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2018年9月19日午前9時、有楽町駅にやって来ました。ずっと気になっていたアレに乗るため、ズルして仕事を早めに抜けてきたのです。
目的地は有楽町駅から徒歩5分ほど、「丸の内鍛冶橋駐車場」。
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高速バスの発着案内では「東京駅鍛冶橋駐車場」と案内されることが多い駐車場。元ツアーバス系の高速バスが多数発着するターミナルとして機能しています。
位置は東京駅と有楽町駅の間ですが、広くて複雑な東京駅構内を抜けて八重洲南口に出てくるよりは、有楽町駅の京橋口を出てきた方がトータルでは早くなります。
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駐車場手前の路上で待機していた京成バスこそが、今日のお目当て。シャシーをスウェーデンのスカニアが、ボディをベルギーのバンホールが担当しているダブルデッカー(2階建て)バス「アストロメガ」です。
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国産では最後のダブルデッカー「三菱ふそう・エアロキング」が製造終了となって早8年、後継車種が生まれないままになっています。今までダブルデッカーを入れていた事業者は、通常のハイデッカー車両に切り替えざるを得ません。
ただ眺望を重視する観光バスや、東京~大阪間など高需要の路線を抱えるバス会社からすれば困ったこと。席が足りないなら増車すればいいという話にもなりますが、昨今の運転士不足ではそう簡単にいきません。
そこで観光バス「はとバス」が白羽の矢を立てたのがこの「アストロメガ」。”一定以上の台数を発注すれば日本サイズのダブルデッカー車製造に応じる”、という条件のもとで導入を決定。そこに便乗する形で他のバス事業者も発注し、京成バスもそのうちの1社です。
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乗車時間になったので車内に入りましょう。鍛冶橋駐車場は撮影禁止なので、外観の写真はまだありません。
京成バスのアストロメガはバリアフリー向上のために導入された車両で、1階部分には車イススペースと荷物置き場、トイレを設置。通常の座席は2階部分のみに集約されています。
どうやら乗客は4人しかいない様子で、前面展望を独り占めできそうです。
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シートはバンホール標準のものなのでしょうか、日本の高速バスでよく見かけるタイプのものとは異なります。手すりを下ろせるのが地味に便利。
夜行高速バスに投入するにあたっては、今後3列シートやカーテンの設置なども必要になってくるでしょうが…果たしてどれほど座席配置の柔軟性が利くのでしょう。
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定刻通り9:20に鍛冶橋駐車場を出ると、すぐに東京駅八重洲口の前を通り過ぎます。八重洲口発着の「東京シャトル」は10分間隔ぐらいで出ています。
京成とはライバル関係にあるビィー・トランセグループのザ・アクセス成田を含めればかなりの数となり、需要の高さが伺えます。
一方、1時間に1本ずつしかない「有楽町シャトル」は、知名度の低さもあってかガラガラ。バリアフリーの実証実験を兼ねているとはいえ、心配になる光景です。
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八重洲通を進んだバスは、宝町入口から首都高へ。クランク型の入口を華麗なハンドルさばきで抜けて、都心環状線へと入ります。
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渋滞する箱崎方面を尻目に、バスは湾岸線の方向へ。エンジンから離れた最前列はかなり静かです。
巨体に似合わぬ軽やかな加速を見せながら、全体的にゆったりとした乗り心地。
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左側に見えるのは、建設中の「アクアティクス・センター」。ここで東京オリンピック・パラリンピックの水泳競技が行われることになっています。当初は辰巳の国際水泳場でやるとか言っていたような…
なんだかんだでずいぶんカネがかかっているようで、東京都民じゃなくて良かったとホッとします。
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首都高湾岸線、東関東自動車道と進むといよいよこのバスの本領を発揮します。
エンジンはスカニア製12.74リッター直列6気筒のディーゼルエンジン。出力は410馬力、トルクは2,150Nmを叩き出します。そこに組み合わせるトランスミッションはこの頃大型車でもはやりの12速AMTです。クラッチ操作を自動化したマニュアル、ということでAMTなのですが、一昔前ではずいぶんギクシャクしていたとか。制御技術の進歩で変速が滑らかになりトルコンATよりもエネルギーのロスも少ないということで、バスではAMTが標準となった車種も生まれています。
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前方に見えてくる幕張新都心のビル群。オリンピックでは幕張メッセの国際展示場も会場に選ばれており、迂闊に近づくととんでもない混雑に巻き込まれそうです。
ビル群の立ち並ぶ近未来的な姿が買われてか、特撮やドラマなどの撮影も多く行われています。だいたいイオンの本社周辺かNTTのビルの隣あたりが多いですね。
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見慣れた景色になってきました。飛行機の撮影にダッシュで向かうときは東関道を使うので、この成田ICはよく通る場所。左半分は成田市街への出口、右半分は空港ターミナルに直結する新空港道へとつながります。
