このたびの豪雨災害で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
あさかぜの伯父伯母が菊池川流域の熊本県玉名市に住んでいますが、やはり過去に体験したことがないほどの雨だったそうです。ライブカメラで見ていても、少ない水量しか見たことのない繁根木川(菊池川の支流)でも堤防いっぱいの高さまで茶色い水が流れており、事の異常さが伝わってきました。
2人の家があるのは菊池川と繁根木川の間なので、もう少し雨量が多かったり長く雨が降っていたら水につかっていたかもしれません。かろうじて危機を免れた感じがあります。
こうした水害の時、必ず議論になるのがダムの有無です。2019年の台風の時も、群馬県の八ッ場ダムがあったから氾濫を免れた、という意見も出ました。今回の球磨川の大氾濫も、計画されていた川辺川ダムが事業中止になっていなければここまで大きな被害は生まなかっただろう、という述べる人も少なくありません。
<建設中の群馬県八ッ場ダム。写真で見ている以上に建設予定地は広く深い>
実際に降雨量や水位などのデータを元にダムの有用性を計算されている方もいて、とても勉強になります。その方の検証によれば「事前に貯水率3割程度に減らしておけば、人吉市内の球磨川の(氾濫は)防げるだろう。」(括弧内は筆者追記)と結論づけています。
川辺川ダムがあったら球磨川は氾濫しなかったか?
一方「雨が多かったのはダム予定地より下流で、ダムがあっても被害は変わらなかった」という反論のコメントや、川の水量から計算したブログ記事もあったりして、ひとくくりに「あればよかった」とまとめるのには難しいものがあります。
川辺川ダムがあれば球磨川氾濫は防げたか?
とはいえ熊本県知事自らが言っていたように「ダムによらない治水」が遅れていたのは事実でしょう。川とは別の導水路、堤防のかさ上げや拡幅、遊水池の整備などはダムの建設よりもはるかに時間がかかるものだそうです。
もちろん現在の知事を選ぶにあたって、政治情勢、県民感情、地球環境などなど様々な理由があったでしょうから、熊本県民を「間違いだった!」などと責めるつもりは毛頭ありませんし、部外者であり門外漢であるあさかぜにその資格はありません。
…消去法とはいえ、森田健作などというボンクラを知事に選び続けている千葉県民ですからなおさらです。
ただ年々激しくなる気象災害を前に、早く効果が出る物事には手をつけねばならない、そんな情勢になりつつあるように感じています。他でもない熊本県知事自身が言っているように。
それがダムであったり、低地の住民を高台へ移転することだったり…
ところで東京の都心は様々なダムで守られています。荒川や江戸川の本流の利根川にはいくつものダムがあり、連携しながら首都を水害から防ぎ、生活や産業に必要な水を供給しています。
都内にも「首都圏外郭放水路」のように大きな貯水施設がありますが、それらが機能不全にならなくて済んでいるのはいくつものダムが押さえ込んでいるからでもあります。テレビなどのコメンテーターは気安く「ダムなど不要だった」「ムダな投資に他ならない」などとしたり顔で言ってのけますが、そんな無責任なことがいえるのも上流のダム群が連携し合って治水しているから[*]です。
環境論者が大好きな太陽光発電は夜には何の役にも立ちません。
昼間に余った電力を使って揚水発電所がダムに溜め込み、夜間にその水を使って発電する、巨大な電池として機能している例[**]だってあります。ソーラーだけじゃ生活をまかなえないことの証明みたいなものです。
[*] 実業之日本社『ダム大百科』pp.24-31
[**] ハフィントンポスト「揚水発電所が太陽光発電導入の支えに ただしコスト高、利用には工夫が必要」 https://www.huffingtonpost.jp/shinrinbunka/power-20180426_a_23415009/
鉄道駅や空港と違って、地域に大きな利益とはならないであろうダムを造らなくて済むなら、それに越したことはないかもしれません。でも必要だから作るわけですし、それを理解して建設予定地の人々は生まれ育った土地を苦渋の決断で離れるのです。
あさかぜのような都市部で生活する人間は、ダムとダムのできる地に住んでいた人々に感謝が必要だと、こういう豪雨災害の後には強く感じます。少なくとも「ダムなんか無くても災害にはならなかった」などという無責任なコメンテーターのような人間にはなりたくないですね。
余談ですが、ダム見学をするともらえることもある「ダムカード」。先日某ダム事務所で尋ねたところ、
「緊急事態宣言が解除されても、密集の可能性があるためダムカードの配布はまだ見合わせるように、とのお達しでして…」
とのことで、今のところダムカードは配布再開にはなっていないそうです。
疫病が収まるまでダム巡りもしばらく待つしかありませんね…
<東京の水道を支える小河内ダムは水道のためのダムとして日本最大級。おまけで発電もする>