南部の州が主な支持層。
民主党は非白人や女性、大都市のリベラル派が主な支持層。
共和党としては確実に支持層を取り込むために有権者登録や投票時に身分証の提示を強く求めています。一方民主党はそんな共和党の姿勢を「身分証を持てないような貧しい少数者の切り捨て」と非難しており、緩和を訴える側。
得票数が絡んでくるため、こうした面でも両者は真っ向から対立しています。
さて、アメリカの独特な選挙のやり方です。
これは有権者に成り代わって大統領候補に投票する人たちで、この選挙人が入れた票数が大統領の実際の得票数となって当落に関わってきます。
選挙人は州ごとに、その州の人口に応じて割り振られます。
全米で選挙人の数は538人、2大政党制なので実際には270人の過半数を確保すれば次期大統領に当選します。
州ごとに集計された票数に応じて、選挙人はどの候補に投票しなければいけないかが決まります。
この「勝者独占方式」があるがゆえに、
「全体で見れば得票数は多かったけど、選挙人が少なかったから負けた」
という日本人には不思議な構図ができあがるのです。話だけ聞いていれば「なんだそりゃ」って感じがしますが、実際にルールを見てみると理由がわかりますね。
このあたりはどうやっても覆せないので、わざわざ相手陣営に乗り込んでいって戦いを挑むようなことはしません。
どっちつかずの州でも、アラスカ州のように選挙人の少ないところではさして選挙には影響しないので、そのあたりも薄くなりがち。
したがって両政党の選挙活動は、どっちつかずで選挙人も多い「Swing State 揺れる州」に集中します。今回の場合は
・フロリダ州…29人
・ペンシルバニア州…20人
・ミシガン州…16人
・ノースカロライナ州…15人
・ウィスコンシン州…10人
の101人。これらのスウィングステートを制すれば大統領選を制する、と言われています。
ちなみに2020年は、
ちなみに今まで選挙結果に影響を及ぼしたことはないものの、選挙人が本来と違う候補者に投票した、という事件?が毎回必ずあります。ルールを逸脱して違う人に投票してしまう選挙人のことを「Faithless Electors 不誠実な選挙人」と呼ぶのだそうです。
獲得した選挙人の数と実際の票数がわずかに違うのはこのため。選挙人はちゃんと誓約をした上で選ばれているはずなんですけどね。