バスはもちろん新空港道へ。
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空港入口の検問を抜けると、もうターミナルは目の前です。
「有楽町シャトル」は鍛冶橋駐車場を出ると、終点の成田空港第2ターミナルまでノンストップ。他のターミナルには寄りません。
よって、第1ターミナルの利用者はわざわざ連絡バスに乗り換えて移動しなければならないのが少し面倒なところ。
その辺のわかりづらさ、面倒くささが今ひとつ有楽町シャトルの人気が出ない要因なのかもしれません。
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定刻は10:30着ですが、10:15にはターミナルに着いてしまいました。だいぶ余裕を見たダイヤ設定になっているようです。
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ダブルデッカーらしい、迫力のある姿。ダブルデッカーのロゴが誇らしげです。行き先表示器はバスでも流行し始めたフルカラーLEDを採用しています。
優雅な乗り心地の快適なバス旅でした。それにしても、10人にも満たない乗客数には驚きでしたが…
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東京へ戻る乗車券は京成バスの有人カウンターで購入します。「11:30発の有楽町シャトルをください」と伝えると「東京駅ではなく有楽町でよろしいですね?」と念押しが。普通なら便数の多い東京シャトルを選びますしねぇ…
直前にネックストラップが破損したので、第1ターミナルにある「航空科学博物館」が運営するショップへ新しい物を買いに行きます。
手ぶらなら大した手間ではありませんが、大荷物を持ってターミナル間の移動はこれ以上なく面倒です。
しかも羽田国内線のように片道5分程度で行き来できるものではなく、経路が長い分片道10分以上を要するターミナル間の移動。バリアフリー設備が必要なら致し方ないにしても、そうでない人には積極的に選ぶ理由は見当たりません。
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第2ターミナルに戻ってくる頃には発車まで10分を切り、ギリギリになってしまいました。すでにアストロメガはバス停に待機しています。
ただのハイデッカー車が並ぶ中で、高さ制限めいっぱいのアストロメガは迫力のある存在です。おそらく往路と同じ運転士さんに乗車券を渡して車内へ。
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まさかの乗客はあさかぜ一人だけ。空港発なら第2ターミナル利用者が使うかと思っていましたが…「有楽町シャトル」の知名度の低さをまざまざと見せつけられます。
第2ターミナル以外には止まらないというのも一因でしょう。のりばが曲線だったり、第3ターミナルでは屋根の高さだったり、第2以外に発着できない理由はだいたい推察できます。仕方がないことではあるのですが…
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車内のモニターでは到着地の鍛冶橋駐車場に近い駅の出入口を案内しています。冒頭で書いたとおり有楽町にも徒歩5分ほどですし、地下鉄有楽町線ならさらに近くなります。決して不便な場所ではありません。
11:30、一人では使い切れないほどの空席を残して出発。さすがに眠いので、後方の席でエンジンの響きを楽しみながらウトウトします。
目が覚めるとバスは往路と違うルートを走っていました。宮野木JCTから京葉道路に入っています。この先小松川線には必ず渋滞するポイントがあるのですが…
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千葉方面から首都高中央環状線へのランプがだいぶ出来上がっていました。外環も出来ましたし、ここもできればだいぶこの先の渋滞もマシになるのでは?
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そして予想通り両国JCTの渋滞に引っかかります。この先1車線に狭まり、両国・箱崎・江戸橋と3つのジャンクションが連続するエリア。混まないはずがありません。右へ左へと複数の車線が合流したり分岐したりするので、初心者マークの頃は恐ろしい思いをしました。
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渋滞地帯を抜けてすぐの呉服橋で首都高を降ります。目の前はすぐ東京駅八重洲口。
駅前を通りぬけ、有楽町駅の周辺をぐるりと回ってから終点の「東京駅鍛冶橋駐車場」に到着します。大きいバスを独り占めしていた優越感!
ただ、もしあさかぜがいなければ車庫に直帰していたんじゃないかと、少し申し訳ない気分になりながら下車します。
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ネット上で「空いている」というレビューは見ていましたが、まさかこれほどまでガラガラとは思いもしませんでした。開設からもう1年以上は経つはずなのですが…
特にこれといって乗客の増える要素も見当たりませんし、先行きにずいぶん不安を感じながら有楽町駅へと戻ります。
【有楽町シャトル】
■ メリット
・空いている
・第2ターミナルを使うなら便利
・天気が良ければ有楽町駅から鍛冶橋駐車場へのアクセスも悪くない
・料金1,000円と安い(ただし東京駅前発着のバスも同額)
・1日2往復は2階建てバスに乗れる
・車イス対応のリフトバスも設定あり
■ デメリット
・本数が少ない(毎時1本程度)
・T1とT3には直接行けない
・鍛冶橋駐車場への雨に濡れないルートがない
やはりデメリットとして際立って来るのは、T1・T3へは乗換え必須というところでしょうか…
現状のままでは「悪い選択肢ではないものの、積極的に選ぶほどの手段ではない」という微妙ですが厳しい評価になりそうです。そこが今ひとつ、知名度も利用客も増えない理由なのでしょうね。