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アイドルマスターシンデレラガールズのライブのために愛知県へ来ています。会場はナゴヤドームなのですが、名古屋市内はとても宿泊施設が確保できる状態ではありませんでした。仕方がないので名古屋からJR東海道線の快速でおよそ30分の安城が拠点です。
今日は2日目、昨日と同様に夕方からライブで時間が空くので、乗ったことのない路線を訪れてみましょう。
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まずは名古屋から逆方向の岡崎へと向かいます。豊橋へ向かう需要もそれなりにあるらしく、日曜日の10時過ぎだというのに席はだいたい埋まっています。まぁ安城からの所要時間は特別快速でたった5分なので、運転席の後ろに立ってしばし前の景色を眺めます。
運転台には縦長の運転時刻表に加えて、右側にタブレット端末が備え付けられています。見たところ、徐行などの通常とは異なる作業を要する区間がリンクされ、列車の現在位置に合わせて表示されているようです。ハイテクですねぇ。
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というわけでつかの間の前面展望を楽しみ、岡崎で下車。Suicaで乗ってきているので一度改札を抜けます。
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岡崎からは「愛環」こと愛知環状鉄道でJR中央線の高蔵寺へと抜けてみます。
わざわざ一度改札を出たのは愛環線がICカードに対応していないから。とはいえ設備はほぼ対応しており、2019年3月2日よりTOICAのサービスが開始されることになっています。
都合良くJR東海の券売機で愛環のきっぷをICカードで買えないかと見てみましたが、さすがに券売機は分かれていて現金のみの対応でした。
ホームに待っていたのは2000形電車。JR東海の313系がベースになっているのはご覧の通りです。車内は基本的にセミクロスシートですが、最後に製造された2本だけロングシートだけの編成がいるようです。
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幸いロングシートだけの外れ編成ではありませんでした。ラッシュ時間帯にはオールロングシートは確かに重宝しますが、今日のように移動を楽しむような場合には旅情が半減どころではありませんので…
運転台も313系に準拠しています。ワンマン対応のため運転台から操作できるドアスイッチも用意されてはいますが、テプラで「使用停止」と貼られています。愛環はワンマン化は行われておらず、全ての列車に車掌が乗務しています。短編成の列車がメインの路線にしては珍しい傾向です。
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岡崎から名鉄の豊田市駅にほど近い新豊田駅までのおよそ20kmは、国鉄が元々「岡多線」として1976年までに開業させた区間でした。例によって赤字ローカル線の整備の際に必ず名前が挙がる「日本鉄道建設公団」によって建設された路線で、開業からわずか10年後には「第三次特定地方交通線」という「国鉄にとっては不要だから、廃止するか地元に放り投げる路線」の対象となります。
1988年に第三セクター鉄道「愛知環状鉄道」が岡多線を引き継ぎ、同時に新豊田~高蔵寺間の約26kmも開業させ、現在の愛知環状鉄道線ができあがりました。
2005年の愛・地球博の際には重要な役割を担った同線ですが、実際に乗ってみるとまだまだ開発途上と言ったところです。
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急に街が栄えてくるとそこは豊田市。皆さんご存じのトヨタ自動車のお膝元です。人口は名古屋市に次いで県内2番目、面積では県内で最大。元々は挙母(ころも)という市名でしたが、トヨタ自動車の成長に伴って1959年に変更されました。当時からいかにトヨタの存在感が大きかったかがわかります。
愛環の他は名鉄線が豊田市内へ乗り入れており、名古屋中心街へのアクセスは主に名鉄が担っているようです。
そこそこの乗降はありましたが、席が全部埋まるほどではありません。通勤通学のない日曜日だからでしょうか。
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再びのどかな田園風景が広がります。鉄道の利用はそんなに多くはなくても、スーパーに止まるクルマの数はかなり多く感じられます。都市部を外れれば外れるほど、クルマ社会は強くなっていきます。
愛環も第三セクター鉄道にしては恵まれた環境とはいえ、補助金の運用で利益を出しているようなもの。決して安泰な状態ではないようです。
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八草では「リニモ」と交差します。愛・地球博の会場最寄りだった駅の一つで、万博期間の前後は両者とも「万博八草駅」を名乗っていました。
リニモこと東部丘陵線はこれまたレアな乗り物で、日本で唯一「HSST」というリニア浮上式を採用した鉄道です。レールと車輪の摩擦力に頼らなくていいため、加減速や坂道にも強さを発揮します。
モノレールや新交通システムよりも安く整備できる…はずの乗り物ですが、現時点では日本にはリニモしか実用化しているものはありません。
ちなみに中国・上海の浦東空港へのアクセス鉄道「上海トランスラピッド」は、このHSSTの技術を使っています。リニモの最高速度が時速110kmなのに対し、あちらはなんと時速430km。
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岡崎からおよそ1時間10分、終点の高蔵寺に到着です。平日の朝夕のみ、JR中央線へ直通して名古屋までの列車が設定されています。万博開催時は「エキスポシャトル」として多くの列車がJR~愛環を直通していました。
