イタリアを代表する「アリタリア-イタリア航空」の再建計画がどうやら白紙化することが決まってしまったようです。
2009年に1度経営破綻し、2015年からはUAEのエティハド航空が財政支援をしていました。その後もアリタリアの赤字体質は改善せず、エティハドも業を煮やして2017年に資金を引き上げてしまいます。エティハド自身も、赤字続きで回復する見込みのない会社を支援していられるほどのんきな経営状態ではないのでしょう。
<親会社と共に経営破綻した、リージョナル路線部門のアリタリア・エクスプレス>
イタリア政府としては、国の顔でもあるアリタリアを失うわけにはいかないので当面の間公的資金を投入することにしますが、いつまでも政府が支援しているわけにはいきません。半年(一応3ヶ月は延長可能)のタイムリミットの中で、可能な限り早く売却先というか資金源を見つけなければならなかったのです。
イタリアの大手航空会社ということでいくつか名乗りを上げるところはありました。航空界のドイツ帝国ルフトハンザ、LCCの雄であるライアンエア(アイルランド)やイージージェット(イギリス)、変わり種ではイタリアのサッカーチームまでも「興味あり」なんて言ったほどでした。
結局労使面などで折り合いはつかず、興味を示した企業たちは去っていきました。当初のもくろみ通り(?)4社によるコンソーシアム(企業連合)に固まります。
・アトランティア(高速道路や空港などの運営会社)
・イタリア経済発展省(現在の資金源)
上の2社で35%ずつ、下の2社は残った15%ずつを出資してコンソーシアムを構築し、アリタリアの再建を行うというもの。FSも親玉は経済発展省なので、実質的にはイタリア政府が半分の株式を持つことになります。
2年が経過し、ようやくアリタリアの支援が決まった…
はずでした。
アリタリア航空の再建案が白紙化 有力スポンサーが撤退へ
どうやらアリタリアとの間で再建計画が合意に至らない状態が続いており、結果としてスポンサーとなるはずのイタリア鉄道が撤退することとなったようです。
元々エティハドも支援の条件として1,500人の人員削減を挙げていましたが、労働組合が拒否したことで資金を引き上げた過去があります。
ルフトハンザも人員削減を行わなければ支援はない、と明言していました。
今回の交渉決裂もそれが原因であっただろうというのは想像に難くありません。そもそも、デルタ航空は1億ユーロが資金援助の上限としていました。
<経営破綻前年に導入されたアリタリアの現行デザイン。イメチェンのためか新塗装へは順調に移行中>
このままでは支援者が決まらず、航空会社「アリタリア-イタリア航空」そのものが消滅してしまうかもしれません。経営破綻時のニュースでは「イタリア政府が支援するのは当然」という意見がある一方で、「アリタリアが国民の税金で維持されるぐらいなら解散したほうがマシ」という市民のコメントがあったのを印象深く覚えています。
ヨーロッパの航空業界は日本以上に厳しい競争にさらされています。ドイツの「エアベルリン」はエティハドの資金援助がなくなって早々に空から姿を消しました。イギリスの「トマス・クック」は世界的に歴史ある総合旅行会社でしたが、中国企業からの資金援助が受けられなくなり突如として運航停止に。他にも中小の航空会社がいくつか姿を消しています。
人口や経済規模の割に航空会社が多く存在するヨーロッパ各国では、航空会社が単独で生き残るには厳しい環境になっています。ルフトハンザグループやエールフランス-KLM、IAG(International Airlines Group)のように、航空会社が徒党を組んでなんとか生き残っているのが実情です。永世中立国スイスですら航空会社は単独では生き残れなかったのです。やがてはアメリカのようにアライアンスごとの大手へと集約されるのはそう遠い話ではないのかもしれません。
果たしてアリタリアは再建できるのか。再建できたとしてもどれほど生き残ることができるのか。予断を許しません。