日本へは定期便・定期チャーター便を福島・新潟・秋田へと週2便飛ばしている、日本ではそこまで知名度の高くない航空会社ではありました。むしろ日本の空から消えて久しいMD-80シリーズを現役で運航する貴重なエアラインとして、その手のマニアからは有名なエアラインです。
【台湾】遠東航空が13日から運航停止、資金繰り悪化[運輸]
以前から経営状況は芳しくなかったらしく、2008年から3年間にわたって運航を取りやめていた時期もありました。運航を再開しても結局は慢性的な赤字体質は覆ることがなかったらしく、全面的な運航停止へと至ったようです。
12月12日にはファーイースタンは全便の運航を停止し、会社を解散すると発表。社員の大半は解雇として、解散に関わるわずかな社員のみを残すとして物議を醸しました。その時点では社長と連絡がついていなかったといいますし、実際に会見の場にも社長は現れないままでした。
ところが。
台湾の航空当局、ファーイースタン航空の事業許可取り消しを交通省に要請
13日に社長が現れて改めて会見。この会見の中で、
・12日の発表は幹部が状況を誤って判断したもの
・従業員を解雇することはない
・会社の運営資金はまだ約1億4,500万円残っている
・2週間でおよそ36億円の資金が調達できる
と説明し、会社を解散することはなく運営を続けるという真逆の発表をしています。資金の確保ができ次第国内線から運航を再開する、という方針のようです(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191216-00000462-fct-l07 台湾の航空会社が一転、事業継続を発表)。
ちなみに12日の発表の際に連絡がつかなかった理由は「気分が沈んでいて携帯電話の電源を切っていたから」と述べたそうで、決して夜逃げではないと弁明したかったようです…いいんですかね、経営者がそれで…
ともあれファーイースタン自身が再起に向けての意思を表明する一方、台湾の航空当局(交通部民航部)は一連のファーイースタンの動向を受け、同社に1,100万円相当の過料を科すとともに、航空事業の事業許可を取り消しする方向で進めているようです。前述したように2008年にも同様に運航を停止した「前科」がありますし、老朽化したMD-83からの機材更新もままならない状況(一応エアバスA321への置換え計画はある)ですから、いつまた同じように飛行機を飛ばせなくなるかわかりません。
急な運航停止はもちろん利用者側にだって大きな不安や不便を与えるものです。事業規模が小さいファーイースタンでさえ、今回の運航停止でおよそ3,700人が足止めを食らっています。出発する前ならまだしも、出かけた先で帰ってこられないとなれば笑い事じゃ済まされません。将来的にそういったことを起こす心配がないことを確認した上で、最終的には交通部が事業許可を継続するかどうかを決定します。
いつかMD-83の姿を撮ってみたいと思っていただけに、なんとか飛び続けてほしいと趣味者としては思うわけですが…利用者としてはいつ潰れるかわからない航空会社なんてゴメンですよね。
ところで冒頭で「また」と書いたのは、3年前にも同じように急遽運航を停止した航空会社があったから。それが「トランスアジア航空(復興航空)」と、その子会社のLCC「Vエア」です。トランスアジアは折からの観光需要の高まりもあって、成田や関西、新千歳にも就航していたので馴染みのある航空会社だったのではないでしょうか。
ところがVエアは資金難から2016年9月末で全便運航をストップ。こちらは1ヶ月前に予告があったため、混乱はあったものの帰ってこられないという人はあまりいなかったようです。1年後の運航再開を目指すと宣言し、一時的なものかと思われていました。
<1年後の再起を目指して運航を停止したVエア。残念ながらそのまま過去帳入り…>
しかし本当の資金難は親会社のトランスアジア航空だったようで、11月21日に翌22日の運航を全便取りやめると突然に発表、その22日には会社の解散を決定し、台湾第3位のエアラインは突如として空から姿を消してしまったのです。原因は2年間で立て続けに墜落事故を起こし、その結果激しい客離れとなって経営不振に陥ったものだとか。末期には1日あたり3,400万円ぐらいの赤字を出していたといいます。
この急な運航停止で帰れなくなる人が続出し、しばらくの間チャイナエアラインと子会社のマンダリン航空が引き継ぐことになってとりあえずは落着となったようですが、このときに問題となったのはトランスアジア航空が行った大量解雇でした。
従業員にも説明のないまま急遽運航停止と会社の解散を発表し、約1,700人の従業員が路頭に迷うことになったのです。
<台湾第3位の規模を持っていたトランスアジア航空。A330のような大型機材も投入していた>
これを教訓に、台湾は大量解雇が避けられない場合は事前に通告をしなければならないと決定。期間は調べてもよくわからなかったのですが、ファーイースタンがもし当初の発表通り従業員を大量に解雇したとしたら、事前通告を行わなかったという点でも問題になります。
だからこそ、資金をつないで会社は存続する、というウソか本当かわからない発表をしたのかもしれませんが…いずれにせよ、趣味的観点からもファーイースタン航空の今後の動向は気になるところであります。
…そういえば、インドの国営航空も、香港の本土資本の航空会社も、資金のやりくりがつかず様子がおかしくなってきています。これはまた別の回で。