Wikipediaによれば岡崎や高蔵寺の到着前に車掌が車内検札をする、との記載がありましたが、この日は特に何もチェックされませんでした。検札をしないときっぷやICカードでJR東海回りだけの運賃で乗れてしまうからですが、そもそも岡崎からわざわざ全線乗り通す需要自体がほとんどない気もします…
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さて、高蔵寺です。ここから中央線に乗って大曽根へ向かえば、今宵のライブの開催地であるナゴヤドームの最寄りです。ただせっかくここまで来ているのならば、1つ変な乗り物に乗っておきたいところです。
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日本で唯一のガイドウェイバス「ゆとりーとライン」で大曽根へ向かってみます。
大曽根へ向かう道路の渋滞を避けるためにバス専用の道路を造ったのですが、車線の両脇にガイドを出っ張らせて、それに従ってバスが自動的に進んでいく方式を採りました。ガイドウェイバスの区間は運転士のハンドル操作は不要です。
大曽根近辺の渋滞に影響されなくていいようになったのですが、有り余るそのデメリットについてはあとで…
到着したバスがそのまま大曽根へ向かって折り返すのではなく、一度近くの車庫へと引き上げていきます。
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後輪のそばに見える車輪がガイドウェイバスの特徴。ガイドウェイの区間に入ると横へ張り出してきます。前輪付近にも同じような装備がついていて、4カ所で車体をガイドに沿って誘導していく仕組みになっています。
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出たり入ったりする以上、車体の下にはガイド車輪を収納しておくスペースが必要になってきます。その結果、ワンステップバス・ノンステップバスが普及し始めた情勢下ながら、開発が間に合わず床の高いツーステップ車を導入せざるを得なかったというデメリット。
一応長いスロープが装備されて、車イスの乗降は出来るようになってはいるようですが…
久しぶりによっこらせと言った感じに乗り込みます。これがお年寄りや足の不自由な人からしてみれば、「今の時代に…」と思ってしまうことでしょう。
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高蔵寺~大曽根間の全区間で「ゆとりーとライン」の愛称が使われていますが、実際にガイドウェイバスの区間は小幡緑地~大曽根間の約8kmです。
駅の手前にはガイドウェイ区間に入るための専用入口が用意されており、バスはそこで一旦停止して床下に収納されていたガイド車輪が所定の位置にセットされたことを確認します。
入口にはご覧の通り一般車は入れないように遮断機がついていて、バスが近づくと自動的に車両の照合を取って入線できるようになっているようです。
もう1つのデメリットが「免許」。
ガイドウェイバスは実は扱いはバスではなく「鉄道」です。扱いは新交通システムと同様の「案内軌条式軌道」で、路面電車の親戚のような存在です。それゆえ、ここを運転するには「無軌条電車運転免許」なる鉄道の免許が必要になってくるのです。
想像ですが、実際は実車訓練などで限定的な免許を取得させているとは思います。どのみち普通のバスならかからない費用と時間が必要となりますが。
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大曽根までは全区間高架で、一般道路との交差はありません。この区間”だけは”定時性が確保されます。ちなみにこのバス、途中の道路混雑で10分以上遅れており、後続のバスが1つ手前の駅に続いた状態になっています。専用路線を用意しても、一般道路を通ればこうもなります。
どうあがいてもバス1台分を超えて輸送力を発揮できないのも、ガイドウェイバスの泣き所。さらに1区間に1台と決められているので、2台3台で続行運転ができません。鉄道ばりの駅設備を用意しているのに、所詮は80人そこらしか輸送できないのです。現に遅れているこのバスの車内は満員です。通常のバス専用道じゃいけなかったのか、と思わずにはいられませんが…
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終点の大曽根はバスの転回のため、広いコンクリートの広場が広がっています。ガイドウェイバス独特の構造を観察するにはもってこいです。
ガイドウェイの区間内にいる場合は、運転士はハンドルに手を触れてはいけない決まりです。行う操作はアクセルとブレーキだけ。そのあたりは普通の鉄道と同じですね。
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通常のハンドル操作で転回してきたバスは、再び小幡緑地の方向へ向けて出発していきます。
運転席付近をよく見てみると、JR東海のマークがくっついています。ジェイアール東海バスはゆとりーとラインの運行から2009年に撤退しているはず…このマークの意味するところは何なのでしょう。
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大曽根だけは、混雑する時間帯に駅側で運賃の徴収をする仕組みになっています。ご覧の通り普通のバスの運賃箱がおかれて、降りてきた客はそこに運賃を支払う仕組み。鉄道とは言うものの、実態は限りなくバスです。
他の「駅」では降車時にバス車内で運賃精算をするようになっており、現在のところ駅側の設備を使う予定はありません。これもまた遅れたバスがさらに遅れる原因なのですが、利用者が限られている以上は仕方がないのでしょう。
ゆとりーとラインと同じシステムが日本全国に出来ない理由が身をもって感じられたところで、目的地のナゴヤドームへ向かいましょう。せめてもの救いは、手元のSuicaで現金を用意せずとも乗れることでしょうね。